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.政治  投稿日:2020/5/25

「9月入学も選択肢の一つ」参議院議員上野通子氏


細川珠生(政治ジャーナリスト)

「細川珠生モーニングトーク」2020年5月16日放送

Japan In-depth 編集部 (油井彩姫)

 

【まとめ】

・9月入学は、選択肢の一つとして、与党の中で検討が続いている。

・英のほめて伸ばすコミュニケーションの教育を、日本は見習うべき。

・遅れたICT教育や、新しい大学入試制度等、課題は山積している。

 

今週は文部科学副大臣を務める参議院議員の上野通子氏に、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。

 

上野氏は元高校の国語教員であり、イギリスで日本語講師をした経験も持つ。新型コロナウイルス拡大による休校が続く中、教育の面ではどのような対策が必要なのか、政治ジャーナリストの細川珠生氏が聞いていく。

 

まずは9月入学について。一部では今年度からという誤解があるようだが、来年度以降9月から8月までをスクールイヤーとするということになる。かねてから9月入学に賛成だったという細川氏は、現在どの程度まで議論が進んでいるのか問うた。

 

上野氏は、「私も細川さん同様に9月入学には大賛成の立場だ。今回のことは大変良いきっかけになった」と述べた。

 

その上で政府の動きとしては、「総理や文科大臣は国会答弁で、コロナの早期の収束に向けて感染拡大防止の取り組みを徹底することを前提として、子供の学習の保障のための取り組みを充実させると言っている。今後緊急事態宣言が解除され、学校を再開するところも出てくるだろうが、充分に見定めていく必要がある。9月入学を選択肢の一つとして検討を続けていく」と述べた。

 

そして自民党内での動きは、「今週から9月入学検討のワーキングチームが立ち上がり、既に議論は2回行われている。メンバーは9月入学自体には反対はしていない。ただ温度差はある。今回のコロナの対策のひとつとして、学校に行けない期間があったから、来年度から本格導入に踏み込むべきだという意見の方。一方コロナ対策として慌てて舵を切るのは危険で、第二波第三波が秋以降にやって来るかもしれないことを踏まえると今は関係省庁、教育現場の声も聞きながら判断すべきという声もある」と述べた。ワーキングチーム座長の柴山昌彦前文科大臣は、世論が高まってきており、6月初めには自民党として方向性を出す意向だという。

 

次に細川氏は、今の日本の教育で進めていかなくてはならないことは何か、聞いた。これに対し上野氏は、「主要五教科に偏った教育がまだ進んでいるのが問題だ」とした上で「イギリスの教育は全ての教科をきちんと評価しているが、そこを日本は見習わなくてはいけない」と述べ、全教科評価が重要との考えを示した。

 

また、ICT教育が遅れているという課題について、「文科省の大きな課題の一つが、GIGAスクール構想(注1)だ。学校現場でGIGAスクールを進めてICTに慣れさせ、それから遠隔教育を進めるという二段階になっている。今回、全ての予算をかけて前倒しする」と述べ、ICT教育を加速させる考えを示した。

 

次に細川氏は、イギリスと日本の教育の一番大きな違いはどこだか聞いた。 上野氏はイギリスで教育を受けた3人の娘の例を挙げ、「イギリスでは教師が、子供の個性や特性、彼らができることを見つけようとしてくれる。そしてそれを評価し、やる気やモチベーション上げていった」と、イギリスの教育の特徴を紹介した。

©️上野通子事務所

 

その上で上野氏は、自分の子どもが英語ができないまま現地校に入ったことで苦労したこと、それでも教師が、走るのが早いとか、ピアノがうまいとか、褒めてくれたことでモチベーションが上がったエピソードを紹介した。

 

一方で上野氏は、日本ではそのような環境づくりができていないと指摘した。「日本は謙虚さが必要だということで、あまり教師は子供を褒めない。アクティブラーニングの授業を増やしていくことが必要。人前で話をしたり人ときちんとコミュニケーションをとる能力を発揮する場が日本の教育にはない」と述べ、色々な場で自分の言葉で話す能力を身に付ける教育が必要だとの考えを示した。

 

焦点の9月入学については、6月の頭までに政府が論点や課題を整理することになっている。細川氏は、「来年度からとなると、急いで進めていかなくてはならないが、具体的なスケジュールどうなっているのか」と聞いた。

 

上野氏は、「世論も高まってきており、自民党以外の議論も参考にしながら、文科省としてどう対応するか考えていく。今は、遅れているICT教育を充実させることや、新しく変わる大学入試制度をどうしていくかや、アルバイトをしている学生に対しての支援など、具体的に取り組んでいかなければならない問題が山積しており、同時進行でやっていく。ただ、来年度からの9月入学が決まれば、文科省として全力で取り組んでいきたい」と述べた。

 

来年度9月入学となると、新しい大学入試システムで受験する人達にも影響が出る。細川氏は「それを考えても9月入学にした方がいいのではないか」と述べ、今後の動向に大きな期待を寄せた。

 

注1)GIGAスクール構想

Global and Innovation Gateway for Allの頭文字を取ったもの。2019年12月、文部科学省が打ち出した。義務教育を受ける児童生徒のために、1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備する5年間計画。

©️上野通子事務所


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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