[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年12月23日-29日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今年も、あと一週間足らずとなってしまった。振り返れば、北朝鮮、中国、エジプト、シリア、イラン等、予想を超える事件・事態が目白押しだった。もう還暦を過ぎたのだから、少しぐらい予測能力が向上しても良いと思うのだが・・・。それでも、性懲りもなく来年のことを考えみる。
2014年に起こる可能性のある危機は何か。いつ、どこで発生するのか、予防は可能なのか、如何に悪影響を最小限にするかなど考え出すとキリがない。既に多くのシンクタンクが来年の予測を行っている。
中でも米国のCFR(外交問題評議会)が出した2014年の紛争予防優先度調査(Preventive Priorities Survey)なる報告書は面白い。政府関係者や学者・専門家1200人に2014年に起きる可能性のある危機についてインタビューした結果をまとめている。
CFRは優先度の高い危機としてシリア、アフガニスタン、北朝鮮を挙げた。シリアは内戦が勝者のないままズルズルと続く。アフガニスタンは米軍の撤退と大統領選挙で混乱が深まる。北朝鮮では強気の金正恩が挑発に出てくるかもしれない。以上に異論のある専門家は少ないだろうが、勿論これだけではない。更に多くの危機が生じる可能性も否定できない。来年のことをいうと鬼が笑うらしいが、いずれも発生すれば極めて深刻な事態となる。
今、筆者が考えている他の可能性は次の通りだ。
- アジアでは、中国人民解放軍が南シナ海での防空識別圏を設定し、海上に加え、公海上空でも小規模な軍事的摩擦が起こる可能性を考える必要がある
- 米国では、ワシントンやニューヨーク以外でのアル・カーイダによる大規模なテロ事件が起きるかもしれない
- 世界的な規模で日米、NATOなどに対する大規模なサイバー攻撃が発生する可能性も排除できない
- イラン核疑惑をめぐる交渉が失敗した場合のイスラエルによる対イラン単独攻撃の可能性は十分ある
- 中東方面ではエジプトやチュニジアよりも、パキスタン、イラク、イエメンでの内戦勃発の可能性の方が気になる
さすがに今週はイベントが少ない。欧米はクリスマスの週で、忙しいのはアジアと中東アフリカだろう。ちなみに、中国の外交部長は今週も中東訪問を続け、22-24日はモロッコを訪問している。
さて、今週はこのくらいにしておこう。皆様、よいお年を。来週は1月1日に再開したい。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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