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.社会  投稿日:2023/9/18

ジャニーズに求められるものはBTSが体現する社会性 【日本経済をターンアラウンドする!】その13


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・ジャニーズのビジネスモデルは崩れ始めている。

・社会的メッセージを発信するBTSなど韓流アイドルの存在がある。

・存在価値をどう転換するかが問われている。

 

ガラバゴス。

失われた30年のグローバル化とのせめぎあいの中で、それは日本のエンタメにも当てはまるのではないかという思いを強くしている。特に、日本のエンタメで、主要なタレントを輩出してきたジャニーズのビジネスについて考えていきたい。

ジャニーズのコンテンツを楽しんだものとして、それなりに評価しているし、そのパフォーマンスは凄いなあと思う。特に、ジャニーズ事務所のダンス練習動画などを見ているとさすがだな、プロだなと思う。

しかし、若者に話を聞くと、「ジャニーズださい」などと平気でファンの俺に言ってくる人もいる。韓流タレントに夢中になる人も多く、以前のようなジャニーズタレントの圧倒的なプレゼンスは低下しつつあると感じる。

■ ジャニーズは美少年のショー

タレントの歌、曲の販売、踊り、テレビや演劇での演技を提供し、その対価を得て、さらに、ファンクラブ経営で会費収入を得るというものがビジネスモデルである(以下)。

▲図(出典:筆者作成)

中でも、ジャニーズのタレントの競争力は

1.美形な少年たち、細く背の小さい美少年

2.踊りをメインに、バク転やローラースケートなどの才能も

3.歌・踊り・演技・しゃべりなどマルチな才能

4.Jr時代からファンがその成長を応援できる

ところにある。特に、①、中には男らしいタレントもいるが、ほぼ多くが美形で、背が低めの少年たちが選抜されることが多い。

確かに一流歌手と比較したり、一流俳優と比較したり、個別の才能で比較すると、大変失礼な言い方だが、少し劣ることも事実である(実際、スマスマというテレビ番組でケミストリーとともに歌を歌うときがあったが、やはりプロ歌手の方がうまい)。

ただジャニーズタレントは非常に高い競争を勝ち上がってきた人たちであり、その中でプロとして一定の品質は満たしている。超一流のパフォーマンスというより、ある程度のパフォーマンスをもとに、ファンへの感謝や態度、人間性という面での「タレント性」と女性が求める「美しさ」で勝負していると思う。まわりにはジャニーズのような美少年はいない。かっこいい男はいても、美しくない。そうした中、ジャニーズには美少年がいる、そんな男性への「美少年」幻想・疑似恋愛、ニーズに応えた価値を提供しているともいえる。

■ BTSなどの本物感

しかし、今、このジャニーズのビジネスモデルは崩れ始めている。それはBTSをはじめとする韓流アイドルの存在だ。そのダンスや歌唱力などスキルが非常に高いのだ。さらに、BTSの凄さはそのコンセプト・戦略性である(詳細はこちら)。

もともと当初のコンセプトが「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」というものであった。正式名称は防弾少年団(Bangtan Sonyeondan)であった。その次のコンセプトは、「Beyond The Scene:現実に安住せず、夢に向かって絶えず成長していく」というものになった。こうしたコンセプトとそれと連動するメッセージが展開される。「勉強する機械にしたのは誰?」という歌詞でストレスを抱える若者の代弁者として活動し、「自分を愛することの大切さ」など若者を励ます。BTSはメッセージ性に強みがあったと言える。他方、残念ながらジャニーズには社会的メッセージは少ない。

■ ピンチをチャンスに、根本的改革を

前回も説明したが、ジャニーズ事務所みたいな独占企業があると市場競争が阻害される。ジャニーさんがショービジネスの最先端を日本で成功させたものの、現在は、韓流アイドルの挑戦を受けて苦戦しているという状況だ。山下智久氏とタイのタレントのコラボ、中国への進出などそれなりに成功した面はあったとは思うが、グローバル化には勝てなかったということだろうか。

既にジャニーズのタレントは過去ほど少女たちからは支持を受けているわけではない。業界に社会性をまとったタレントが参入してきた今、その存在価値をどう転換するかが問われていた。そんな中、この事件が明るみになった。だから、社会性が問われている。

show must go on!するためには、時代の動きに無知ではいけないのだろう。根本的改革を期待したい。

トップ写真:米ホワイトハウスで記者会見に臨むBTS(2022年5月31日にアメリカ・ワシントンDC)出典:Photo by Kevin Dietsch/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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