.国際  投稿日:2018/3/9

南北「非核化ショー」に惑わされるな

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 朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

 

 

【まとめ】

・金正恩委員長は文在寅親北政権を本格利用する道に踏み込んだ。

・米国と戦えない北朝鮮はこの道を選ぶしかなかった。

・米国がやるべきは、北朝鮮に核を完全放棄させること。    

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=38828でお読み下さい。】

                              

米国の軍事的圧力と経済制裁の強化、そして国際的孤立で行き場を失った金正恩委員長は、窮地から脱するために、3月6日、韓国側特使に対して「南北首脳会談」のカードを切った。

 

「非核化」を匂わせ、文在寅親北政権を本格利用する道に踏み込んだ。時間稼ぎと資金稼ぎのためだが、このストーリーは、過去における「窮地からの脱出法」のデジャブとも言えるもので別に驚くことではない。2

写真)北朝鮮金正恩委員長との会食に臨む鄭義溶(チョン・ウィヨン)韓国国家安保室長ら。2018年3月5日

出典)韓国大統領府

 

筆者は、戦争直前まで追い詰め、制裁を強化すれば北朝鮮は必ず「和平」に出てくるとして、経済制裁だけでなく軍事的圧力強化を同時に進めるトランプ政権の対北朝鮮政策を是としてきた。今回の金正恩の出方は、この方法が正しかったことを証明した。二言目には「戦争」を口にして強がりをいったものの、米国と戦えない北朝鮮の現状ではこの道を選ぶしかなかったのだろう。

 

「制裁は効いていない」「圧力では対話に出てこない」「対話で解決しなければ戦争になる」などと主張してきたいわゆる「専門家」「ジャーナリスト」が、いかに金正恩政権の実態を覆い隠し、北朝鮮核問題の解決を妨害し、時間を浪費させてきたかが明らかになった。この人達は、朝鮮半島における過去の南北関係の歴史も、世界における反独裁、反テロ闘争の歴史も十分に研究してこなかった人たちだといえる。

 

金正恩はヒトラーと同様、国民を恐怖政治で抑圧し、国際社会に対しては、戦争の恐怖、核の恐怖をばらまくことで生き延びてきた政権だ。戦争を恐れると彼の術中にハマることになる。戦争を恐れる宥和政策がいかに悲惨な結果をもたらしたかは、ヒトラーに対する宥和策で失敗した英国首相ネヴィル・チェンバレンを見れば明らかだ。

 

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写真)ミュンヘン会談から帰国後のチェンバレン首相 1938年9月30日

Public Domain:英国情報省

 

 

トランプ大統領の対北朝鮮圧力政策は効果を収め一歩前進した。しかしここからが正念場だ。トドメを刺さなければならないからだ。すべての問題解決で「最後の詰め」が勝敗を決めるカギとなる。「最後の詰め」が全プロセスの90%だと言っても過言ではない。すなわち、北朝鮮の核を廃棄させるこれからの戦いが90%残っているということだ。ここで手を緩めればこれまでの苦労は水の泡となる。25年間米国はそれを繰り返し失敗してきた。

 

今後米国がやらなければならないのは、手を緩めずに追撃し、核を完全に放棄させる作業である。金正恩が非核化の具体的行動を見せるまではアメを与えてはならない。交渉に入るとしても引き続き経済制裁と軍事的圧力を加え続ける必要がある文在寅(ムン・ジェイン)政権の「金正恩救出作戦」に惑わされて時間を与えれば米国は取り返しのつかない敗北を味わうだろう。

 

それと同時に、金正恩政権に対する「宥和政策」で韓米同盟と米日韓の民主主義同盟に亀裂をもたらし続けている文在寅政権を厳しく監視し続けなければならない。今回の「金正恩非核化ショー」には文在寅政権内の従北朝鮮勢力が深く関与していると思われるからだ。このショーについては、文在寅監督、金正恩主演、任鍾晳(イム・ジョンソク)・文正仁(ムン・ジョンイン)共同脚本、徐勲(ソ・フン)振り付けだという説もある。

 

今回、鄭義溶室長を団長に選び、米国に特使として送るのも、彼が米国好みの説明に長けているからだと思われる。トランプ政権がそれを見抜けるのか、そしてどのような対応に出るのかが注目される。

 

トランプ大統領は3月6日(現地時間)、ホワイトハウスでのスウェーデンのロベーン首相との首脳会談に先立ち、記者団に対して、「北朝鮮が肯定的に行動するように見えるが、今後を見よう。韓国と北朝鮮から出た発表は非常に肯定的だ」と述べたという。

 

その一方で、ホワイトハウスは同日、ペンス副大統領名義の声明を出し、「米国は交渉結果に関係なく北朝鮮が核計画を中止するまで最大限の圧力を加えることに力を入れる。すべての選択肢がテーブルの上にある」と明らかにした。対話基調は歓迎するが、金正恩が米国を満足させるほどの非核化の意志を明らかにしなかったり状況を変えるために奇襲挑発をしたりした場合、いつでも軍事選択肢に旋回できるということだ。完全な非核化がなされるまで北朝鮮に対する圧力を解かない考えを明確にした。ペンス副大統領のこの方針が堅持されれば北朝鮮の非核化は成功を収めるだろう。

 

編集部注:

3月8日13時(日本時間)に本稿が寄稿された後、米政府と韓国国家安全保障室長は、トランプ大統領が、5月までに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談することで合意したと発表した。実現すれば現職の米朝首脳の会談は初めてとなる。

 

トップ写真)韓国文在寅大統領との会談に臨むトランプ大統領 2017年10月2日

flickr : The White House

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この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)など。

朴斗鎮

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