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.社会  投稿日:2014/6/27

[西田陽光]日本の未来を担う若者達に、日本の大人たちは何を伝え、残していけるのか?


西田陽光(一般社会法人・次世代社会研究機構 代表理事)

執筆記事プロフィールWebsiteFacebook

 

「日本の未来を担う若者達に、日本の大人たちは何を伝え、残していけるのか?」

私が昨年設立した一般社団法人次世代社会研究機構における活動の原点は、まさにこの疑問から始まりました。その新たなステップとして、昨年来、私は特別養子縁組推進のキャンペーンに奔走しています。一方で1998年以来、16年間学生の政策コンテストを主催する学生団体「ガイル」の事務局のコアメンバーへの支援も恒常的に取り組み続けています。

右肩上がりで育った世代から見ますと、我々の学生時代よりも「社会への貢献」に関心が高く、健気でスマート、そして清々しい存在に感じます。彼らは前向きで素直でありながら、なかなかクールで実利的な面も備えた普通に真面目な学生です。

様々な環境の違いの中で、同時代を生きる次世代の若者が可能な限りチャレンジ出来る、他者や社会への貢献心を持った存在であってほしいと願っております。そして厳しい環境の子達が将来の夢を諦めることがないように、恵まれた環境の子には、環境から得た豊かさや、そこで培われた才能を駆使した社会貢献が出来るよう願いつつ、サポートし続けています。

往々にして大人も学生も故郷の地域学、日本の歴史文化や江戸の話は皆目話す気がないのか、知らないことが多いのです。巷の歴女、歴士ブームもあるのですが、彼らの語る大半がTVドラマ、映画、お芝居、物語での知識で盛り上っているように感じます。

近年、江戸に関する理解は、ずいぶんと再認識されてきた部分もあります。しかし未だに江戸否定を前提とした欧米編重の価値観が続いています。明治時代に、中央集権化、富国強兵、舶来バンザイの欧米至上主義に基づき近代日本が築かれ、第二次大戦で敗戦したことで一層色濃く、欧米編重の価値観へと流れました。

戦後は文化生活を目指し、オール電化の生活様式は国家の目指す日本人の豊かさのロールモデルでもあったのでしょうか。反対に、江戸時代は見事にサスティナブルな循環型社会でありました。化石エネルギーを使わず、大半が人力でまかなわれ、きめ細やかなリサイクル流通が行き渡る江戸社会は、見事にエコなシステムとして機能していました。

オール電化にどっぷり浸かった今の私達にとって、江戸時代の社会システムは、理想的なものであっても、もう戻れぬ桃源郷なのでしょうか。今では日本社会から何が失われたのかさえも自覚できないほどに忘れ去られているのかのようです。

失いし価値観と生活様式を取り戻すことは夢物語、とは思いたくありません。次世代へ過去の先人たちからの叡智と経験事例を未来に活かすために、「何を伝え、何を残していくことができるのか」について、考える時に来ていると感じます。

徳川幕府が265年もの長い間、中国、韓国との隣国と友好関係を保ちつつ、侵略せず、侵略されず、国土の自然を人為的に保全しつつ、見事な循環型システムな社会を実現しました。当時の世界最大級の100万人都市江戸は、わずか292人の幕府の役人(行政官・司法官・定町廻同心)で行政運営できていました。徳川幕府は、これほどまで小規模だったにも関わらず、何故安定した社会を長期に亘り維持出来たのでしょうか。

それは、教育行政の多くの部分を町衆自身で担い、町民で手に余る案件のみを町奉行が対処し、極力町衆のことは町衆で解決していました。このことは、それだけ高度な自治能力が江戸の町衆に培われていたからで、極めて犯罪は少なく、教育は行き届き、識字率は当時の世界最高水準であり、それぞれの多様性に富んだ文化が日本の各地に栄えていました。多彩な人材が各地から輩出されている時代でもあったのです。

シンプルで高機能な仕組みは、その仕組みを使いこなせる人材があってこそですが、江戸の町衆がどのような人材育成を学び価値観を共有してきたのかを今後は俎上に上げていきます。

次回は江戸のリーダー教育「江戸の寺小屋」をご紹介したいと思います。

 

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