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.政治  投稿日:2019/11/11

「義務教育後の”進路の複線化”目指す」萩生田光一文科相 下


細川珠生(政治ジャーナリスト)

「細川珠生モーニングトーク」2019年11月9日放送

Japan In-depth 編集部(石田桃子)

【まとめ】

・幼児教育無償化は「実質、義務教育化に近い支援」。

・義務教育終了後の進路複線化を目指す。

・教職課程、「幅広に学んでもらう」ための改革を検討。

 

今回のゲストは、前回に引き続き、萩生田光一・文部科学大臣政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。(上の続き

 

■ 教育「中身」の改革

まず、細川氏は「無償化は子育て支援であり少子化対策。教育の分野ではない」と述べ、「幼児教育から高等教育まで、中身の改革をしなくてはいけない」と指摘した。その上で、義務教育制度の改革について、萩生田氏に聞いた。

萩生田氏は、幼児教育無償化を「実質、義務教育化に近い支援」とし、教育分野における価値を強調。「多感な3歳から5歳。幼稚園であっても保育園であってもちゃんと教育がなされる仕組みを、さらに精度を上げていかなくてはいけない」と述べた。「認定こども園」についても言及。幼稚園・保育園の役割の別にとらわれず、就学前の子どもに教育・保育を一体的に提供する同制度を評価した。

義務教育制度については、「9年間で基礎学力をしっかりつけるという日本の今までの取り組みは間違っていなかったと思う」と述べた。課題は、義務教育終了後の進路の「複線化」だという。

萩生田氏は、複線化実現の鍵を握るものの一つに、高等専門学校を挙げた。「日本のものづくり産業は、高専の60年間の卒業生に依存することが多々ある」と評価。「高校の5年間で、技術のみならず1つのことを学ぶことの良さを、もう一回検証してみたい」と意気込んだ。

 

■ 教員養成

細川氏は、進路複線化の実現には、教員の進路指導が大きな役割を負うことを指摘。「教員の養成がすごく大事」と述べて萩生田氏の考えを聞いた。

萩生田氏は、教員養成が教育現場の改革においても重要な役割を負うことを指摘した。一方、課題もある。教育現場におけるICT環境の整備は急務であるが、教員のICT運用能力にばらつきがある。萩生田氏は、「教職課程で少し幅広に学んでもらうことはすごく大事だ」と述べた。さらに、「4年間の勉強で慌てて現場に出なくても良いのではないか」と指摘。教員を目指す人の、あらかじめの意思表示に応じて、丁寧な育成を行うことを提案した。

細川氏は、「社会を知らない人が、社会で生きていくことを教えることに不満がある」と述べて、教壇に立つ前に社会経験が必要だと訴えた。教職課程のカリキュラムの見直しについて、萩生田氏に具体的な政策方針を聞いた。

萩生田氏は、学生時代の学びと内定後の研修の、両方が重要だとした。後者について、「区役所の窓口で納税者の皆さんと接してみるとか、現場に行ってみて怒られてみるとか」と例示した。加えて、教員免許を取得しながら民間就職をした人に「教育現場に戻って来てもらう仕組みを作ってみたい」と述べた。

▲写真 ©️Japan In-depth編集部

 

■ グローバル人材育成

次に細川氏は、グローバル人材の育成について「ようやく小学校で英語の授業ができるという段階だ」として、遅々として進まないグローバル人材育成の現状を批判した。また、日本人には「議論する力」が不足していると述べた。「テクニックとしての言葉だけではなく、中身がきちんと熟成されていない。これは教育の問題だと思う」とした。

これに対し、萩生田氏はまず、「グローバル人材とは、ただ単に英語ができればいいわけではない」という細川氏に同意した。「社会科、理科、国語、こういったものの中にも英語必須にしていく大きな意味をきちんと貫いて、教材も含めて充実させていきたい」と述べた。

「議論する力」の育成に関しては、「子どもたちが小さい時からトレーニングをしていく必要があると思う」と述べた。そのためには、トレーニングの必要性を教育現場で共有し、教員が実践することが重要だとした。

萩生田氏は、小学生が国会を見学に訪れた時のエピソードを語った。「『質問ありますか』と言うと、誰も手を挙げない」。一人二人とやりとりをしているうちに、次第に発言が増えたという。「これが今の日本人の姿だ。これから国際社会に出ていくと、外国の人たちはどんどん自分たちの主張をしてくるから、そんなことではだめだよと、現場で教えている」と述べた。

細川氏は最後に、「子どもたちは、これからどうにでも、磨けば輝いていく」と述べた。新しい文科大臣に、新しい教育への期待を託して、対談を締めくくった。

(上はこちら。全2回)

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年11月9日放送の要約です)

 

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

ラジオ日本HP http://www.jorf.co.jp/index.php

細川珠生公式HP http://hosokawatamao.com/

細川珠生ブログ http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/

トップ写真:©️Japan In-depth編集部


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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