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.政治  投稿日:2014/1/26

[岩田祟]何を基準に、誰を選ぶ? 2014年都知事選の歩き方〜「主要候補をこう読め!」2014都知事選ガイドマップ


岩田崇(株式会社ハンマーバード 代表)

執筆記事プロフィールTwitter

2月9日投票が行われることになった都知事選。今回の選挙は混沌としており、誰をどういう基準で選べるのか、私もよくわかりませんので、ちょっとガイドのようなものを提供できればと思いました。

◆都政に対しての主要候補をどうみるか◆

タイトルが「〜の歩き方」となっているのは、かつて流行った海外旅行ガイドと同程度にあくまで参考程度のものとして読んでくださいという意味です。いまのところ、投票を考える上で参考になる文章は下記のようなものがあります。

これで都政に対しての主要候補をどうみるかは大体わかります。ですが、今回の選挙は結果的に、政権与党に対する中間評価になる可能性があります。都政へのポテンシャル評価と、政権与党に対する中間評価の要素が混在している、この二重構造が誰を選べばいいかわかりにくい状況をつくっています。

図にするとこんな感じです。

《2014都知事選ガイドマッピング》

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都政は都知事がいなくても日常生活に大きな問題が生じないくらい官僚システムで動いています。いい意味で洗練され完成度が高いのです。すでに予想されている大災害に向けた対策、老朽化が進むインフラへの対応、都と区、都と国との利害調整、オリンピックの具体化をどのようにおこなうかなど、政策課題はありますが、たとえば泡沫候補とよばれる誰かが都知事となっても業務は淡々と動いてしまうでしょう。

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■マップについて説明しますね。

その前にまず、軸について説明すると、上下軸が東京都の首長としての経営ポテンシャルの高低、左右軸が安倍政権への嫌がらせ具合の大小です。

「首長の経営ポテンシャル」は個人の能力だけでなく、どのようなチームを編成できるかに掛かっています。チームを編成できない人も少なくありません。しかし、東京に限らず基礎自治体の政策課題は個人で処理できる量を超えることが大半です。従順な事務方がいれば公務員でチームを編成できますが、事務方は急激な変化を嫌う傾向があるので、首長の意向を汲むとは限りません。ですので、候補者個人だけでなく、候補者を応援するバックグランドからチームを編成できるかは、経営ポテンシャルを評価する上で重要です。

「安倍政権への嫌がらせ度」の意味は、高支持率を誇る安倍政権にとっての影響です。とはいえ、都政と国政は異なる層にあるものです。影響というよりは、飽くまで嫌がらせ具合の方がニュアンスとして近いような気がしたので、こうしています。ただ、嫌がらせも条件によっては何らかの効力を持つことがあります。付け加えると、県知事や都知事という存在は議員以上に取り巻きに影響されます。猪瀬元都知事も石原元都知事だけでなく、森元首相などがつくった構図のなかに置かれていました。

■各象限について

A象限は、政権与党に近いと言い換えることもできます。舛添氏は官僚からの評価も高いのですが、反面、突飛なことを行うとは考えられません。田母神氏も保守を標榜しています。石原元都知事も主要な支援者です。既存路線が好きな人はここでしょう。デメリットはイノベーションが起きづらいこと。

B象限は、支援者も含めた候補のパワーが弱いために、政権にとってはどうとでもなると捉えられる可能性が高く、経営ポテンシャルでもあまり期待ができない候補が入ります。家入氏を同じ象限の他の候補と分けているのは、ネットに親和性が高いことで、予想外のことができうる可能性がほんの少し高いからです。とはいえ、ネット界隈から伝わる、これまでのお騒がせを見ると評価できないないなぁと思います。ネットに詳しくないおじさんおばさんから根拠のない期待票を集めるかもしれません。混乱からイノベーションが生まれることを期待する方はここでしょう。

C象限は、政権与党に対してアンチの姿勢であり、経営ポテンシャルの面でも疑問符がつく候補が入ります。アンチの姿勢は正論である部分があっても、付加価値を生むことが苦手であることが残念な所です。宇都宮氏は多くの政策を掲げていますが、それをどう実行するかについての提起が弱いのです。

D象限は、政権与党に対して遠いが、必ずしもアンチではないという政権にとっては、やりにくい候補が入ります。政権に対してなんらかの再考を促したい場合はここの候補が有効でしょう。ただし、都政にどの程度、熱心に取り組むかは別問題です。

3・11以降の原発問題に、政府が真摯に向きあえば、特に、民主党から自民党への政権交代後におこなうべきことでありながら、おざなりになっていることのひとつは原発についての国民的な意思形成を先延ばしにしていることです。日本人の政府に対する信頼度が先進国の中でもとりわけ低い中、細川氏の戦略としては徹底的にこの点をついて、有権者に投票のモチベーションをつくるべきなのですが、情報発信があまり上手に見えません。

というわけで、誰もが納得できる「正解」の候補はなかなか見当たらないようです。東京オリンピックはあと6年後ですが、今回の候補が開会式の時の都知事であるという絵がそもそもイメージできません。

 

■ 蕎麦が食べたいのに、そこには創作料理が出てくるような・・・

私は、図の上部にある緑色の領域にもとづいて候補を選べればと思うのですが、残念ながら候補がいません。

美味しい蕎麦をたべたいのに、お店に入ると創作和料理と称する、よくわからない肉料理のメニューが出てきたような今回の都知事選ですが、こうなっているのには理由があります。都知事選だけでなく、日本政治が直面している構造的な問題なのです。

今回の都知事選が盛り上がりに欠けているように感じられるのは、食べたいものと出てきたメニューのズレがあるけど、候補も都民も、無論マスコミも、そのことをうまく言語化できていないことにあるのかもしれません。(残りの選挙期間で、このズレを言語化して有権者のモヤモヤを解消するようなメタ的な振る舞い、コミュニケーション戦略を実行できる候補(チーム)は大きな力を得られると思いますよ。)

都知事選という本来なら牧歌的に都政に対して賛否を戦わせるような舞台で、なにか違うものを見てしまっているのです。そのことを演者がどこまで自覚して表現できるかということです。

次回以降、このズレが生じている理由を明確にして、解決策を探っていこうと思います。

 

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