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.国際  投稿日:2018/11/22

韓国、「南北連邦制」に前のめり


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・韓国国民や米大統領を欺いてまで北朝鮮を擁護する文在寅政権。

・すでに親北では説明できないレベル。「南北連邦制」に向けた行動か。

・保守派弾圧、対北制裁破り、慰安婦合意破棄、徴用工判決にも連動。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読みください。】

韓国では文在寅政権となって1年半が過ぎたが、人事のゴリ押しがあまりにも多く、経済失政も続き、事実を曲げてまで金正恩をかばうことが多いために、「青瓦台(大統領府)の発表はひとまず疑うことから始めよう」という雰囲気が醸成されている。こうしたことから文大統領の支持率は20代を中心に7週連続で急落している。世論調査機関・ジョエンCNIの調査(11月10~12日)では、支持率が43.7%となり不支持率45.3%を下回った。

 

1)文在寅氏の北朝鮮擁護政治

文在寅大統領は、4月27日の金正恩との板門店会談後、「金正恩委員長は1年以内に核を放棄すると言っていた」と出鱈目な情報をトランプ大統領に伝え、トランプ大統領から「文大統領が伝えた内容と北朝鮮の態度はなぜこれほど違うのか」と抗議の電話を受けた。この内容はその後ボルトン補佐官によって暴露公開された。 

 

ところが文在寅大統領は、9月の平壌首脳会談後も北朝鮮が核実験場やミサイル発射場を閉鎖したと言及した際、またもや性懲りもなく「将来の核能力を廃棄した」との偽情報を流した。しかしこの情報も米国の情報機関の情報とかけ離れていた。

 

北朝鮮の核問題だけではない。文大統領は平壌首脳会談後、韓国の海上休戦ラインであるNLL(北方限界線)を放棄したのではと世論から追及されると、「北朝鮮は西海(黄海)北方限界線(NLL)を認めた」と発言した。ところが11月13日になって、北朝鮮の対韓国メディアが「西海の海上境界線を命懸けで守れ」という内容の緊急指示を海軍司令部に送っていた事実を報じた。ここで言う「海上境界線とは、NLLの南側に北朝鮮が勝手に設定している境界線のことだ。文大統領の言葉通り北朝鮮がNLLを認めているのであれば、自分たちが決めた海上境界線を「命懸けで」守るよう指示することなどあり得ない。

 

2)韓国大統領府報道官はもはや「北朝鮮代弁人」

最近米国の民間シンクタンク戦略国際問題研究所(CSISは、写真分析の結果北朝鮮が少なくとも13カ所のミサイル基地でひそかにミサイル計画を継続している状況が確認されたとし、それを米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。特にその中でニューヨーク・タイムズ紙は「休戦ラインに最も近い黄海道黄州のサッカンモル秘密基地は、ソウルからわずか135キロしか離れていない」と懸念を示した。

写真)サッカンモル弾道ミサイル基地の衛星写真

出典)CSISホームページ

 

文在寅大統領は9月、米国FOXニュースのインタビューで「東倉里ミサイル試験場が廃棄されれば、北朝鮮は二度とミサイルを試射する挑発はできなくなる」と語っていたが、戦略国際問題研究所(CSIS)」は分析結果に基づき、北朝鮮が東倉里ミサイルエンジン試験場の永久廃棄を約束し、それがミサイル計画の放棄であるかのように宣伝しているのは、巨大な欺瞞(ぎまん)行為だと指摘した。

 

ところが韓国大統領府(青瓦台)の金宜謙(キム・ウィギョム、ハンギョレ新聞出身で過去に情報操作で問題になった人物)報道官は、ニューヨーク・タイムズ紙の報道について「既に韓米情報当局が把握していた内容で、新しいものではない」と述べ、「サッカンモルの施設は『スカッド』と『ノドン』など短距離用」とし、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中距離弾道ミサイル(IRBM)とは関係がない」と主張、「北朝鮮が東倉里ミサイル基地のほかに、別のミサイル基地を廃棄すると約束したことはない」とのとんでもない発言を行った。これは、国連安保理制裁で北朝鮮のすべてのミサイル・プログラムの放棄要求が明記されていることを無視する発言だ

 

3)ビクター・チャ氏「韓国政府が北朝鮮弁護とは滑稽極まりない」

この報道官発言に対してTV朝鮮のメールインタビューに答えたCSISのビクター・チャ上級顧問兼朝鮮部長は、CSIS報告書に関する青瓦台発表を要約した文を自身のツイッターに上げた後、「どうして韓国が北朝鮮を擁護することができるか。偽外交(fake diplomacy)のために?」と書いた。この偽外交表現は、トランプ大統領が北朝鮮のミサイル基地報道は「偽ニュース」としたことを念頭に置いた表現と推測される。

 

そして「サッカンモルミサイル基地が北朝鮮の欺瞞ではない」とした韓国大統領府に対して、「韓国政府が北朝鮮の行動を弁護(defend)することは率直に言って(frankly)滑稽だ(ridiculous)」と痛烈に批判した

 

チャ氏はサッカンモルミサイル基地について、「政府は知っているか分からないが、一般大衆は知らなかった」とし、「(韓米)政府が知っていながらも措置していなかったとしたら容認するという意味なのか」と反問した。

写真)ビクター・チャCSIS上級顧問兼朝鮮部長

出典)CSISホームページ

 

チャ氏は、「北朝鮮は約束を破らなかった」とした青瓦台に対して、「国連安全保障理事会決議は、北朝鮮のすべての弾道ミサイルを禁止している。このことを思い起こさなければならない」と警告した。

 

文在寅政権の北朝鮮傾斜は親北朝鮮では説明できないレベルとなっている。それはすでに「南北連邦制」に足を踏み入れた行動ととらえなければ理解できない。こうした政治の方向が、韓国保守派に対する過酷な弾圧、北朝鮮への制裁破り支援、一貫した北朝鮮擁護外交、日韓慰安婦合意のちゃぶ台返し、「徴用工問題」での日韓条約否定、政治圧力での南北統一スポーツチームの結成などにつながっている。

                                      

トップ写真)板門店での南北首脳(2018年4月27日)

出典)韓国統一省ホームページ


この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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