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国際  投稿日:2016/11/13

突破口を求め苦悩する韓国の保守 その5

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朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

(この記事は2016年11月7日に入稿したものです。)

3 保守層が目指す外交・安保路線継承と維持

2)THAAD (サード : Terminal High Altitude Area Defense missile : 高高度防衛ミサイル)配備の実行

北朝鮮の核兵器の脅威から韓国を守る上での軍事的対応策で最も重要な問題の一つがTHAAD(サード)配置問題だ。今回のデモがこの問題に対する反対運動にまで及んだ時は、デモにたいする北朝鮮の地下組織と従北勢力が関与していると疑った方がよい。韓国の保守勢力は何としてでもこの問題への波及を阻止しようとしている。

こうした不安を解消するためもあり、在韓米軍のブルックス司令官(韓米連合軍司令官兼務)は11月4日、ソウルの講演会に出席し、米最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD : サード)」の在韓米軍への配備について「強い意志を持って推進する」と述べ、この先8~10カ月以内に配備を完了すると明らかにした。韓米は来年末までに完了するとしているが、早ければ来年7月ごろにも配備を終えられることを示唆した。THAADは韓国南部の慶尚北道・星州に配備されることになっている。

ブルックス司令官は、1日に韓国軍制服組トップの李淳鎮(イ・スンジン)合同参謀本部議長とともに米領グアムの米軍基地のTHAAD砲兵部隊を視察したことを伝え、「韓国にはグアムよりも大規模なTHAAD部隊が配備される」と説明した。

一方、米国の戦術核の韓国への再配備を求める声が韓国国内で出ていることについては、「韓米は朝鮮半島の非核化に強い意志を持っているが、戦術核の再配備はその意志を危険に陥れる恐れがある」と述べ、否定的な姿勢をみせた。韓国の独自の核武装に対しても「不必要」との認識を示した。

ブルックス司令官はまた、北朝鮮は核・ミサイルを開発し続けているとした上で、「(北朝鮮の脅威に対抗し)必要に応じて韓米同盟を拡張することが可能であり、同盟に寄与するパートナーをさらに受け入れるという方策もあり得る」と述べ、韓米日3カ国の軍事協力の強化が必要だとの考えをにじませた(聯合ニュース日本語版2016/11/04  )。

3)韓日「慰安婦合意」の履行

米日韓連携で最も弱い環は韓日の連携だ。昨年12月28日の「韓日従軍慰安婦問題合意」以降、韓日関係は好転の兆しを見せ、懸案であった韓日GSOMIA (ジーソミア : General Security of Military Information Agreement : 軍事情報包括保護協定)締結へと一歩踏み出していた。しかし「崔順実ゲート」問題で暗雲が漂い始めた。この危惧は最大野党「共に民主党」所属の沈載権(シムジェグォン)委員長の発言で増幅した。

韓国国会の外交統一委員会で10月13日、沈載権(シムジェグォン)委員長は慰安婦問題に関する韓日合意について「合意の無効と『和解・癒やし財団』の解体、韓日政府の全面的な再交渉を要求する」と述べた。委員長として一方的な主張で、不適切だとして与党セヌリ党の委員が退席し、審議が一時中断したが、その後、沈委員長は遺憾の意を表明し、委員会は正常化した。

また国政監査で野党側は尹炳世(ユンビョンセ)外相に対し、安倍晋三首相が元慰安婦におわびの手紙を送ることについて「毛頭考えていない」と発言したことなどを追及。「加害者の日本は堂々としていて、なぜ被害者の韓国は屈辱的な外交をしているのか」との指摘もあった。尹外相は安倍首相の発言について「言及を控える」とし、合意を履行する重要性を訴えて理解を求めた。

韓国の保守層は、この問題でも「合意」を履行することが重要だと考えており、合意を守ることが韓米日の結束を固め韓国の国益に合致すると考えている。

 

(このシリーズ了。その1その2その3その4。全5回)

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この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)など。

朴斗鎮

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