無料会員募集中
.政治  投稿日:2013/11/14

[清谷信一]陸上自衛隊の時代遅れな「最新型戦車」の量産に疑問〜1千億円の開発費と毎年10輛・150億円に効果はあるか⑤


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

|⑤

 

④から続くネットワーク化にも問題がある。ネットワーク化されているのは10式だけだ。防衛省は90式のネットワーク化をするとは言っているだけで、全く進んでいない。また歩兵戦闘車や装甲兵員輸送車、下車して戦う普通科(歩兵)のネットワーク化は全く進んでいない。戦車は非常に視界が悪い乗り物で、歩兵と共同しないと思わぬ大損害を受けることがある。ゲリ・コマ対処にはデータ(例えばデジタルマップ上の敵味方の位置など)や、ビデオ映像などのやり取りが普通科や他の兵科と必要だが、これが全くできない。

10式を調達する予算で90式のC4IR化を行えば、わずか数年ですべての90式のネットワーク化が可能だった。ところが10式は何量調達されるかも、それが何年かかるかも分からない。従来からの例だと調達完了までに20~30年はかかるだろう。だが、その頃にはC4IRは完全に旧式化して使い物にならない。またその間に実戦が起これば、ネットワーク機能を活かすことはできない。

当初防衛省は90式のC4IR化は不可能だ(だから10式を開発する)といっていたが、10式のC4IRシステムのテスベッドには90式が使用されており、10式のC4IRシステムを開発に関わった陸自の元高級幹部は筆者に90式のC4IR化は可能であると断言している。

そもそも内部容積が極めて窮屈な旧ソ連のT-55やT-62、T-72ですらそのような近代化が可能である。筆者はこの手の近代化された旧ソ連戦車の車内に実際に何度も中に入って見聞したことがあるが、これらに比べると90式は遥かに余裕があった。対して10式の車内は90式に較べて極めて窮屈であり、将来の近代化は難しいだろう。

しかも10式は米軍とのデータのリンクができない。陸幕が要求しなかったからだ。米軍は高度にネットワーク化されており、これにリンクできなければ事実上共同作戦は取れない。陸自は同盟軍の共同作戦も考えていないようだ。10式は将来の近代化も難しい。10式のセールスポイントはモジュラー装甲や弾薬燃料を下ろせば、40トン級の民間トレーラーでも輸送が可能であることだ。これは換言すると将来に重量が増加するような近代化をすると、そのセールスポイントが失われることになる。つまり、10式はゲリ・コマ対処に向かず、近代化もマトモにできないので将来は旧式化するに任せることになる。

 

|⑤

 

【あわせて読みたい】

タグ清谷信一

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."