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.政治  投稿日:2014/1/24

[清谷信一]まともな評価もしないでオスプレイ導入を政治決定した安倍政権〜兵器は子供の玩具ではない②


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清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

①から続くオスプレイは巡航速度が時速443キロとヘリよりも圧倒的に高速なので、巡航速度が200キロ台で航続距離が短い攻撃ヘリや武装した汎用ヘリが地上制圧や護衛のために随伴することが出来ない。地上制圧はジェット戦闘機も可能だが、対地速度が極めて速いために正確な攻撃ができない。また滞空時間が短いために長時間作戦空域にとどまって火力支援を行うことができない。現状唯一の攻撃手段はBAEシステムズがオスプレイ用に開発した機関砲を胴体下部に装備することぐらいだ。だがその分搭載量は減るし、攻撃ヘリや武装ヘリのように多彩な兵装を搭載できない。

オスプレイは速度では固定翼機にはかなわない。ターボプロップ式の典型的な輸送機、C-130Jの巡航速度は時速634キロに対してオスプレイは時速443キロに過ぎない。つまり、ヘリほどの器用な空中機動はできず、また固定翼機ほど高速はでないという、ある意味中途半端な機体である。

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(オスプレイはC-130のような輸送機よりも速度が劣る:著者撮影)

 

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(オスプレイは画期的な航空機で利点も多いが、欠点もある。また調達単価が極めて高い:提供ボーイング)

 

小野寺防衛大臣はオスプレイはひゅうが級やいずも級のDDH(ヘリ搭載護衛艦)でCH-47場合、整備のために艦内の整備デッキに運ぶためにはローターブレードを取外す必要があり、これはかなりの手間がかかる。対してオスプレイは、ローターブレードを畳めるのでDDHで運用が容易であると延べ、これをオスプレイ導入理由の一つとしている。

だが、海軍用のヘリならば大抵ローターブレードは折りたためる。CH-47は搭載量も機内容積もオスプレイより大きく、CH-47での輸送前提にした装備にはオスプレイでは輸送でてくる。

また、海自が運用しているMCH-101の輸送型や米海軍、海兵隊、ドイツ軍が導入予定のCH-53の最新型、CH-53Kなどもオスプレイよりも搭載量が大きい。欧州で広く使用されている最新型の中型汎用ヘリ、NH90は概ねオスプレイと同じペイロードだが、調達コストは概ね四分の一から三分の一程度である。

複合材の機体や自己診断システムを採用しており使用していることもあり、維持運用費も安く済む。防衛省がその欠点を理解し、また代用手段と比較検討し、それでもあまるメリットが有るか検討したようには思えない。

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 (海自が使用しているMCH-101の輸送型AW101:提供・アグスタウェストランド)

 

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 (CH-53ならばこのような、装甲車を搭載して輸送できるがオスプレイには不可能だ:提供・KMW)

 

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(NH90は先進的なヘリで、フライバイワイヤを使用しており、極めて操縦性が高い。また整備も容易だ:提供・エアバス・ヘリコプター)

 

オスプレイの唐突な採用は政治決断だろう。筆者もオスプレイ導入のメリットとして紹介してきたが、自衛隊がオスプレイを採用し、本土で運用するようになれば主として沖縄でのオスプレイは危険であり、この配備に対するする運動は沈静化するだろう。確かにそのメリットは小さくないが、だからといって事前の調査も行わず、運用も不明瞭のまま2千億円以上の税金を投入するのは異常だ。そのような政治的なアナウンス効果を主と考えるのであれば、数機程度の調達で十分である。例えば海兵隊向けのMV-22ではなく、特殊部隊用に米空軍の特殊部隊用のCV-22を採用するのであれば3〜5機もあれは十分だ。

現代の紛争や戦争では特殊部隊が極めて大きな役割を負っているが、自衛隊はその認識が薄い。陸自の特殊作戦群は300名(実戦部隊は約200名)と小世帯であり、特殊部隊用の航空部隊も保有していない。特殊作戦用の航空機は夜間に低空を飛ぶなど危険な飛行をするので、通常の輸送部隊では向いていない。故に専門の航空部隊が必要となる。島嶼防衛で特殊部隊を使用するにも「足がない」のが現状だ。

もう一つはVIP輸送用の機体としての採用だ。陸自はVIP輸送用としてエアバスヘリコプター(旧ユーロコプター)のEC-225LP、スーパーピューマ3機を運用している(一機は先の震災で損失し、代用機を発注)が、その代わりに採用すればいい。余剰となったEC-225LPは海保や消防、警察に払い下げるなり、民間に売りだせばよい。これであれば安倍首相や天皇陛下がお召になるわけで、これ以上にオスプレイの安全性をアピールする方法はあるまい。しかも調達数は3機で済む。

安倍政権はオスプレイにしろ、水陸両用装甲車AAV7にしろ、大型UAV(無人機)グローバルホークにしろ、まとも評価したり、どのように運用するかも検討せずに、中期防で調達数まで明記している。まるでアメリカにカネをバラ撒いて、兵器を買えば国防は安泰だと思っているようだ。だが、これはまるで子供が新しい玩具を欲しがるようなものであり、実際には防衛費を浪費し、自衛隊を弱体化させ国防を危うくすることになる。米国防産業との癒着を疑われも仕方あるまい。

このような愚かな行為が安倍首相の言う「戦後レジームからの脱却」なのだろうか。①を読む

 

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