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.政治  投稿日:2017/9/29

首相の解散権縛るべき 民進党大島敦幹事長


細川珠生(政治ジャーナリスト)

 

【まとめ】

総選挙、共産党と「共闘」はしない。与党と一対一の構図に持ち込む「すみわけ」で行く。

・「希望の党」と合流すれば自公に議席減とショックを与えることができる。

・7条解散は違憲。憲法改正で首相の解散権を縛る

 

先週のこと(26日)だが、民進党の大島敦幹事長に総選挙の戦い方を聞きに行った。この時、誰がこの急展開を想像しただろうか。小池旋風止まず。民進党は結局「希望の党」に事実上合流することになった。

細川:今日は民進党の大島幹事長に選挙のことを中心にお伺いしたい。新しい体制に民進党がなって3週間で総選挙に突入と言う状況です。前原代表からはどういったことを中心にやってくれ、と言われていますか。

大島:当面は選挙、今度の木曜日ですか?解散になりますから、10月22日までの選挙をしっかりやりぬくと言うことが第一の仕事と考えています。

細川:残念ながら離党者が続出しています。候補者擁立という点については幹事長の役割も重要だと感じていますが、この離党者のところに対立候補を立てていくと前原代表は言っています。離党者のところに全部立てていくということになりますか。

大島:公党としては各選挙区に候補者を擁立していくのは1つの使命だと考えております。しかし前原代表が、一対一の構図を作るように模索したいといっています。野党の数が多いとどうしても相手方を利することになります。駅でレポートを配ったりしていると地元の声で一本化してくれと言う声が多い。できるだけ野党を一本化して、一対一の関係に持ち込んだら、強くなると考えています。

細川:野党共闘ということですか?

大島:「共闘」と言うのは、政策合意があったりお互いに推薦しあったり、政権取るぞというのが共闘です。今模索しているのは一対一の構図に持ち込むということで、政治の用語だと「すみ分け」。それぞれの政党がちゃんとした理念、政策ビジョンを掲げていますから、お互いの自主的な判断でそういう状況を作れたらいいということです。

細川:選挙区ごとに考えると言うことですか?

大島:どうやっていったら1対1の構図にしていくかっていうのも地域によって考えが違いますから、意見をしっかり聞き、党本部としての判断が加わるようになります。

細川:実際に今九州の熊本の方では共産党と候補者調整が行われた、との報道があるのですが、それも地域の事情に即して地元で判断をしたということですか?

大島:候補者を誰にするか全部党本部で決めますから、地域で決めたからそれがそのまま行くわけではなく、地域で相談したことを党本部に挙げてもらい、党本部で判断することになります。

細川:これまでに民進党は、前原体制になる前、国民からなかなか信用を得られなかった大きな理由に、共産党との共闘があったと思います。これを解消するということで前原体制が始まった。それに期待した党内外の人がいる。例えば、野党の候補者として共産党だけが立った場合、民進党の候補者は勝てないけれども共産党の候補者を応援するとか推薦するとかはないと。

大島:そういうことはしません。お互いに応援し合うというのはもっと深い関係ですから。

大島:そういう関係ではなくて前原さん言っている通り政権選択の選挙です。そこには党が抱える理念とか基本政策とかしっかりとした合意形成がないとそれはできないことです。市民団体の方、国民のみなさんからできるだけ一対一の関係の構造を作ってくれと言うのが私たちのところにも来ていますので、それを真摯に受け止めたい。

細川:それ(共産党との共闘)はもうしないという事ですね。

大島:そういう関係ではないです。

細川:安倍自民党反体の意見を入れたい時に、民進党もいない、他の社民や他の野党もいない、となったら、有権者は共産党に入れなくてはいけなくなりますよね、

大島:基本的には各選挙区に候補者を立てなければいけないけれども、手を挙げる人がいたりいなかったりするので、そういうこともあり得るのかもしれない。ただ私たちとしては、ほとんどの選挙区に候補者を出しているので、そこはそのまま頑張ってほしいというのが私の気持ちです。これまで総支部長のみなさんは、前の選挙から3年弱、一生懸命頑張ってきているので。そして今でも離党することなく頑張っているので、その気持ちはしっかりと受け止めたいと思っている。

細川:そうすると1対1と言う関係の中で中には、当然小池さんの勢力、希望の党も含めて、1対1を作っていく?

大島:これは、昨日今日の話だから、小池さんすべてリセットして自分が党首として始める、政策に同意がなければ、と発言していた。党として今注目をしているところです。

細川:小池さんも前原代表とは日本新党時代からの友人でもあり、具体的にこれから話をしていくことが大いにあり得るということですか。

大島:私もわからない。前原さんと小池さんの関係、枝野さん、玄葉さんも自民党の茂木さんも日本新党で、多くの政治人材を輩出した。細川護煕さんの大きな飛躍だった。その時の人間関係が今でも生きているとすればそういうこともあるかもしれない。昨日の今日の話なのでそれについて述べる事はまだできない。

細川:でも自然かなとは思いますが。要は「希望の党」の勢力だけでは自公の過半数を割る所まで行かないと思いますので、(希望の党と合流すれば自公政権の)議席減とショックを与えることができると思います。民進党丸ごとはやらないと小池さんは言うので、よくわからないですが、話し合える部分があってもいいのかなと思います。やはり今回の選挙の争点となるのが消費税の使い道の変更と憲法改正、もう一つの北朝鮮の対応ということで、国民の真意を得たいということですが、民進党としてはこういうことを争点として掲げられた場合に、それに対する政策を出さなくてはならないと思います。例えば憲法改正はどういう形で政策を出していきますか。

大島:今回の総選挙が本当に必要だったのかなと言う気持ちはある。2014年の12月の選挙、消費税を先延ばしにするという選挙をして政権とったわけです。ですから再来年の12月は2%確実に上げなくてはいけない。今度は中身を変えるということで選挙する、まだ1年以上あるわけですから。(議席も)3分の2持ってる。自信を持ってご自身の政治を行う。行った上で、総選挙をするというのが常道だと思う。ただ私は解散について恐れているわけじゃない。私としてはこれまで6月からこの閉会中も、様々な政策課題について準備をし、臨時国会に備え政府と議会が会話することによって政策の争点を明らかにして解散、と言う方が丁寧な民主主義だと思います。

細川:今の時期の解散の正当性について選挙戦において批判していくと?

大島:そうですね。国民のみなさんがなんで今なのかと怒っている。8月の3日に総理記者会見をして、丁寧に謙虚に国民の期待に応える、しっかりと説明責任に話すと言っていて加計・森友の問題とか、何の説明責任も果たさないで解散ということになる。みんな、弱い政治だと思っている。今回の解散も弱い解散だ。強い政権だったらしっかり議論をし、政府の正当性、与党の正当性をしっかり国民のみなさんに予算委員会を通じてわかってもらってそれで解散するでしょう。今の政治は草食化している。

細川:逃げの解散と言われていますからね。

大島:かつての自民党は非常に良い政党だった。竹下登さんは消費税を全ての自分の政治的資産を使い切って導入していくわけです。次の土井たか子さんに敗退しても、今の消費税というものを残した。与党の矜持というのはこういうものだと思う。今の政府与党は政治の矜持をもってない。

細川:安保法制の時は安倍さん、信念で通したと思う。安倍さんは、やっぱり外交防衛関係、憲法に対する思いは強い信念、ぶれない。しかし、こと経済になると、ボロボロだと思っています。全くわかってない。だから野党は攻めどころだと思う。例えば幼児教育無償化されても、子供を育てているとその先の方がお金かかって大変なんです。無償化すると言ってもただの経済援助じゃダメで、無償化と義務教育というのは本来セットでなくてはいけなくて、国が面倒みますという事はどのような支援の内容にするのか具体的議論は何もなく、ただ主婦に受けようという非常な場当たり的な政策だと思う。

民進党のオールフォーオールがすべて良いかは別として、やはり経済成長、成長戦略でやっていく社会ではなかなか厳しいと。国家がある程度保障すべきところは保障していく、という考えが前原さんの代表選挙ではあったわけですから、あれを前面に出すことによって安倍政権のボロが出るんじゃないかと思う。野党としての攻め方が非常に重要だなと思っていて、幼児教育にせよ、消費税の使い道の変更にせよ、小池さんのことを数合わせだと批判する資格がある政権なのか、と思います。

大島:ありがとうございます。1つ防衛安保の基本は何かというと経済力だと思うんです。皆さん円安になって貿易ができてよかったよかったと言いますが、日本の経済は円安によって小さくなってしまった。外交防衛の基本は経済力なわけですよ。

ですから、バブルが弾けた直後の橋本内閣の時にロシアのエリツィン大統領が来て、北方領土の問題、一瞬解決しそうになったというのを覚えていらっしゃいますか。当時のロシアは経済力が弱くて、日本がしっかりとした経済力を持っていたから、外交が成り立ったわけです。だから、外交安保の基本が経済力にあると言うことをしっかり認識して何を優先するのかというところですよ。

私も日本の理化学研究所さん含めほとんどの研究所のいろいろな研究者と会って話していますが、もうボロボロです、日本の基礎研究は。これを取り戻すのは10年20年かかる。ですからそういうところをしっかり手当てしながら、10年後、20年後に備える、そういうことがで必要です。幼児教育についても哲学が必要なんですよ。今の地域社会を誰が支えているか見ると、70歳代の方達。70歳代の方達で、皆さん厚生年金あるいは共済年金をしっかりかけていて、自治会長、民生委員、交通指導員などやられている。つまり公が支えているのが日本の社会。これは自己責任社会だった。今までは。貯金をし結婚し家を建てる、子育てが終わった後は貯金をして老後に備えるという、貯金を前提とした自己責任の社会、それは高度成長期で経済が成長してきたから貯金ができた時期。

だけど細川さんの世代よりも下の世代は貯金できない。この世代が今後どうやって過ごすのかと言った時にオールフォーオールです。みんなの善はみんなのためにという考え方でお互いに支えあう社会を作らないと、日本がもたないなということを思っていて、10年後に備えて私たちは1つの信念、考え方を持って完全自己責任社会から成長しない中で安定的にお互いに支え合える仕組みを作ろうというのが私たちの考え方です。安倍さんも唐突に(消費増税)2%の使い方を変えるというのは、私たちの考え方を理解していただいたのかなあと思うわけです。今の与党も私たちの考え方を理解して、哲学は無いけれども、そこの部分だけちょっとパクっちゃったのかなあとて思っています。

細川:これから民進党が政策を出していくと思うんですが、根本的な社会保障のあり方で、安倍政権は今の制度の枠組みの中でちょこっとこっちのお金をこっちに使いますよ、それいいですかって言っているようなものです。だけどそれは選挙を乗り切るためだけで、将来には何の役にも立たないわけです。そういうところを根本的な政策として出してもらいたいなと思うし、それが大きな選択肢になると思います。

大島:今の選挙より10年後の日本を考えると言うのが私たちの政策ですが、こういうのは選挙の時にはなかなか理解が進まない。私としては年内いっぱい議論を深め、来年1年間で給付と負担、例えば学校給食も無償化すると5,000億円ぐらいかかるんだけども、いろんなメニューの中で手当てしていきましょうという議論を国民の皆さんと会話したかったわけです。そのことによって税の理解を深めたいなと思っていた。ただ今回は唐突な解散なので、私たちもその議論は選挙を通じて短時間ですけども深めていきたいなと思っています。

細川: 蓮舫さんは、鞍替えするという話だったと思いますが、どうなったんでしょうか。ある意味目玉にはなると思うんですが。

大島:本人が代表を辞任するときに、衆議院から出ることもリセットしたと言う事ですので、今のところ出るという事は聞いていません。

大島:憲法の話ですが、なんでみんな忖度するのかというところを考えてみたいと思います。政治改革をやって、小選挙区制、政党助成金が生まれ、政治が草食化した。政党助成金は、ありがたいお金なんだけれど、本来は公費で運営しないほうがいいが、政治とカネの問題があったので、それを切るためにまずは導入されました。

党代表が、政党助成金を誰に配り、小選挙区制で誰を候補者にするかという権利を持ったわけです。これは党の最高トップがものすごい権力を持ったと言うこと。その次に、省庁再編で内閣府官邸機能強化をやった。私も内閣府副大臣で全部の省庁の企画と調整の権力をもったわけです。内閣府は、地味なんだけれど、権力を持っている。その次に、私たちも賛成しましたが、公務員制度改革で内閣人事局を作った。サラリーマンにとっては会社の中でお金と人事を持っている人が一番強いんですよ。

今の首相の権限はこの20年間でものすごく強くなった。アメリカは法律作るのは議会で、予算作るのも議会だから、意外と大統領は権限がなく、最高の権限は軍を動かせるということ。それ以外はそんなにない。ですから今、日本のみんなが忖度するという政治を考えると、立法府の権能を上げないといけない。私たちとしては、首相の解散権を縛ろうと。イギリスも2011年、6年前に縛りました。ドイツはワイマール憲法下に置いて何回も解散していたら、ヒトラーが台頭し、戦後のドイツ基本法は解散権を縛っています。各国ごとに解散権を縛るのが今の傾向、主流です。

細川:圧倒的に少ないですよね。日本のように自由に解散できてしまう国は。

大島:4年解散がないとなったら、立法府は落ち着いて、良い議論ができるわけです。今は、衆議院はいつ解散するかというのを念頭に置きながら走っている。首相もいつ解散したら得かと考えて、解散をするとこういうことになってしまう。だからこれからは与党の皆さんも賛同いただいて、与党も野党も、立法府に属する私たちは、政府の権力をしっかり封じ込める、押さえ込んで国民の権利を守る基本的人権を守るというのが、与党野党問わず、立法府の私たちの仕事だと思うので、(解散権を縛り、立法府)の強化が必要だなと思います。

細川:憲法改正が必要ですか。

大島: 7条解散、学者の中では違憲だという意見もありますが、憲法を改正することによって首相の解散権を縛るという議論を党内で始めているところです。意外と党内の賛同が得られそう。

細川:選挙でも出しますか。

大島:選挙でも議論して、基本政策として出したいと考えています。

細川:それを選挙演説で言うだけでもインパクトありますね。

 

(このインタビューは2017年9月26日に行われたものです)

トップ画像:細川珠生氏(左)と大島敦幹事長(右) (c)Japan In-depth編集部

 

 

 

 

 


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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