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.政治  投稿日:2023/1/5

統一地方選で都政への評価下る【2023年を占う!】東京都政


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・東京一極集中が加速し、東京独り勝ちのいびつな構造はますます温存される。

・都政ではDXの取組みなど「やっている感」はあるが、小池都知事の公約「7つのゼロ」の実績は明らかではない。

・春の統一地方選挙で、都政に対し都民の評価が下されることになるだろう。

 

世界の都市総合力ランキング(GPCI)」2022年版が発表された。東京は相変わらずの3位、世界レベルでも、それなりの競争力を示した。コロナがあっても盤石の体制である。東京一極集中は歯止めがかからないことが予想される。そして東京都政では目覚ましい「改革」はないものの、DXの取組みが着実に進む。しかし、統一地方選もあり政治は混とんという予想である

■一極集中再び?

東京都の都市ランキングを見ると、東京は、文化・交流分野では、観光資源と外国人受入実績でスコアが下がったものの、世界3位。分野別にみるとトップ1を張る分野はないものの万遍なく上位に来ているのが特徴である。

▲表 【出典】世界の都市総合ランキング

世界レベルでの競争力、その都市の魅力など東京はやはり圧倒的である。

コロナの影響により東京都の転入超過数は減少した。2019年の転入超過数は82982人だったのが、2020年は31125人となり、2021年になると5433人と減少。しかし、転出数と転出数を比較して、転入数が超過している状況は変わらない。より視野を広げ、「東京圏」とマクロな視点で考えてみても81699人の転入超過であり、圧倒的に東京に人が集まってくる傾向は明らかである。

▲表 【出典】住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果

東京一極集中は構造的なもので変わらない、どころかより進む可能性すらあるのだ。なぜなら、大規模な都市開発のラッシュと言っていいほどの状況があるからである。

■ますます進む都市再開発

東京の成長ぶりは凄い。「都市再生」のもとに、立て続けに新規再開発の話が進行、着手計画が明らかになっている。

・東京駅周辺・八重洲:地上51階、高さ約250mの高層ビルなど

・虎ノ門・麻布台:麻布台ヒルズなど(筆者参考記事

・渋谷:道玄坂通 dogenzaka-dori、山手線の南西のあたりの渋谷駅桜丘口地区市街地再開発事業など

・品川:品川開発プロジェクト、高輪前プリンス側の再開発など

といったところは東京の都心の中心なので目立つが、それ以外にも京王線沿線複線化、葛飾区立石付近など開かずの踏切問題などがある。交通面でいうと、様々な新規開発の話がでている。4月に国土交通省が事業許可を出したのが、

・有楽町線の延伸:豊洲駅から半蔵門線住吉駅間、4.8km。

・南北線の延伸:白金高輪駅から品川駅間、2.5km

である。

こうした動きに加えて、さらに

・羽田空港アクセス線:田町駅付近から東京貨物ターミナル駅までの「大汐線」の既存ルートを活用し、トンネルで旅客ターミナルへ、12.4km

仮称「都心部・臨海地域地下鉄」:JR東京駅付近から江東区の東京ビッグサイト付近までのおよそ6キロ

といったプロジェクトが推進・検討されようとしている。地方で路線廃止が騒がれているJRの地方赤字路線の再編とは全く別の世界の出来事のようである。都市が再開発され、交通も充実化されるので、一極集中はますます加速化するだろう。企業のテレワークも思った以上に進まない。日本経済がオワコン化する中、東京都だけが栄えるという東京独り勝ちのいびつな構造はますます温存されることになりそうだ。

▲写真 東京の空撮(2021年6月26日)出典:Photo by Carl Court/Getty Images

■都政の素晴らしい「シン・トセイ」とその課題

さて、東京都庁ではこれまで遅れていたDX化が物凄いスピードで進んでいる。宮坂副知事を中心に「シン・トセイ」という旗を掲げ、デジタル化を中心に、GOVテックを進めようとしている

▲図 【出典】シン・トセイHP

コピー用紙調達量は約3542万枚だったのが73.9%削減、起案文書の電子決定率は99.5%など着実に成果を創出している。今後も着実に成果を出していくだろう。

▲図 【出典】シン・トセイHP

しかし、課題もある。第一は、「構造改革」と自称しているが、そう評価はできないこと。そして、公務員数や行政コストの削減、減税、住民満足度向上といった成果につなげられない、「局部的」なものであるからだ。

構造改革というより、デジタル業務改善のレベルである。第二に、施策や事務事業評価など「成果」の視点で見ていない。そもそも現状分析がされていない。デジタル化による効率化で業務時間削減などは行われるが、都政の成果を定義し、それに対してどれくらい数値が出たのか、DX的な視点ではなく、各予算事業のレベルで見る必要がある。施策・事務事業レベルで「成果」を出す、それが「構造改革」である。

つまり、簡単に言えば、都知事公約「7つのゼロ」と行政改革を実現することが「構造改革」なのだ。厳しいことを言ったが、シン・トセイに関わる方々にはぜひとも頑張ってもらいたいと思っている。期待したい。

■統一地方選挙の影響を受け「やっている感」で十分なの?

最近、統一地方選挙である選挙で動きがあった。品川区長、杉並区長など区長選挙で無党派層の女性首長が誕生した。静かなる支持層の変化なのか、無党派層が強固な自民系を破りつつある動きがみられるようになってきた。女性の視点で、これまでの「男性中心」の仕事のやり方や組織や地域の在り方に問題提起をする動きは広まっていくだろう。特に、インターナショナルでグローバルな価値観が浸透しているのは東京の特徴である。その意味で小池都政は盤石ではあるだろう。

▲写真 【出典】東京都環境局HP

「HTT。減らす・創る・蓄める」新築住宅への太陽光パネルの設置を義務化する条例など、時代を先取りしたテーマを掲げているところは小池都政の強みである。しかし、小池都知事の公約の「7つのゼロ」に対しての実績は明らかではない都民ファーストはしっかり公約検証はしている)。

そして現在、ネットで大騒ぎになっているのが一般社団法人Colaboの会計処理問題である。ついに住民監査請求を認められ、情報公開や委託事業の在り方も問われることになるだろう。

統一地方選挙で、「やっている感」を見せている都政であったのか、「構造改革」で実績を積み上げた都政であったのか、都民の評価が下されることになるだろう。

トップ写真:明治神宮外苑で開催された東京ライト2022でスピーチを行う小池百合子都知事(2022年11月13日、東京渋谷区)出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images for TOKYO LIGHTS




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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