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.政治  投稿日:2023/4/15

世田谷区長選 現職候補に挑む自民と維新が推す最年少候補


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・東京都世田谷区長選、3期12年の保坂展人氏と23区史上最年少29歳の内藤ゆうや氏との一騎打ち。

・内藤候補は自民擁立、東京維新の会が推薦、と異例の共闘でも注目

・最大の争点は「世田谷区役所の建て替え」の区民負担問題。

 

統一地方選の後半戦に突入する。人口約92万人を擁する東京都世田谷区区長選が注目されている。そのわけは、3期12年の保坂展人氏(67歳)と23区史上最年少29歳の内藤ゆうや氏との一騎打ちとなったからだ。内藤候補は自民党が擁立、東京維新の会が推薦した。両党がタッグを組んだ事からも注目されている。今まで保坂氏に他の候補は歯が立たなかったわけだが、4選を目指す保坂氏に若き挑戦者は太刀打ちできるのか。

さて、争点は色々あるが、一番目を引くのは「世田谷区役所の建て替え」問題だ。

たしかに世田谷区役所は古い。1960(昭和35)年竣工で、 第一庁舎は、ル・コルビュジエの元で学んだ建築家・前川國男の設計だという。

その区役所の建て替えにかかる400億円をゼロにすると内藤ゆうや氏は主張している。内藤ゆうや候補と保坂展人候補に取材した。

まずは内藤候補に聞いた。

安倍:保坂区政3期の評価は?

内藤:良かった点がなかったと言うつもりはないんです。例えば福祉は一生懸命されているのが事実だと思っているので、評価しなければならないと思っています。また、コロナ禍でもちろん世田谷モデルの失敗もあるんですけども、その中でも一応区長を努め上げたという事実自体は、頑張ってくださったなと思っています。

その上で思うところは、前の熊本区政で一生懸命されていたことの残りをそのまま続けられていて、何か新たな一歩を踏み出したのか、世田谷が全国においてモデルになるようなことがあったのだろうか、というと、私は結構疑問だと思います。

熊本区長時代は、中学生までの医療費の無料化をしましたが、あれは世田谷からスタートして、全国のスタンダードになったと思います。

子育て、医療機関まで含めて世田谷が何か独自で全国にリードするようなことがあったかと言われると意外とないな、と。そういう意味では世田谷区の地位が低下してきてしまったなと考えているわけです。

実際データを見ると、例えば犯罪発生数、熊本哲之区長時代は、そこまで多いというイメージは正直なかったと思うんですが、今歌舞伎町である新宿についで、第2の犯罪数にまでなっていて、他の自治体がどんどん防犯対策を進めて犯罪が減る中で、世田谷は依然として高止まりしているのが現状です。

かつては西の神戸、東の世田谷と言われたような憧れの住宅街だったわけですが、憧れが今まだあるんだろうかというと、この12年間かなり懐疑的になってきたと正直思っています。

これはデータに現れているのですが、全国の若い方々に、あなたの住みたい町はどこですかと調査をした民間企業がありまして、12年前保坂さんが就任した頃は、トップテンのうち3つが世田谷でしたが、直近2022年は全く入らないという状況だと聞いて、若い人が住みたいというか、次の世代が住みたいという世田谷が作れていない、というのが一つ大きな課題だと思っています。

安倍:世田ヶ谷というと高齢化のイメージですよね。

内藤:そうですね。私も30年世田谷に住んでいますが、だんだん勢いがなくなってきているなと。例えば港区・江東区、渋谷区などはまだ勢いがあると思うのですが、私としては歯がゆい思いを持っています。

 

■コロナ対策

安倍:コロナの時、世田谷モデルという話がありました。

内藤:5億円ほど投入して陽性者が27人しか見つからなかった。抗原検査キットを街中にばらまいたという話もありまして、厚労省の指針では、発熱だとか症状が出てから2日目以降に使ってくださいとなっているのです。多くの区民の方は、違和感を覚えれば使ってしまうのが正直なところだと思うんです。そうすると初日に使ってしまうので、要は偽陰性になってしまうことがある。そうすると陰性だと思って街中に出て行ってしまうという状況が起きてしまうので、むしろ感染拡大につながるんじゃないかと。そういう意味では、世田谷区の保坂行政は基本的にデータや証拠に基づかない区政が12年間行われてきたのではないかというのが私の一つの発想です。

安倍:データアナリストとしての分析ですか。

内藤:その観点からはちゃんとデータに基づいてほしいなと。2020年のコロナ禍の初期は、データが取れなかったと思うんです。この時は右往左往しながらその時その時にやれることをやらなきゃいけないというのも事実だったので、私は比較的コロナの5億円かけて陽性者27人というのはそこまで批判はしていないんです。なぜかというと、当時はまだデータが足りなかった。そこを明確に批判するつもりはないんですが、抗原検査のバラ抜きに関しては違うだろうと思います。

 

■庁舎400億円区民負担ゼロ

安倍:「庁舎立て替え区民負担400億円をゼロ」。これがやっぱり争点だと思いますが、区民にどう理解してもらいますか?

内藤:選挙期間中、ビラを全新聞に挟ませていただこうと思っています。街中で演説の時配る1万6000枚のビラなどを通じて、まずは新聞を読む方々にしっかりとお届けします。ただ、世田谷区内で新聞は16万部しか読まれていないので、それだけでは届かないということで、電話作戦はやります

年齢の若い方々とは、情勢調査によると、私に対して比較的好感度を持っていらっしゃると聞きます。一方で50代、60代を超えてくると現職に親和性があるという状況なので、今回の選挙戦の鍵は50代、60代の方々にいかに知っていただくかだと正直思っています。あえて古典的なことをさせていただいております。一方で若い方々には、毎日YouTubeを配信したり、Twitterを更新したり、ブログを書いたり、地道ですが、20代、30代に対しては届いていると聞いています。

正直、何か抜本的な策があるというわけではないのですが、他の候補よりもネット戦を重視しているところです。ショート動画はTikTok用に撮っているので、それを各媒体に展開していきます。

安倍:若い人は選挙に行かないですからね。

内藤:世田谷区は他の自治体と比べて投票率はまだ高い方で43%くらいなんですけども、若い人は30%位だと思います。私にとっては投票率が上がった方が有利だと考えています。

写真)内藤ゆうや氏

ⒸJapan In-depth編集部

 

 庁舎建て替え問題

安倍:「庁舎立て替え区民負担400億円をゼロ」。これがやっぱり争点だと思いますが、区民にどう理解してもらいますか?

内藤:今まさにこれから公開予定しているんですが、3分程度でこの400億円問題が分かる記事と私の解説動画をまず公開していこうと思っています。投票する方はもちろん、選挙公報を新聞を見る方もいらっしゃると思うんですが、最近の傾向として、インターネットで「世田谷区長選」と検索をされる方が多いと聞いています。ここに分かりやすく文言を載せたり動画を載せたりということを今気をつけているところです。

安倍:保坂さんから、工事を止めたら混乱するとの反論もあります。

内藤:高いものを作ったら(地元が)怒る、という問題ですが、地元の町会の方々とプランを公表する前にちゃんとコミュニケーションを取らせていただいておりまして、地元町会はそもそも今の保坂区長のプランはもともと賛成しないものだと聞いています。

具体的には、しっかりと広場を確保してほしい、その土地を確保した上で、建物は集約化して高さを出しても構わない、ということを町会として区議会そして区政の方には打診をしていたということです。

基本は5階建てとなってしまったわけですが、地元としては高いものでいいから広場を作ってほしいという話なので、そういう方向性になるような変更は地元の了解を得られるということです。

安倍:2期、3期分を一つに集約すればきちんとしたスペースが出るということですね。

内藤:保坂区長の原案といいますか、区民会館と第1期棟は保坂さんの時代に建ってしまう。この9月に完成します。

2期棟以降をどうにかしましょう、というのが私の発想なんですけども、結局今の課題は道を挟んで建物が分かれてしまっていることなんです。世田谷区役所は建物が分かれていて、どこに何の手続きがあるかが皆さん分からない。第1に行ったんだけれどもこの続きは第3なのかと、雨に打たれて外で行くしかないという不便な状況でした。

それで私のプランというのは保坂さんが建てる部分の南と北に集約化して、一つの建物群に住民サービス関係のものは納めるというものです。建ってしまうところには、住民サービスのあまりないものを集約するというプランです。

安倍:そうすると、広い緑地が生まれる、と。

内藤:これがまさに地元が望んでいたことです。大事なのは地域の皆さんそして区民にとって何が一番いいかということです。一つの建物群で収まっていれば迷うこともないですからこのほうがいいだろうと。それと区民会館は実は外観を残すためにコンクリートが2、30年で後はもう持たないと、そうすると建て替えをしなければいけないんですよ。(私のプランだと)区民会館を建て直すときに(集約化で空いた)場所に作ることもできますので、区民会館がなくて区民が困るということが起きずに建て替えも将来できるということで、将来に禍根を残さないプランだと思っています。

安倍:渋谷、豊島方式の採用と言ってますが、ハードルはないんですか?

内藤:私の説明が不十分だったと思っているんですが、渋谷、豊島方式の採用というのは民間企業の活力を使いますよ、という意味でしかなくて、マンションを作るとかという趣旨ではないんです。要は400億円どうやって持ってくるのかという気持ちになると思うのですが、一つ目施設による収益削減効果という話なんですが、太子堂のあたりで、(区の関連施設の)賃料として年間3億円、民間に払ってます。(そういう施設は)ここになくてもよいものは区役所に持ってくれば十分です。集約化させていただく施設というのはだいたい50年は使えますから、3億円x50年で150億円ということを言わせていただいています。

2つ目が1400億円の積立て基金なんですが、バブル時代と違って今金利がほとんどつかないという状況下において、この1400億円をほとんど塩漬けしていて、利息収入が2億円しかないのです。財政調整の観点で将来の赤字に備えているということですが、今どんどん積み上がってしまっているのは、保坂さんが小学校、中学校の建て替えをしていないからです。本来建て替えに使われるはずのお金が積み上がっています。

実際問題この基金が今年100億円ちょっと積み上がったのも事実でして、こういう基金の積み方は望ましくないと思います。大事なことは、この基金を運用することです。神戸市は基金の75%を債券で運用しています。例えば40年物国債でも2%近い状況になってきていますので、2%は十分リスクのない形で運用できる状況まで来ています。法律上基金は株式での運用を禁止されていない状況ですが、私自身は株式で運用するところまでは想定していません。例えばリスクの極めて低いAAAの社債などが一つなのかなと。1,400億円の2%で年28億円。仮に低く見積もって25億円の10年ということで250億円です。

3番目のネーミングライツというのは、例えば渋谷区は、渋谷公会堂でかなり利益を上げているのですが、今回建てる世田谷区民会館を含めて企業さんのお名前を入れさせていただくので、建物は全部50年でやってますので、1億円×50年で50億円ということです。ですから渋谷や豊島区のように土地を貸すということをしなくても、450億円までいくというのが今出ている状況です。(編集部注:150億円+250億円+50億円=450億円)保坂区長に高いマンションを建てるんだと言われてしまっているんですが、私のプランとしてはそもそもそれは存在しないということになります。

安倍:それから教育、子育て、いろいろお金かかると思うんですけど、その財源はどうしますか?

内藤:例えば制服の無償化を掲げています。これは全国初の取り組みです。実は給食と違って、制服無償化はそこまでお金がかからなりません。今世田谷の子どもは1学年6,000人か7,000人しかいないんです。制服は一着5万円から10万円する。5万円であれば6,000人で3億円、10万円であれば6,000人で6億円なんです。これしか1年間でかからないというのが制服の無償化でして、施策の割にお金がかからないけれども子育ち世代はすごい嬉しいという政策です。

安倍:ご家庭の負担としては大変だって聞きますよね。

内藤:財政規模どうなのという話なんですが、5から6億円というのはいわゆる不要額といって、予算を作ったけれども、実際執行しなかった未執行分というのが毎年何十億円も出てしまっている。そこは十分問題ないかなと。区債を発行することでの財源など特に考えていません。

安倍:シニア対策ということなんですが、5年前か母親を看取りましたけれども結構大変でした。

内藤:私も祖父が今90才で認知機能の低下に入り始めて一人で生活ができるかということで、祖母が祖父を介護しているいわゆる老々介護で非常に大変な状況なんですが、世田谷の問題は単的に特別養護老人ホームに入れない方が非常に多いというところが一つあると思います。特養を運営している方々から何人からも聞いているので、これは間違いないと思います。

待ち人数が1000人近いという状況において、建物はあるけれども、6割、7割でしか運用できていない。やっぱり人が足りないのです。介護で働いてくださる人たちが足りるようになるのかという話です。結局のところ、報酬体系の問題になります。

要は物価の問題だと思うんです。東京の場合は、家賃が非常に高かったりするので、それなりに賃金を高めさせていただかないと、そもそも暮らしていけないというのが実情としてあると思うんです。今、保育に携わっている方に対しては、世田谷区はおよそ7万円家賃補助しているんですね。介護に対してもこれと同じようなことをちゃんとしていかないといけないんじゃないかと思うんですよ。

世田谷は、ワンルームマンションを借りるにも10万円近いというのが今の状況なので、介護人材の平均給与の20万円台ということを考えるとその半分が家賃に消えてしまっている状況なので、民間の建物に家賃補助を立てるのか、それとも公営住宅という形で優先的に住んでいただくのかというのは検討しなければいけないことだと思います。日常生活にお金があまりかからないように、つまり実質賃金が上がるような形を通じて特養に入っていただくようにしたいと思っています。

■シニア層への政策アピール

安倍:最近、高齢者フレンドリーじゃないなという感じがしています。自転車も増えて歩道をすごいスピードで走るし、いつ引っ掛けられるか分からない。怖くて子供も高齢者も安心して歩けない状況になっている。高齢者の方々にどう政策をアピールしていきますか?

内藤:現実問題、ご高齢の方々にインターネットやってない方も結構まだ多いので、電話だとか、新聞ということになってしまうのが正直なところだと思います。あと残り1週間しかないので、高齢の方々の施設に伺ってというのもどうしてもできないのが事実です。

もっとも一方で、この2ヶ月間の中で様々なご高齢者の方々の町会の活動とかには顔を出させていただいていて、全区的に活動させていただいているんですけども、残るところはやはりいかに報道機関に取り上げていただけるか、ということに正直になってしまうなと思ってます。

92万人都市となってくると、例えば28歳で市長になられた大阪の四條畷市の東修平さん、外務省の方なんですけど、この方の市は確か5万人ぐらいしかいないと思うけど、回り切ることができるんです。世田谷はもう政令都市なみの人口がいますので、どうしても空中戦の世界だなというのは感じています。

安倍:電子地域通貨の「せたがやPay」ですが、デジタルがわかっている若い人たちだけが得している。知らない人もいっぱいいるわけです。区のDXもめちゃくちゃ遅れていると思いますが、どう推進していきますか?

内藤:全ての方にご対応いただくのは非常に難しいと私は思っています。住民サービスのデジタル化の観点で言いますと、まず世田谷区役所は特に3月、4月というのは転出入の方を2時間、3時間平気で待たせる窓口になってしまっているんです。これは世田谷区以外でも問題になっているんですけども、転出入というものは、デジタルでできる人はデジタルで完結して在宅で済むようになれば窓口が空くわけです。そうすると、高齢の方々が今まで通り接続されてもかなりスムーズに終わるという話です。まずは住み分けが一つ大事かなと思います。できる方はやっていただく、できない方はもちろんサポートが必要ですが、まずは現行と並存する期間が一定期間は続くだろうと思っています。

世田谷区内のまち作りセンターの28箇所においてデジタル化の応援ということで、在宅でできるシステムの使い方を教えて差し上げて、だんだん慣れていただくのが大事だと思っています。「せたがやPay」も今、ダウンロード数30万まで来てますし、おそらくご高齢の方々もかなり使い始めているというのも事実だと思います。

「せたがやPay」は、確かに最初のころは、若い方々が3どんどん使っていって、ご高齢の方は取り残されている状況だったと思いますが、半年、1年経つと少しずつ広がってくるものだと思うので、急がずにできる方からどんどんやっていただく。

それから、私のゴールは行政手続きはスマホで3分で完結するというものです。在宅でできる方はマイナンバーの番号があればいいと私は思っています。免許証の番号でもいいですし、マイナンバーカードでも構わないと思うんです。

 

■交通安全

安倍:あとは交通安全対策も遅れていると思います。

内藤:自転車に限らず道路が狭いというのは非常に問題だと思っており、結局狭い道路に車が入り込んできてしまうので、結果として歩行者、自転車、車が共存してしまうということだと思います。区民アンケートを取ると、およそ3割の方が道路が狭くて困っていると保坂されます。

解決するためには、生活道路に車がなるべく入ってこないようにすることが非常に大事なわけですが、例えば経堂の駅のあたりに恵泉道路という道路がございますけどもこの道路が50年開通していない。南北にいく道路なんですけども一つのお家が立ちのきをしないので開通していない。最高裁で世田谷区が勝っているのに立ちのきを実行しない状況で、この京線道路の周りの方々というのは南北が止まってしまっているので、生活道路に車が迂回してしまい、非常に危ないと聞いていますから、確かに不要なコンクリートを作る必要は全くないですが、皆さんが現に困っているのであれば、それを作るのは区の役割だと私は思っているので、ちゃんと進めていかないといけないと思います。

国道の大きな道路の問題なんですけども、特に国道246(青山通り)に限って言うと、自転車の問題もあるんですけども、渋滞がかなり多いというのが実は問題だと思っていて、例えば桜新町側から上馬の交差点に差し掛かるところが一つの渋滞ポイントなんですが、環七(環状7号線)で、新宿の方に向かうレーンと右側の大森の方に向かうレーンと、そして真ん中1レーンという風に3レーンしかないので、右に行く車と左に行く車で塞がれてしまって、真ん中に行くレーンが1つしかないのが課題だと思っています。それが故に自転車もバスも詰まってしまって大変だという状況で、しかし4車線あれば済む話なんです。ただ246に今から4車線できないじゃないかと多くの方は思われると思うんですが、実際4車線できる話です。何が原因かというと、首都高の橋脚が真ん中にあることが4車線化を阻んでいるんですね。

246に関しては、上馬の真ん中の橋脚というのをコの字にすると、真ん中に(橋脚が)立たないので、右折線用レーンができて4車線化できるんです。そうするだけで、随分道路はスムーズになります。

上馬に限らず駒沢の交差点でも同じことが起きているので、この2つさえ解決すれば実は道路問題というか、そこまでそんなにバス、車、自転車ということが問題を起こさないで済むようになるかなと思っています。ただ、国道なので、国と連携しながら、と思っています。

 

■ふるさと納税問題

安倍:ふるさと納税で税の流出が止まりません。どう対策をとりますか?

内藤:もちろんふるさと納税するしないに関わらず、住民サービスは最低限ちゃんと行わないといけません。プラスアルファで行う部分に関しては、ふるさと納税をしていない方限定のクーポンを配布しようというのが一つの方法かなと考えています。

ふるさと納税の具体的な解決策があるんですけれども、選挙前に全部出せるかというと、まだ検討中というところもございまして、簡単にご説明すると今ふるさと納税というのは3割の返礼品に加えて、例えば楽天さんだとか、ふるさと納税のプラットフォームからの10%から20%、さらにポイントもついて合計5割に返ってくるような状況になっています。この1割、2割のポイント部分は世田谷区に払ってもらいます。上限の値は条例で決められるのです。そうすると、区の皆さんは確かに今までのように50%はもらえないかもしれないけども返礼品は30%もらえます。そして区は20%ぐらい戻ってくるということで、多少財源の余裕が出てくるのかなと思います。

そういう意味では、これは条例の性質としては∗法定外自主税になると思うんですけども、住民の皆さんに対する自主税ではなくプラットフォームに対する自主税ということになります。

(インタビューは2023年4月12日実施)

一方の保坂展人候補は文書で以下を回答した。

写真)保坂展人氏

出典)@hosakanobuto

1 今回、自民、維新の会が擁立、公明が支援する内藤候補が出馬したことについての見解は?


保坂:被選挙権の行使について、特にコメントはありません。公明は「自主投票」と聞いています。

 2  内藤候補は庁舎建て替え「区民負担ゼロ」を謳っているが、これに対しての見解は?
 

保坂:そもそも、内藤候補の庁舎建て替え案自体がコロコロと骨格部分で内容の変化があり、全体像が見えないので、記者会見を見た印象を述べます。

 4 月11日に、内藤ゆうやさんが記者会見を行って、いわゆる「内藤案」の配置図が示されました。立面図、断面図がないので、詳細はわかりませんが、容積率300%は変更せず、現在の区の計画で東と西の敷地に分かれている建物を、一方の東敷地に集約すると大きく変更されました。


  これまでの内藤案は、「区長権限で建築条件を大幅に緩和出来る」という主張に基づいて「容積率300%を600%に拡大する」という前提だったはずでしたが、記者会見で「容積を変えるには、かなり大変な行為で、とても2年間で収まるものではないです」と認識を変えたことを説明しています。

 また、「一方で高さ制限については、45mに収める必要は、私はないと考えています。これが、例えばキャロットタワーのようなもの凄く高いものが建つという意味ではない」として、「階数はマックス20階以内」とも言っています。


  区の計画は、西棟には、区民が手続きに訪れる部署を低層階に、東棟には、主に事業者等が訪れる部署を配置し、それぞれの利便性に配慮しています。区民サービスは分散しているのではなくて、西側低層棟に集約されて、迷うことなく使いやすい窓口となっています。東西の区庁舎機能を確保するために、現在の建築計画では容積率は、東も西も制限上限の300%近く使っています。

 説明された内藤案が、庁舎機能の必要面積の床を東に集約した建物は、第1期工事で完成する10階の1期棟を真ん中に挟んで、南北に20階の高層ビルが出来上がる格好になります。「山」の字の両側の線を真ん中の倍に引き上げたような2本のタワーが、真ん中の10階建てを挟む形になると予想されます。

 隣のビルへの移動は、一度低層階に下り、エレベーターを乗り直さなければなりません。フロアに占めるコア(トイレ、エレベーター、階段)の割合も多くなり、効率的な空間利用とは言えません。また、現在の建設案で西側に集約された区民サービスの窓口を区民が利用するのと、タテ移動のどちらが使いやすいでしょうか。

 さらに、300%をフルに使って生み出した空地は、すでに第1工事竣工分と20階建て2棟で、300%の容積率の分母として使用済みのために、さらに新たな施設を建設する敷地としては使えないことになります。単なる空地、あるいは緑地として残すしかないのですが、ここに年間で億単位の投資する民間企業があるでしょうか。はなはだ疑問です。

 公開討論でも指摘し、明確な返答がなかったところですが、内藤案で財源として掲げている民間賃貸物件を新庁舎に集約する効果を年間3億円×50年間と試算している点ですが、世田谷区の計画でも、同様の効果は構想段階から見込んでいるものであり、50年で積算すると150億円どころか、200億円を超える削減になります。すると、「400億円対ゼロ」という表記自体が根拠を大きく欠くことになります。

 この内藤案を聞いていて、本年10月に竣工する第1期工事で工事を凍結して、施工事業者への損害賠償を支払い、出来上がっている第2期、第3期の設計も破棄して再設計をして、東側敷地に2棟の高層ビルに集約するだけの奇妙な配置図の実現のために、工事の凍結という大きな犠牲を払うにふさわしい経済的な合理性とは到底考えられません。

 記者会見で示された財源確保案には驚きました。「塩漬け1400億円の運用250億円」が中心の財源となりますが、「10年間で利回りを確保出来る運用」にどこまで確実性があるのでしょうか。利率が高ければ、運用損失の危険もあります。そして、当初案ではメインとなっていた民間資金の確保への道筋が「ネーミングライツ50億円」「土地を貸すことで得られる利益50億円」とあるだけで、民間事業者との共同事業が見当たらなくなっています。

 その他、現在の区庁舎建設プランでは、地下に建造する230台分の「駐車場」はどこに何台確保するのか、高さ制限の突破に要する建築関係手続きの内容及び必要期間をどのぐらい見ているのか、ZEB認証はとれるのか等の疑問がありますが、「詳細は詰めている」とのことでしょう。区民に政策選択を迫ろうとするのであれば、「詳細を詰めてから実現可能性を示す」ことが最低限の条件ではないでしょうか。

3 コロナ対策で成果があったとしていますが、今後新たな感染症が拡大した場合、対策は今回のものと比べ、どう進化したものになりますか?

保坂: 新型コロナウイルス感染症がヨーロッパで2020年初めに急拡大をした際、高齢者施設で大変多くの方が亡くなるニュースを目にしました。当時のニュースでは高齢者施設の入所者の方を中心に感染症が蔓延し、亡くなる方が多くいると報道されていました。

私自身、大学の研究機関をすぐに訪れ、区独自の検査体制を整え、高齢者施設を中心に徹底的に検査を行ってきました。しかし、高齢者施設の積極的な検査の政策を提案した際は、検査を拡大すると陽性者が掘り起こされ、医療機関がパンクするため逆効果という反対論もありました。

当時は非難された検査の徹底ですが、やがて国の方針となり、今ではコロナ対策として当たり前になっています。3年間をふり返ると、高齢者施設で続々亡くなるという事態を抑え込むことができた。

 今後新たな感染症が拡大した場合の対策としては、その感染症の特徴をしっかりと把握するとともに、いのちを守ることを最優先に、区内医師会、医療機関、専門家などの協力を得て、常識に捉われない対策をしっかりと講じてまいります。現在も高齢者施設を守る体制は維持しています。

 4 行政のDX化を加速するための具体策は?
 

保坂:昨年6月より、サイボウズ株式会社の執行役員・社長室長をつとめた松村克彦さんをDX担当の副区長に登用し、庁内の体制を整え、新年度から区民サービスへ生かす取り組みを進めています。また、2月6日より開始したマイナンバーカードの利用による「引越しワンストップサービス」に加え、現在、子育て及び介護関係の26手続きについてマイナポータルから電子申請が行えるよう準備を進めています。

 5 ふるさと納税流出対策をどう実効性あるものにしていきますか?
 

保坂:昨年11月に世田谷区の特設サイトをオープンし、予約が取りづらいスイーツ店の優先予約券などが話題を呼び、年末の1か月で7,500万円の寄付を集めました。今後はさらに世田谷区の特色を生かした返礼品を増やし、年間5億円の寄付を目指します。また、下北沢の駅前広場に名前入りのブロックを埋め込む企画は、一口5万円で1000件を超えました。今後は返礼品を通して世田谷区の魅力を知ってもらい、世田谷区に来てもらう。そういったきっかけをつくっていきたいと思います。

 6 せたがやPayはデジタルリテラシーがある一部の人だけが恩恵を受けていますが今後も継続しますか?またそうした批判にどう答えますか?
 

保坂:地域の商店街事務所には毎日のようにアプリのインストールのやり方をサポートしてもらいたい高齢者が多数きています。デジタルデバイド対策として、区では区内のまちづくりセンターで高齢者向けのスマホ講座等を開催するなど対策を進めています。


 また、せたがやPAYは、2023年3月末時点で、アプリダウンロード数は27万件以上、チャージ金額は100億円以上、加入店舗数は4400店舗以上になっています。また、せたがやPAYは他のキャッシュレス決済と違い、店舗側に手数料が発生しないのも特徴の1つです。区内の消費喚起を促すとともに、区内小売店側にも導入メリットがあり一定の効果があったものと思います。

 7  自転車専用道路などの整備が進んでいません。電動キックボードなども増えています。違法駐車も多く見られます。交通安全対策の推進についてどのようにお考えか?
 

保坂:区が実施する区道の自転車専用道路などの整備につきましては、区道の道路幅員や道路事情を鑑み、主に車道の左端に自転車ナビマークと青色矢羽の路面標示を連続して設置する形態(自転車走行位置表示)での整備を進めており、現在の整備済み路線延長は51.3kmとなっております。

引き続き、道路改修工事などに合わせて整備を進めるとともに、パトロールにより自転車走行などを妨げる違法駐車車両を発見した際は、警察へ取り締まりを依頼します。また、交通ルール遵守をキャンペーンや広報にて啓発するなど、交通安全対策の推進に努めていきます。

(以上、保坂候補の回答)

図)内藤ゆうや候補の保坂候補の見解への意見

出典)内藤ゆうやツイッター @ynaitosetagaya

世田谷区長選は4月16日告示、投開票は4月23日だ。選挙戦は1週間だが、区民のみなさんは、両候補の主張を良く自分で調べて投票してもらいたい。

 

トップ写真:内藤ゆうや氏ⒸJapan In-depth編集部

∗法定自主税⇒法定外自主税 に修正しました。(2023.4.16)

 




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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