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.国際  投稿日:2014/11/9

[安岡美佳]【北欧・女性社会進出3つの理由】~社会における“ゲームのルール”が変わった~


安岡美佳(コペンハーゲンIT大学 研究員)|執筆記事

 

男女ともに働き、家事をし、子育てをともにするといわれる北欧諸国。そんな北欧も50年前は、女性進出状況は、今の日本と大差ない状況だった。変化が訪れたのは、比較的最近の60年代。戦後の労働力不足から、国の生き残り戦略として労働力確保のニーズが高まり、労働移民の大幅な受け入れが始まると共に、女性の就業率も上昇した。このあたりの時期から北欧諸国は日本とは異なる道筋を通ってきたようなのだ。

大きな違いは、女性が既存のビジネスの舞台で活躍するようになったというよりかは、社会における“ゲームのルール”が変わったことだと思う。この社会の“ゲームのルール”の変化には、少なくとも3つの要素が絡んでくる。それは、「政治的強制力」、「意思と主張」、「時間の経過」である。

まず、社会を変えたいと思った北欧は、法律の制定が「政治的強制力」を持って進められた。女性の社会進出が唱えられ始めると、女性が自分で人生設計を行うという意識が高まり、66年には“避妊ピルの合法化”、73年には“堕胎合法化”など、女性の社会進出を後押しする法律の整備が進められていく。

その後80年代には、離婚の増加、出生率の低下(1983年史上最低1.38)が見られるようになるが、女性の就業率は68.1%と現在のレベルに近づき、デイケア施設の増設、育児後の女性の仕事復帰進展などの政治的配慮を受け、社会環境の整備がようやく進み始める。

今の日本が示すように、所詮、強制力無しのかけ声だけで変化を求めるのは無理がある。ノルウェーの役員比率などで採用されている強制的に男女比率を調整する“クオータ制度”は、批判は多々あるものの、私は意味があると考えている。

その政治的強制力が発生した背景には、北欧女性の強い「意志と主張」が見られた。北欧の女性社会進出において、女性運動の影響が取り上げられることが多いが、確かに、北欧女性は「強く」なり、現在の地位を「勝ち取った」のだろう。権利を獲得した女性たちは、その権利を積極的に行使し、それまでの男性の論理で構築されていた働き方に異議を唱え、子どもが迎えに行ける時間に会議時間を変更するように要求する強い意志を持っていた。

しかしながら、女性たちの強い主張もすぐに受け入れられた訳ではない。北欧の歴史からは、強い意思があっても、その時の常識と異なることには反撥は避けられない。60年代に就業した女性の多くは、子どもの施設への迎えに間に合うような職についていたことからも、世代交代を経て初めて常識として社会に定着していくことも多いことがわかる。これが第三の鍵と考える「時間の経過」である。

このように、女性の社会進出を進展させつつ、出生率も回復させた先進国のお手本と見なされる北欧では、法律の整備という「政治的強制力」、強い変化への「意思と主張」、そして50年という「時間の経過」による、 社会のルールが変化したことに注目したい。一方の性の論理で作られてきた既存の枠組みのまま、女性が働き、結婚し、出産するように促すといっても、所詮無理がある。

現在の北欧社会は、どのような姿なのか。それまで女性が担ってきた家事や子育ての一部は「社会の仕事」となり、その他は、男女で分担する。ビジネスにおいても、仕事のルールは変化し、同僚に子供がいる場合は16時以降の会合は極力避ける (デイケア施設は17時に閉まる)といった社会のコンセンサスが形作られている。

2014年現在、男性就業率75.9%、女性70%と、男女ともにほぼ同レベルの就業率となり、離婚率45%、出生率1.9弱となっている。男性の残りの25%は何をしているのかとか、離婚率はそんなに高いのかとか、脇道に逸れたい突っ込みどころ満載の統計ではあるのだが、それはまた次回のテーマにしたい。

 

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