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.国際  投稿日:2019/5/28

トランプ氏、日本に慰安旅行


大原ケイ(英語版権エージェント)

「アメリカ本音通信」

【まとめ】

・トランプ米大統領は「訪日」という名の息抜き。

・米議会、トランプ氏の露疑惑やマネロン、司法妨害等を調査へ。

・トランプ氏、米中貿易戦争の自国民への不利益には無関心。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=46010でお読み下さい。】

 

週末に行われた欧州議会選挙でヨーロッパ各国の極右派やポピュリスト政党が議席を増やすのか、そしてブレグジットに3年間取り組み、力尽きたテレサ・メイの辞任などで世界の関心がヨーロッパに集まる一方で、ドナルド・トランプ米大統領は「訪日」という名の息抜きをした。

ゴルフ接待に、トロフィー授与に、天皇陛下ご夫妻との晩餐会…これだけチヤホヤされれば、ひとときでも迫り来る弾劾の恐怖を忘れられたであろうか。トランプは出発直前の記者会見で、大統領としての仕事をみごとに放棄するパフォーマンスを披露したのだから。

▲写真 ゴルフをする安倍首相とトランプ大統領 出典:首相官邸Twitter

野党であるデモクラッツ(民主党)が、ロシアとの癒着や司法妨害についての調査をすぐにでも止めないのなら、こっちもインフラ整備などで協力するもんか、と啖呵を切った様子は、とっさにトランプが会合の席を蹴ったかのように見せかけたかったようだが、周到にメモや資料を用意していたことが指摘されている。

現在アメリカの上下議会では4つの委員会がそれぞれ別の視点から、トランプやその側近がロシアとの違法な癒着や、マネーロンダリング、そして司法妨害を犯したかどうか調べようとしている。大統領府が違法行為に手を染めていないかどうかチェックするのは、アメリカ合衆国憲法にも明記されている立法府の義務なのだが、トランプはそれを自分に対する個人攻撃としか受け取れないようだ。

自分の身に及ぶ司法の裁きや、納税歴を晒されることに比べれば、北朝鮮のミサイル実験は「そんなに心配することでもない」と思えるのだろう。なんの根拠もないのに、金正恩がこのまま自分との約束を守って非核化すると信じている。

北朝鮮に限らず、トランプはすべての外交をリーダー同士の個人的な友情と信頼で捉えている。だからこそ仲良く並んだ写真で「ドナルドとシンゾーはBFF(注1)」とアピールするのだろうが、アメリカのマスコミは、このあからさまなゴマスリが果たして実際の効果をあげられるのか、冷ややかな目で傍観している。

▲写真 トランプ大統領と安倍首相 出典:首相官邸Facebook

米中の貿易戦争を対岸の火事として見ていることもできなくなる日が来てもおかしくない。トランプは鉄やアルミニウムの関税だけでなく、このまま貿易赤字が解消されなければ日本の自動車にも関税を課すと発言した。関税を支払うのは購買者としての米国市民で、貿易戦争で打撃を受けるのは自国の農家や酪農家だと側近がくどくど説明しても無駄に終わる。なぜなら、トランプは保身のことしか考えられず、スタッフとの会議でも突然、どうすれば弾劾手続きを阻止できるか、一方的にしゃべり出したり、次の再選演説で誰にどういうニックネームを考えたかをいきなり披露したりするのだという。

ホワイトハウスのスタッフとしては、日本で忙しくチヤホヤされていれば、「大統領時間」と呼ばれるフォックス局のニュース番組を延々と観る時間も減り、余計なツイートをするヒマもないだろうと送り出したわけだが、その間にも国内では身辺調査が着々と進んでおり、ストレスが溜まる毎日が待っている

 

注1)BFF

「Best・Friend・Forever」の略称、「永遠の親友」の意。

トップ写真:大統領杯が朝乃山関に授与された 出典:首相官邸Facebook


この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント

日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。

大原ケイ

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