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.政治  投稿日:2014/3/4

[清谷信一]<防衛省・本年度導入の装備に疑問>正統な手続きを経ない官製談合の疑いがあるAAV7導入


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

先月20日、防衛省が本年度予算で評価試験用として米国に発注していた水陸両用装甲車、AAV7(Assault Amphibious Vehicle,personnel.model7)のAPC(装甲兵員輸送)型4輛が我が国に到着した。これらの今後の運用方法などに関しては重大な疑惑が浮上してきた。

これまでも述べてきたが、本来、これらは来年度予算で発注される指揮通信型、改修型各1輛と併せて試験運用を平成29年までに行い、その後採用するかどうの結論をだす、とのことだった。防衛省の徳地秀士・防衛政策局長が平成25年4月15日の予算委員会第一分科会で証言している。

ところが陸幕(陸上幕僚監部)は指揮通信型、改修型の到着を待たず、APC型4輛だけで評価試験を行い、本年12月までに結論を出すと、評価試験を大幅にオミットすることが筆者の小野寺五典・防衛大臣、岩田清文・陸幕長への質問で明らかにされた。

これが徳地秀士局長の答弁以来、日中紛争の危険性が急速に拡大して、準戦時状態にでもなっており、所用の手続きを省いても新装備が必要であるならば理解できる。だが、大臣も陸幕長も安全保障上の環境に変化はない、と筆者の質問に答えている。

後日、陸幕広報室経由で示された公式見解は「徳地局長の答弁は、平成25年4月当時判明している状況での説明であり、事後、米国との調整等が進んだため、これに伴う変化」だとしている。

これは「アメリカから言われたから、自分たちで必要な検証を放棄します」と、言っているに等しい。独立国の「軍隊」ではありえない所業だ。

そして導入された4輛の使い方を見ると尚更はっきりする。4輛内2輛は日本の道交法と船舶法に準拠するためと、陸自仕様を施すため、改装が年内いっぱいかけて行われる予定である。

つまり2輛は評価試験には間に合わず、使用されない。本来であれば4輛すべてを自衛隊仕様にしてから試験が開始されるべきだ。これは極めて奇異としか言い様がない。

更に、残りの2輌の内、1輛が土浦駐屯地の武器学校に、もう1輛が富士学校に送られる。ところが筆者の知る限り、陸自が水陸両用試験を行える場所は北海道しかない。つまり、どちらの駐屯地でもAAVの水陸両用車の評価試験は行えないし、2輛以上での部隊としての運用試験も不可能だ。方策としては北海道に運び込むしかない。

であれば、評価を担当する部隊と、整備関係者も長期にわたって北海道に詰めるしかない。両駐屯地に配備する意味は無い。そもそも北海道に持ち込んで本格的な「水陸両用」試験をするかどうかも明らかにされていない。しかも評価にかける期間は僅か半年だ。

現状を見る限り、AAV7の「評価試験」は単なるアリバイ工作にしか見えない。

しかも来年度予算で「評価試験」用に調達されるが、「評価試験」に使用されない指揮通信型、回収型各1輛は中期防で陸自用に調達される「水陸両用車」52輛の内訳に入っているという。

先の徳地局長の答弁を紹介しておこう。

「27年度までに取得をいたしまして、それから1、2年かけてこれにつきまして性能を確認する、あるいは運用の検証を行う。これによりまして、水陸両用車を導入すべきかどうか、それから実際にどの機種にするかということについて検討をするということになっております」(徳地秀士・防衛政策局長)

だが、「評価試験」をする前からAAV7の採用は決定しており、「評価試験」として調達される揮通信型、回収型各1輛は実戦用の「装備」として調達されることになる。形だけの「評価試験」、あるいは出来レースと言われても仕方あるまい。因みにAAV7の早期導入は君塚栄治・前陸幕長の鶴の一声で決定したという。

正統な手続きを無視し、必要かどうかもわからない装備の導入を始めから採用ありきで決めるのは民主国家として極めて異常としか言い様がない。

これは国会と納税者を欺く行為であり、「官製談合」と疑われても仕方ないだろう。あるいは米国政府と我が国の政府の間の密約を疑われてしかたあるまい。

 

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