【私は朝日新聞の虚報の被害者③】~米・テレビ慰安婦問題特集番組に出演して~
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
アメリカのPBS(公共放送網)のテレビ番組で2007年5月にファリード・ザカリア記者のインタビューに応じ、慰安婦問題について私が述べた主張の紹介を続ける。私も朝日新聞の慰安婦虚報の被害者だったことを証する目的を兼ねて、である。(【私は朝日新聞の虚報の被害者①、②】からの続き)
古森義久「慰安婦問題でいま日本を非難する勢力は意図的に因縁をつけているようです。この種の非難の本質は日本側からすれば、二重訴追、二重基準、そして人種偏見の志向だと思います。一度、訴追され、裁判にかけられた犯罪はもう二度と訴追されないという二重訴追禁止は法の統治の大原則です。
だが私たちは、三世代も前の祖先がしたかもしれないことへの責任を、何度もとらされてきました。日本人は過去の過ちを認めている。過去を悔い、謝罪もしている。しかしそれでも不十分だという。同じ非難が何度も繰り返されるのです。
いまの日本をみてください。完全な民主主義であり、人道主義です。その結果としての国際貢献も大きい。だが私たちは絶えず攻撃され、道義的に劣等な立場に抑えつけられているのです」
ファリード・ザカリア「あなたは人種偏見を指摘したが、いまの日本への攻撃は中国と韓国からです。アメリカの動きは静かだと思いますが」
古森「いえ、アメリカからの日本非難はたくさんあります。マスコミでは大手各紙、みな慰安婦問題で日本、あるいは日本の指導部を叩いています。まるで日本人のDNAになにかよくないものが入っているかのような批判方法です。現在の日本国民の大多数は生まれてもいなかったのです。
アメリカ側では日本をドイツと比較する向きも多い。ドイツは過去を反省したが、日本は反省していない、という批判です。しかし当時のドイツは戦争とは無関係のユダヤ民族全体の絶滅を図りました。しかも中央政府の最高レベルで事前に決定されていた民族みな殺し作戦です。日本はそんなことはしていない。日本が非難されるのは戦場での行動、戦争に直接にからんだ行動だけです」
ザカリア「アメリカ側には安倍晋三首相がなぜこの時期にこの慰安婦問題を中国や韓国に対するような形であえて持ち出してくるのか、という疑問もあります」
古森「いいえ、実情は逆です。安倍首相はアメリカ議会下院に出された慰安婦問題決議案の表決が近いことへの感想を日本人記者たちに質問され、初めてこの問題に触れて、『日本軍による政策としての組織的な強制連行はない』というかねてからの見解を繰り返しただけです。
しかしなぜいまこの時期にアメリカ側でこの慰安婦問題なるものが持ち出されてくるのか、と問いたいですね。日本側にはこの問題に関して、新たな言動などなにもないのですから。日本側がなにも新しい言動をとっていないのに、アメリカ議会には『明確な謝罪』を求める決議案が出てきた。いま、なぜ?というのは日本側の疑問なのです」
ザカリア「でも安倍首相は慰安婦制度運営には日本軍は公式には関与はしていない、と言明しました」
古森「公式でも非公式でも日本軍が慰安婦制度にかかわってはいます。それはだれもが認めています。だがいまの焦点は、日本軍が女性を強制徴用していたかどうか、です。この点については、日本軍が組織的、あるいは政策的に女性を強制徴用したという証拠はない。もし強制徴用していたと主張するならば、それを証する証拠の提示が必要です」
(つづく)
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