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.政治  投稿日:2020/11/12

省庁を可能な限り地方移転!【菅政権に問う】その4


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・安倍政権下、4庁移転見送り。既設の出先機関強化で対応。

・気象庁は組織の一体化が図れなくなることを理由に移転見送り。

・コロナ禍やデジタル時代で前提は変わりつつある。

新型コロナウィルスがまたしてもぶり返してきそうだ。こうした中だからこそ、東京一極集中の解決の必要性も高まっている。

個人的な話だが、石破茂さんが大臣の時に内閣府地方創生人材支援制度一期生としてある町に派遣されて(非常勤職員として)省庁の地方移転に携わった。その時に政府機関の地方移転をある町に引っ張れないか考えた。その時の難しさはやはり

・省庁のマネジメント、仕事のやり方など今までのやり方を変えたくないという前例踏襲志向

・そもそも一極集中のデメリットを軽視している思考

・官僚の方々の生活・暮らし面、なかでも子供の教育面などの不安

・中央から離れることへの不安、情報過疎へのデメリット感

などが壁になっているし、そういう声を多く聞いた。

情報こそ力、権力の源という世界なので、コミュニケーションを通じた人間関係と情報収集が難しくなるという意味で、中央にいないといけないと考えてしまうのだろう。しかし、市役所のように対面サービスではないので、普通に考えて動けるはずではある。

■政策の現状は?

安倍政権下で政府関係機関の地方移転はそれなりに取り組んだ。まとめると以下のようになる。

▲表 【出典】内閣府「中央省庁の地方移転に関する進捗状況」をもとに筆者作成

とはいえ移転検討対象の7省庁のうち、特許庁、中小企業庁、観光庁、気象庁の4庁は、移転を見送り、既設の出先機関の強化で対応することになった。当初この政策に絡んだものとしては、期待をはるかに下回っている。

希望する都道府県と省庁、内閣府を踏まえて丁寧な議論をしていたが、結局、省庁の「移転すると機能維持・向上ができない」という反対理由が押し切った形だ。たしかに、移転して業務が混乱したら誰が責任を取るねん?と言われたら、それに対して説得するのは至難の業だろう。

気象庁の事例を見てみよう、

◇◇◇各府省の見解(気象庁)◇◇◇

 ○大規模な自然災害等が発生した際には、首相官邸への緊急参集のみならず、政府及び国土交通省の非常災害対策本部への参画等、政府全体の危機管理対策の実施に気象庁は重要な役割を担っている。それに 対応するためには、気象庁は、気象庁長官の指揮の下、本庁内の各部が一丸となって組織的に対応している。そのため、気象庁は、一体として政府機能中枢(霞ヶ関地区)域にあることが必要不可欠である。

 ○また、平素の準備段階においても、危機管理に関係する関係省庁・機関と密接な連携を図り、防災対策等の企画・立案への参画や災害対応に係る各種訓練での重要な役割を果たしている。そのため、常に関係省庁・機関の近傍にあることが必要不可欠である。

 ○さらに、大規模な自然災害が発生した場合、国会対応も極めて重要な責務であり、国民の防災意識の高まりに応じ、通年化し、質・量ともに激増している。この点からも、気象業務の円滑な遂行のためには、気象庁本庁は東京圏にあることが必要である。

【出典】「中央省庁の地方移転に関する進捗状況調査」

おっしゃる通りなのかもしれない。確かに、一体としてあることが不可欠だったのかもしれない。円滑な遂行が一体じゃないとできないのかもしれない。

本当か?

シミュレーションしたのか?

データで業務分析をしたうえでの結論なのか?

業務をゼロベースで見直したのか?

これを機にBPR(Bisiness Process Re-engneering)を検討したのか?

密接な連携とは具体的に何か?

関係省庁と密接な連携は電話やメールでしているのでは?オンライン会議で対応できないのか?

現場に近いことなどのメリットは考えてないのか?

厳しい言い方だが、機能維持をできない理由にするのは「できない理由」を並べているだけにしか見えない。

▲写真 デジタル化(イメージ) 出典:Pxfuel

■前提は変わった!

今までのやり方なら、それは仕方ない。しかし、前提はコロナで大きく変わっているし、令和の時代・デジタル化の流れのなかでも変わってきている。東京の都会のど真ん中で、何が見えるのか。

省庁全体でなくても、少しでも部局を移転できないのだろうか?

東京一極集中のリスクは官僚さん方わかっているでしょう?

菅政権は地方移転を進める官庁に対するインセンティブや報奨を強力に打ち出すべきだ。そして、内閣人事局、野党やメディアからいろいろ批判されているが、こういう時こそ、その機能を発揮してほしい。

菅政権に期待したい。

(続く。その

トップ写真:霞が関駅 出典:Wikimedia Commons; Rs1421




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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