[相川梨絵]<ココナッツ燃料の開発を!>ガソリンがなくて消防車が出動できないバヌアツの悲願
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)
日本ではあり得ない事件がバヌアツでは当たり前のように起こります。地元紙デイリーポストの記事によると、ある民家で、裏の物置から出火し、火事が発生。すぐに警察と消防署に電話すると驚きの回答が。
「ガソリンがないから、いけない。」
断られてしまったため、近所の人たちが水をかけて消火活動を試みました。しかし、結局、全焼。消防署は火事の現場から歩いて15分のところにあるのだそうです。もし、この時、消防車にガソリンが入っていたら、たぶん、この方はすべてを失わずにすんだでしょう。
なぜ、このような悲劇が起こったか、それは、お金。お金がなくてガソリンが買えなかったのです。バヌアツ共和国は、物資のほとんどが国外から船で運ばれてきます。コンテナ船も頻繁にくるわけではないので、ある品物が一時的に国からなくなるということもしばしば。
常に、物があふれている日本に比べると不便ですが、なければないで何とかやっています。そんな訳で、物価も日本より遥かに高い。ガソリンも然り。比較的、物が手に入りやすい首都のポートヴィラで1ℓ=180バツ(約200円)。離島においては、1ℓ=400バツ(約440円)もします。財政が乏しいバヌアツの公的機関で、このような事態が起きたのは、どうしようもなかったのかもしれません。
以前、バヌアツでは、自国でたくさんとれるココナッツから車の燃料を作るという取り組みをしていました。
政府の公用車などで試験的に行われていたそうです。ただ、その生成方法が良くなかった為か、純度が低く、車の故障が続出。そんな訳で、このプロジェクトは 頓挫してしまいました。
私は、今一度、このプロジェクトを復活すべきだと思います。自国でエネルギーをまかなえて、しかも、地球にもやさしい。
これが、うまくいけば、他の近隣諸国のモデルケースにもなります。産業の活性化にもなり、雇用も産まれます。
バヌアツは、被援助大国で、日本はもちろんオーストラリア、アメリカなどからたくさんの支援を受けています。
そのほとんどがインフラ整備や教育。ココナッツ燃料の開発プロジェクトのような、技術開発の支援も積極的にしてほしいなと思うのです。
「南の島では、ココナッツで車が走る」こんな素敵なことが実現したら、ますますバヌアツがハッピーな国になると思いませんか?日本の技術支援もこうした分野に行われるべきだと思うのです。
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