[山田厚俊]<「河野談話」見直さない>右傾化を強めてきた安倍首相も、結局「外圧」で軌道修正?
山田厚俊(ジャーナリスト)
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「安倍内閣で見直すことは考えていない。歴史に対して我々は謙虚でなければならない」
「歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」(安倍晋三・首相)
安倍晋三首相は3月14日、参院予算委員会で従軍慰安婦への旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の「河野談話」について、こう答弁した。また、慰安婦問題については「筆舌に尽くしがたい辛い思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛む」と述べた。
オランダ・ハーグで3月24、25日に開かれる核安全保障サミットでの日米韓3カ国首脳会談を実現させ、4月のオバマ米大統領訪日を実りあるものにしたい。加えて、緊迫が続くウクライナ情勢で微妙な立場に置かれた日本がこれ以上、“暴走”してはならないーー官邸周辺や外務省関係者によれば、こうした外交日程や国際情勢が安倍首相の“路線変更”を余儀なくさせたものだという。
高支持率を背景に、靖国参拝、集団的自衛権をめぐる憲法解釈の見直しなど、“右傾化色”を強めてきた安倍首相だが、結局「外圧」によって軌道修正を図ってきたというように見える。
自民党ベテラン衆院議員はこう語る。
「安倍首相は、昨秋辺りから菅義偉官房長官の諫言を無視して自分の意のままに物事を進めてきた。圧倒的に数が優位であるときこそ、相手を立てつつ慎重な議論が必要なのに、それを無視してきた報いとも言える。今後は、右傾化路線を一度封印して第2次安倍政権誕生当初の経済政策重視路線に戻すしか手がないはずだ。4月の消費増税実施以降、今夏までどれだけ“経済の実り”を国民が実感できるかが長期政権となるかどうかの勝負になる」(自民党ベテラン衆院議員)
戦後、55年体制を築いてきた自民党の歴史は、臆病なほど国内世論、海外情勢に目を凝らしてきたことを安倍首相は感じているということだろう。ともあれ、今回の慰安婦発言が安倍首相のターニングポイントとなるかどうか、注目したい。
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