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.政治  投稿日:2021/7/4

都議選公約分析「れいわ新選組」困っている人の味方、ここにあり


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・都営住宅の活用など、都民目線の公約。

・10万円一律給付など、ばらまき色が強い。

・東京防災庁の設置推進」など、現実的に疑問が残る記述も。

 

都議選恒例公約分析。今回は、れいわ新選組。「れいわの政策2021」という公約を明らかにしている。「弱い立場の人々の分断を避ける「みんなの居場所」をつくります」などその問題意識が明確で、文章のいたるところに理念にもとづいた熱き思いや情熱が感じられて素晴らしい。「アピールする」「よく見せる」「かっこつける」公約は多いが、都民と同じ目線で「語っている」のはれいわくらいである。

「住まいは権利」を東京都から実行します」という心意気

特に、困っている人たちへの生活の権利を重視しているところはさすがの内容である。

「住まいは権利」安価な家賃で利用できる住宅を。

収入不安定な方やDV被害者へのシェルターとして都営住宅の空き部屋2.8万戸(東京都調べ)を活用。

また、東京都の活用可能(腐朽・破損なし)な空き家数、約69万戸(H30年)。そのうち、共用住宅空き部屋41万室(非木造)の中から、都が必要な分を借り上げ、安価な家賃で必要な方に提供できる体制を整えます。

【出典】れいわの政策 2021

住むところがない人が多数いる一方、都営住宅は空き家が結構ある。こうした社会の矛盾に目を付けている。

また、DV被害者にも目を向ける。「DV被害に遭った女性のうち、8割が精神的暴力被害の経験があるということです。法律がDV被害の実態に合っていません」との実態を明らかにしている。

DV防止法ではDV対策は不十分。都独自のDV対策を

現在DV防止法で、被害者が保護される要件は、「身体的暴力によって生命・身体の危険に及ぶ場合」とされています。

しかし、ある民間支援団体の調査では、DV被害に遭った女性のうち、8割が精神的暴力被害の経験があるということです。法律がDV被害の実態に合っていません。

そこで、都独自で「身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力」にも対応できるように以下の施策を実施します。

1)東京都独自のDV対策として、精神的暴力等も含んだ相談及び支援体制を整えます。

2)相談員の専門性を高め、待遇改善を行います

3)民間支援団体との連携をさらに充実させます(民間の配偶者暴力相談支援センターの開設など相談場所を増やします)

4)DV被害者保護や相談についての、苦情処理システムを構築します。

【出典】れいわの政策 2021

政権や与党が進める政策についての問題点、不十分な点を鋭く指摘し、そのために必要な現実的な提案をしている。このように困っている都民の立場にたって、現場で起きていること、そしてそのために必要なことを提言しているところはさすがである。

■3つの特徴

これらをまとめると、3つの特徴にまとめられる。

 ①徹底的に弱者目線

 ②主張を論理的に、その見識を披露

 ③真実を暴露

たとえば、以下の介護福祉の事例を見てみよう。

▲画像 【出典】れいわの政策 2021

「全産業平均より低い」事実を踏まえ、できることは「引き上げに向けて動く」ことだと。こうした政策に、①②の特徴が明らかになっている。

そして、その真実の暴露である。都知事がアピールする「殺処分ゼロ」について「これは殺す処分ゼロとは言いません」と主張してる。その理由として「治癒の見込みない病気や攻撃性がある等」の理由で殺処分したもの犬・猫146匹(平成30年度)、138匹(令和元年度)は含まれていません」ということを明らかにする。弱者重視の理念がここまで徹底されていると感嘆してしまう。③真実を暴露するれいわの強みでもある。

しかし、課題は、第一に、ばらまき色が強いこと。給付するより、弱者に減税したり、免税したりすればいいので、一律はどうなのか?という疑念が残る。また様々な方策を考えて、補助金が最も最適な方策なのだろうかと思ってしまう。

都民に対して一律10万円を給付する場合、必要な金額は、約1兆3750億円。
この費用負担は東京都には無理?いいえ、東京都だからできるのです(中略)

私達は国に対して、大胆な国債発行により、東京だけではなく、すべての都道府県に対し、コロナ対策に柔軟に使える「地方創生臨時交付金」の大幅増額を求めてまいります。

【出典】れいわの政策 2021

第二に、東京一極集中問題への言及である。コロナ禍が多くの国民も東京一極集中への問題意識を深めるようになった。今回、過度の集中による弊害を持つ東京の存在意義が問われているのにもかかわらず、それに対して出てこない点が問題であろう。別に物価が高い東京に人々はいなくてもいいわけで、「東京と地方の共存共栄」のモデルが出せるのではないかと思う。

政策評価の専門家としては

さて、政策評価の専門家として5つの視点から評価を下そう。

 ①コンセプト:〇 ⇒【理由】理念は明確、整合性のとれた政策

 ②都民視点:〇 ⇒【理由】誰でもいつか弱者になる可能性があるという意味で

 ③問題解決:△ ⇒【理由】提案はしているが局所的

 ④未来志向:× ⇒【理由】防災面でITの活用が語られているが、社会全般への活用が見据えられてはいない

 ⑤政策としての基本要件:△ ⇒【理由】政策としての問題点を指摘しているが、マネジメントの観点からは疑問

新型コロナを「災害指定」、「首都圏直下地震・大水害から都民を守る 東京防災庁の設置推進」といった、現実的には疑問が残る記述も散見される。

しかし、困っている人の立場によりそい、かつ、法的な矛盾をつき、実践的な提案をしていることも確かではある。れいわ新選組の公約提案に期待したい。

トップ写真:山本太郎 出典:Takashi Aoyama/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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