レインボーブリッジ封鎖できる? 東京都長期ビジョンを読み解く!その87
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
- 新型コロナウイルスで「首都封鎖」か?
- 感染者が爆発的に増える事態が想定される
- 緊急事態になると、都市封鎖が理論的に可能。
小池都知事が「首都封鎖」を口にした。都市政策の専門家としては、都市が機能不全になることを考えると政策のオプションとして発言したことを評価したい。経済的に苦しいお店の方々など反対する方々には申し訳ないが、パンデミックが加速化する事態はちょっとさすがにまずいとは思う。
最近は電車での混雑も若干見られるようになり、「自粛疲れ」が出てきているように思えるところ。先日の三連休に外出したり、花見をしたり、春の暖かさで人々もうずいているのが背景にあると言ってよいだろう。若い人は歌舞伎町にも多くみられる。しかも、流行している海外からの帰国者に感染者が多く、増えていきそうなのだ。
■首都封鎖をすると・・・・
封鎖とは何か?海外の例を見ると
・外出禁止
・ガソリンスタンド・生活必需品を売る店舗以外は休業
・不必要な旅行はNG
・警察が市街を見回り・警戒、違反者は見つかり次第罰せられる
といったところになる。多くの都民に影響はあるだろう。
なぜこういうことになるのか?
小池百合子東京都知事は「この3週間、オーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ目・分かれ道」だと発言。感染者が爆発的に増える事態が想定されるそうだ。それは、国の専門家で作る対策班の試算によると、都内の感染者数が500人以上増える可能性があることがわかったからだという。
写真)検査陽性者の状況
■法的根拠はどこに?
我々は「移動の自由」を憲法で保障されている。自由に移動できなくなるのなら、法的な根拠を示してもらわないといけない。
・感染症法
・新型インフルエンザ等対策措置法
といった法律が根拠になる。新型インフルエンザ等知策措置法の32条・45条が根拠になるそうだ。
第三十二条 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
【出典】e-GOV
緊急事態になると、都市封鎖が理論的に可能になるのである。あくまで「要請」ではあるが。
■さて、過去の日本はどうだった?
そうなると、過去の行政や政治はどうだったのか気になるところだ。前回も提示したインフルエンザの年表を見てみよう。
【出典】筆者作成
江戸時代は、お駒風、津軽風、琉球風などなど色々な呼ばれ方があったわけだし、風疹、コレラも流行った。中には、数万人が亡くなったり、品川沖に流して水葬にしたりと本当に大変だったらしい。
政府、いや幕府は何をしたかというと。無料薬配布のお触れ、出勤停止、関所で旅人改めという「検疫の強化」だそう。つまり、水際作戦!明治になると政府は隔離作戦ということを進めたそうだ。となると、日本国になってからの歴史には「都市封鎖」は厳密にはないのかもしれない。
海外はというと、「閉鎖都市」が有名である。すでに存在している。
そう、ロシアに。その都市は「ZATO(閉鎖行政地域組織)」と呼ばれている。2019年8月8日、ロシアのアルハンゲリスク州におる海軍の海上実験場で原子力ジェットエンジンを搭載した原子力推進巡航ミサイルが爆発したことがあった。ニュースになって少し欧州では騒ぎになった。この後、この遺骸が閉鎖都市に運びこまれたとされている。ロシアには、核開発、宇宙開発、軍事基地の閉鎖都市が数多くあるのだ。
今も。
■みなさんご用心を!
小池発言は、波紋を呼んでいる。行動の制約を受けるのは皆さんいやだろうが、自分が感染者としてリスク高い人にうつしてしまったら?と考えるとそこは、1人の人としてどう考えるかですかね。
小池氏の言動は行政官として、都民の命を守るためには当然のことだと思う。入退出が厳しく制限されている都市になるか瀬戸際であることについてのアナウンス効果もあった。都民の意識も変わっただろう。
ただ、政治家さんには厳しい言い方だが、厳しくした方が、万が一、オーバーシュートがおこったとしも、「あそこまで厳しくやったのに・・・」という言い訳が作れるし、政治的には「まあ仕方なかった」と評価される。ある意味政治的にマイナスにはならない。緩くして自由にしてオーバーシュートしたら後で「なんであの時厳しくしなかったの?」と責任を問われる。だから当然の行為ともいえる。
話を戻して、用心は大切である。皆さんも気を付けて乗り切ろう!
トップ写真)小池都知事による新型コロナウイルス感染症対策方針の会見
出典)東京都
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。