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.政治  投稿日:2020/11/18

省庁の一部を地方活性化に【菅政権に問う】その5


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

まとめ】

・東京は様々な実態を伴う「グローバル都市」、遷都は現実的ではない。

・中央省庁の分野ごとに首都をつくることが望まれる。

・現場に近ければ現場の深い理解の促進にもつながる。

一元的⇔多元的

集中⇔分散

中央集権⇔分権

統合⇔分割

上記が令和の時代のスタートを襲った新型コロナウィルスでようやく変わらざるをえない日本社会の問題意識についての論点である。日本社会はほぼ上記の左側の統治機構とその発想で戦後、いや野口悠紀雄さんに言わせると「(19)40年体制」でやってきた(最近は強力な政治的リーダーシップがもたらす行き過ぎた面も指摘はされているが)。

そのひずみ、弊害が現在ほど表面化した時期はあっただろうか。右肩上がり時代の社会システムの発想がまだまだ延命していて、さらに行き詰まりを見せる今ほど「日本社会のあり方」が問われている時はない。

この連載の第一回でも書いてきた過度な集中状況は常軌を逸している(以下、再掲)。

【出典】筆者作成(第一回より再掲)

前回、中央省庁の地方移転政策の実態について考えたが、今回はもうちょっと踏み込んで考えてみたい。

遷都は現実的ではないのかもしれない

古来、疫病がはやると、遷都をしてきた歴史がある。病気は神仏のたたりとも考えられ、長岡京から平安京に移したときにも理由の1つに疫病があったとも言われている。

しかし、今の時代に「東京から遷都」というのはどうなのだろうか。

江戸幕府の中心だった江戸の街を引き継ぎ発展した東京。すでに「大都会」としての機能をそろえ、外環自動車道などやっと都心としての風格と魅力、様々な実態を伴う「グローバル都市」になってしまった。

そのため、利害関係が錯綜しているし、大きな平野の中心地にある地政学上の多大なメリット、明治維新を支えた勢力による「占領」的意味合いもあり、さすがに東京遷都を言うのは現実的ではないのかもしれない(私は陛下に京都に戻ってもらいたい派であるが)。

新たな選択肢は中央省庁の分散化

地方分権以外の方策を考えるのなら、中央省庁を分散化させること、つまり分野ごとに首都をつくるべきだと考える。霞が関と永田町では、現実や実態を見えない中で管理部門よろしく机上の空論を作文している面もあるのかもしれないし、現場の声を聴くより政治家の意向に配慮してしまう面もあるのかもしれないし、中央の論理や全国一律という基準を振りかざしている面もあるかもしれない。

しかし、さすがに省まるごとをいきなり移すのは難しい。だから一部部局の移転を促進してほしい。

私は以下の案を提案したい。

【部局移転案】

・農林水産省の部局を一部、札幌市に

・スポーツ庁の部局を一部、旭川市に

・文科省の部局を一部、秋田市に

・農林水産省の部局を一部、仙台市に

・環境省の部局を一部、いわき市に

・文科省の部局を一部、つくば市に

・消防庁の部局を一部、宇都宮市に

・資源エネルギー庁の部局を一部、新潟市に

・厚生労働省の部局を一部、福井市に

・林野庁の部局を一部、長野市に

・総務省の部局を一部、裾野市に

・経済産業省の部局を一部、浜松市に

・経済産業省の部局を一部、名古屋市に

・観光庁の部局を一部、高山市に

・気象庁の部局を一部、津市に*

・観光庁の部局を一部、京都市に

・文化庁の部局を一部、京都市に*

・厚生労働省の部局を一部、大阪市に

・総務省の部局を一部、大阪市に

・特許庁の部局を一部、東大阪市に

・スポーツ庁の部局を一部、吹田市に

・外務省の部局を一部、堺市に

・法務省の部局を一部、奈良市に

・環境省の部局を一部、和歌山市に

・厚生労働省の部局を一部、神戸市に

・金融庁の部局を一部、神戸市に

・消費者庁の部局を一部、徳島市に*

・デジタル庁の部局を一部、高松市に

・水産庁の部局を一部、高知市に

・外務省の部局を一部、広島市に

・防衛省の部局を一部、松江市に

・外務省の部局を一部、福岡市に

・金融庁の部局を一部、福岡市に

・防衛省の部局を一部、那覇市に

・海上保安庁の部局を一部、石垣市に

というのもいいかもしれない。具体的にどの部局をまでは言わないが、地域の特性や政策が目指すものからして、これくらいは分散できないのだろうか。

ただし、これはあくまで案であり、皆さん反発する人も多いだろうがそこはご容赦してほしい。

写真)永田町駅

出典)Wikimedia Commons; Nesnad

□政府関係機関の地方移転で地方の活性化を

東京中心目線で考える、これまでの日本の長い歴史的経緯を踏襲しない、グローバル論理でローカルの論理を排除して進める・・・・・的なことが少しは是正できる可能性を持っている。現場に近いことがどれだけ現場の深い理解の促進にもつながる

政治や官僚や情報こそ力、権力の源という世界なので、コミュニケーションを通じた人間関係と情報収集が難しくなるという意味で、中央にいないといけないと考えてしまうのだろうが、現在はメールやちょっとした会話もチャットで代弁できる。

福岡市、千葉市、神戸市やシビックテック、DXなどなど元気な地方自治体の様々な挑戦が目立っている。その取り組みとのコラボレーションで新たなモデル推進にもつながるかもしれない。前提はコロナで変わっているし、令和の時代・デジタル化の流れのなかで変わってきている。10年後の当たり前の未来を見据えた政策推進を勇気を持って進めてほしい。例えば、スモールスタートでいいので一部の部局移転に挑戦するインセンティブ・メリットを各省庁に与えてみてはどうか。

菅政権に期待したい。

(その,

トップ写真:東京 出典:Pixabay; Pierre Blaché




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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