<女性差別の国・日本というイメージは誤解>欧米と比較しても日本は女性差別の国ではない
ulala(ライター・ブロガー)
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フランス人の友達に「日本はすごい女性差別の国で、子供を産んだら仕事しちゃいけないんでしょ?」と言われてびっくりした。安倍首相が今月フランスを訪問したことで、日本の女性に関してこちらの新聞でセンセーショナルに取り上げているのだ。
「女性差別」と聞くと、ものすごく女性が虐げられている様子を思い浮かべる。でも、私は「日本は本当に女性を虐げている国なのだろうか?」と疑問に思う。どちらかと言えば日本は「女性を女性として守ろう」としてきた国なのではないのだろうか?こうした認識の差の背景には、日仏の女性をめぐる歴史上の違いがある。
幕末の1859年まで日本に滞在していたオランダ人のヴィレム・ホイセン・ファン・カッテンディーケの記録『長崎海軍伝習所の日々』では日本の女性の様子をよく表している。
「日本では婦人は、他の東洋諸国と違って、一般に非常に丁寧に扱われ、女性の当然受くべき名誉を与えられている。もっとも婦人は、ヨーロッパの婦人のように、余りでしゃばらない。そうだといって、決して婦人は軽蔑されているのではない。」
そして、こうとも言っている。
「他所では何処でも精神的文明が発達するにつれて、婦人は男子と相並んで社会上立派な地位を占めている。然るに日本の婦人は幾ら大切にせられ、自分の自由を持ってるとはいえ、男子に対しては絶対にあがめ奉ることを強いられている。」
男性をあがめるように強いられてはいたが、「自分の自由」を持っていたのだ。
一方フランスでは、1804年に制定されたナポレオン法典を見てみても、女性は明らかに虐げられていた。女性は結婚すると無能力となり、夫への従属、貞操義務などが生じる。
仕事をするにも夫の承諾書が必要で、妻は財産の所有権・管理権を持たず、働いて得た給料すらもすべて夫が管理することになっており、それは1907年の法律改正まで続いていた。法律も除々に改正されてはいったが、カトリックの教えの影響も大きく、堕胎や離婚もままならない。協議離婚が認められたのは1975年とつい最近だ。
こうした違いは、日本の「主婦」とフランスの「家庭にいる妻(femme de foyer)」の違いにも現れている。日本の「主婦」は家計を握り、子育て、家事の一切をこなし、家庭の実権を握っている。一方、フランスの「家庭にいる妻」にはそういった実権はない。最終決定は夫がするもので、母であるよりも夫の同伴者であることが重要視される。
「家庭にいる妻」の地位が高いとは言えない中、フランスの女性たちは男性と同様の立場を求め、働いて経済的・精神的自由を手に入れようと力強く戦った。特に1970年頃からこうした女性達の意思が反映され、女性の地位と、働く環境が改善されていった。
一方、日本では、女性にはある程度の「自由」があった。「女性らしく」子育てしたり、家庭にいることによって女性は優遇されたが、働くことに関しては、家族から反対された。このため結婚して辞めることも多く、母性主体の日本の文化の中、女性自身にも「子供が小さい間は子育てに専念したい」と言う考え方が依然として残った。
日本では保育所などの就学前の施設に国内総生産(GDP)のわずか0.4%しか予算が割り当ておらず、それがフランスの予算の3分の1でしかなくても社会が機能してきたのだ。しかし、女性を優遇してきたつもりで作った社会システムが、今、仕事を続けたい女性にとって大きな足かせになっている。
配偶者控除の不平等性や、保育所の大幅な不足、家事や育児を一切しない男性を前提としている勤務体系、これらを背景に女性の働ける時間が限られ、低賃金の非正規雇用に追いやられている現実。完全に、女性が働く環境の整備が遅れている。
日本では、西洋人がイメージするような、「女性差別」が行われているわけではない。だが、やはり日本社会独特の文化が結果的に女性の社会進出を妨げてきたのだ。
日本では依然として「専業主婦」でいたい女性が多いのも事実だが、仕事がしたい女性は増えている。1人の収入で一世帯を賄えない家庭も増え、共働きの必要性も高まっている。時間はかかるだろうが、まず保育所の確保など土台作りから始めて、日本の文化を生かしながらも、“女性が働きやすい環境”を整備していかなくてはならない。
【執筆者紹介・ulala】
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、ライターとして活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。
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