東京転出増?一極集中の解決を【菅政権に問う】その6
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・東京都は4カ月連続で転出超過だが、東京圏では転入超過。
・23区は転出超過も市町村が転入超過。都全体の転出超過幅は減。
・コロナですぐに変化は起きず。一極集中解決の必要は変わらず。
東京からの転入超過が止まったのか?
総務省の住民基本台帳人口移動報告では、10月の東京都の転出者数は3万908人と前年同月と比較して10%増加、転入者数は2万8193人と前年同月と比較して7.8%減少となった。そして大事なのは4カ月連続で転出者の方が多い転出超過になり、2715人の転出超過となったことだ。これはコロナの影響による転居関連が大きいのだろうといわれている。
しかし、スコープを広げてみるとどうなのだろう。驚くことに「東京圏」で見ると転出超過ではないのだ。
□東京圏はなんと転入超過!
名古屋圏、大阪圏は転出超過なのにも関わらず、東京圏は違うのだ。
2020年(令和2年)10月は転入者数が2万8141人、転出者数が2万7023人と、1118人の転入超過である。日本人に限っても、転入者数が2万5802人、転出者数が2万4968人と834人の転入超過である。昨年度の同時期と比較すると転入超過数が4分の1になっていることは確かだが、東京圏で見るとまだまだ「転入超過」なのだ。
□内訳は?23区とそれ以外でも顕著な傾向が
内訳を見てみよう。東京都市圏も東京都市圏、政令市があり、それ以外もあるので整理してみた。
転出超過は、東京都特別区部の4525人、川崎市の525人くらいなのだ。千葉市、横浜市などは転入超過である。
中でも注目は東京である。東京都特別区部は転入者数が10.6%減少、転出者数が13.8%増加、他方、東京都の市町村は転入者数が17.0%増加、転出者数が24.5%減少と対照的な動きを見せている。とはいえ注意いただきたいのは、特別区部の転出超過数は4525人であり、東京都の市町村の転入超過数は1810人と比較して多いことである。
何が言えるかというと、特別区部の転出超過は大きかったが、東京の市町村が転入超過であった分、東京都全体での転出超過の幅は減ったということだ。
□コロナですぐには変わらない
コロナで東京から移動が始まったというのは早計だろう。東京都の特別区部の転入者は10%以上の減少、転出者は10%以上の増加であることは事実だが、東京都市圏ではなんら変化はない。そこを見ない限り意味がないのだ。
専門家の藤波匠さん(日本総合研究所調査部上席主任研究員)が「4月以降、東京圏の転入超過が減少しているのは、東京圏への流入が減少したとによるものと言ってよい」と指摘しているように、転入者が減少しているだけにすぎない。
この現象を一時的なものとみるか、変化の兆候とみるか、は何とも言えないが、新型コロナの変化がすぐにでてくるものではないことも確かであろう。東京一極集中問題が解決すべき問題であることには変わりはない。
トップ写真:東京・渋谷 出典:PxHERE
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。