ゴーンと司法
スポーツ  投稿日:2019/2/25

延長、延長で2試合分の死闘。決勝へ王手−日本製紙クレインズに引き受けの名乗りが


神津伸子(ジャーナリスト・元産経新聞記者)

【まとめ】

・プレーオフセミファイナル連勝でクレインズが決勝進出へ後1勝。

・廃部を発表しているクレインズ引き受けに札幌の企業が名乗り上げる。

・「日本のアイスホッケー界の発展に関して積極的な話し合い」(アジアリーグチェアマン)。

 

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今季限りで廃部すると昨年末にアナウンスしたアイスホッケーアジアリーグのクレインズの引き受け先に、札幌の企業が名乗りを上げ、交渉に入ったことが明らかになった。クレインズは、宿命のライバルイーグルスに、プレーオフで2勝1敗と勝ち越し、セミファイナルに進出。韓国デミョンキラーホエールズにも2連勝。プレーオフ決勝へあと1勝とした。多くの地元釧路のファンは、奇跡の逆転優勝を祈っている。

 

■ 名乗りを上げたのは札幌の企業。詳細はこれから

現在、交渉が進行しているため、企業名は伏せられているが、クレインズの引き受けに手を挙げたのは、札幌に本拠地を置く企業。昨年12月の廃部発表後、釧路市、北海道内だけではなく、全国でクレインズの選手・スタッフ一括での引受先を懸命に探していた中、吉報が届いた。「引き受けに名乗りをあげていただいたのは事実です。チームの存続の形に関しては詳細は、まだ全くこれからです。一部報道されているようなクラブチーム化、札幌と釧路のダブルフランチャイズなど細かい事は、まだ一切話は出ておりません。どのような形で進んでいくかはまだ、これから話し合いが行われます」と、クレインズの広報担当者は言う。

 

■ セミファイナル初戦は4時間半を越える試合に試合分の攻防

23日、アジアリーグプレーオフ準決勝。釧路でのクレインズとデミョン初戦は、試合開始が午後5時だったにもかかわらず、終了時間は午後9時半を回る死闘となった。試合は第3延長にもつれ込んでいた。デミョンの強力なシュートを横っ飛びでディフェンス加藤慎之助が死守。そのこぼれ球をフォワード池田一騎が拾い、既に相手ゴール目指して走り出していた主将、上野拓紀にロングパス。受け取った上野は一目散にゴールネットに向かった。ゴーリーを惑わせるために、一度軽く右にフェイクを入れてゴーリーの左から鮮やかに決勝の一打を叩き込んだ。

▲写真 第3延長にもつれ込む大接戦の決着をつけたクレインズ主将、上野のゴール 提供:日本製紙クレインズ

長い長い勝負にピリオドが打たれた。勢いそのまま、第2戦もクレインズが2−1で勝利決勝進出に王手をかけた。28日からデミョンの本拠地仁川に舞台を移す。

 

■ ファーストラウンド。勝負を分けたダブルマイナーペナルティの攻防

クレインズは、準決勝2戦の前にプレーオフ初戦を地元釧路で王子イーグルスと戦い死闘を制し、勝ち上がっていた。こちちらも連日、超満員の観衆が熱い声援を送り、最終第3戦には今季最高となる約2800人の観客が平日夜の試合にも関わらず、溢れかえり、好敵手との日本ダービーを見守った。連日、好ゲームが展開され、ファンでなくても、何度も息を飲むような攻防が繰り広げられた。初戦を3−1で取り、そのまま逃げ切りたいイーグルス、巻き返したいクレインズ。

シリーズの勝敗を決めた要因は様々あったが、筆者には2つのダブルマイナーペナルティ(従来のペナルティは2分間の当該選手の退場処分になるが、ダブルは反則が重いため、4分間となる)時の、スペシャルプレー(ペナルティにより、反則退場者が出た相手チームより当該人数分多い人数で戦う事が出来る時間帯。5人対4人、5人対3人など)の戦いが、明暗を分けたように感じた。

第2戦、3−3の同点で迎えた第3ピリオド、イーグルスの反則により得た4分間の5人対4人のパワープレーで、クレインズの波状攻撃は圧巻だった。長身のフォワード、副将の重野駿佑、そして、ここぞと言う時は絶対に頼りになる主将上野拓紀が立て続けにゴールネットを揺らした。5−3と勝利、シリーズの決着は最終戦に持ち込まれた。

1日空けての第3戦、序盤は終始イーグルスのペースで畳みかけて来る。どうしても、押し込まれるとペナルティも増え、クレインズはキルプレー(反則により、自軍選手が少ない状況での戦い)を重ねる。その中で、圧倒的に苦しいダブルマイナーのピンチが訪れた。攻め込むイーグルス。カナダ人守護神、ドリュー・マッキンタイアを中心に守るクレインズ。

限りなく長い4分間を守り切った。

試合は3ピリまでに決着がつかず、サドンデスの延長戦に。最後は大津晃介からのゴール前への絶妙なパスをロシア人のヴァチェスラフ・トラクノが叩き込み、1−0で、現時点ではあらゆる意味で後がないクレインズが勝ち進んだ。

試合後に、両チームの選手は抱き合った。特に、同じ早稲田大学の先輩後輩であるクレインズ上野と、イーグルスのエース久慈修平の抱擁に、胸を熱くするファンは少なくなかった。

 

■ アジアリーグチェアマンからアナウンス「前向きな話し合いは続けている」

熱い戦いは、まだまだ続く。が、アジアリーグプレーオフ開始前に一部報道が「日本のチームはアジアリーグを抜け、来季から日本リーグが復活する」と報じる動きも見られ、にわかに慌ただしくなった。

しかし、同リーグの小林澄生チェアマンは報道を受け、「そのような事実は一切ございません。しかしながら今後のリーグのあり方や改革、アイスホッケー界の発展に関しては積極的な議論が継続的に行われています」と、発表している。

また、全国から支援の声も着々と集まっている。先月末、栃木日光アイスバックスは地元日光霧降でレギュラーリーグ最終戦をクレインズと戦った。その際に、会場でクレインズを存続を望む署名活動を行い、実に2,292名の賛同を得る署名を集めた。

▲写真 集まった署名を渡すセルジオ氏と受け取る寺山氏。日光・霧降にて ©ice bucks

署名は、アイスバックスのセルジオ越後シニアディレクターから、「氷都くしろにクレインズ存続を願う会」の寺山博道代表に手渡された。

寺山代表は「時間は少ないですが、思いは実現できると考えています。何としても釧路にチームを残し、クラブを創設できるように頑張ります」と、その場で挨拶した。

アイスバックスはかつて、古河電工の廃部で立ち上がったクラブチームだ。セルジオ氏は「これだけの署名が集まったのは、我々が苦労した時代を知っている皆さんが、クレインズも何とか存続するようにという気持ちを皆さんが一番思っている証明だと感じています」と、応えて両者は大きな拍手を浴びた。

会は3月15日までに10万人分を集める事を目標に、現在も釧路を中心に全国で署名活動を展開している。

 

■ 「アイスホッケーをオリンピックで観た事で始めた」熱き主将、上野

そのアイスバックスとの最終戦に、試合を決める一打を放ったクレインズの主将の上野は、試合後の記者会見でこう語った。

「僕がアイスホッケーを始めたのは、オリンピックの試合を観て、とても感動したからです。そして、今、アイスホッケーを頑張っているジュニアたちにも、同じように自分たちが闘う姿を見せ続けたいと、心から思います」

その雄姿を見続けたいのは、子供たちだけではない−。

トップ写真:釧路でのセミファイナル初戦で勝利して歓喜するクレインズの選手たち 提供:日本製紙クレインズ


この記事を書いた人
神津伸子ジャーナリスト・元産経新聞記者

1983年慶應義塾大学文学部卒業。同年4月シャープ株式会社入社東京広報室勤務。1987年2月産経新聞社入社。多摩支局、社会部、文化部取材記者として活動。警視庁方面担当、遊軍、気象庁記者クラブ、演劇記者会などに所属。1994年にカナダ・トロントに移り住む。フリーランスとして独立。朝日新聞出版「AERA」にて「女子アイスホッケー・スマイルJAPAN」「CAP女子増殖中」「アイスホッケー日本女子ソチ五輪代表床亜矢可選手インタビュー」「SAYONARA国立競技場}」など取材・執筆

神津伸子

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