2024年は2023年の「変化」が更に進展【2024年を占う!】日本:社会
小寺昇二(株式会社ターンアラウンド研究所 共同代表 主席研究員)
小寺昇二の「人財育成+経営改革」
【まとめ】
・2024年は2023年に現れた新たな『変化』が更に広範囲に、強く起こる年になる。
・「旧い体制は変わらない、抗ってもムダ」という社会に対する意識が変わりつつある。
・「おかしなことは時間がかかっても必ず是正される」ことを発信していきたい。
結論を先に申上げると、2024年は、「2023年に現れた新たな『変化』がさらに広範囲に、かつ強く起こる年になるのではないか」と考えています。
■2023年の「ダークサイド」における変化
では、その2023年に現れた「変化」について、まず「ダークサイド」から見ていきましょう。
<2023年のダークサイドにおける変化の具体例>
1. 国際的に度々批判を受けながら継続してきた外国人労働者の扱いに関して、「入管法が改定」されたこと
2. ジャニーズの創業者による性加害が白日の下にさらされ、ジャニーズ事務所の解体、再編となったこと、その他、宝塚歌劇団でのハラスメント、過酷労働が問題化するなどこれまでアンタッチャブルだった芸能界の問題に陽があたったこと
3. 自民党のパーティー券に纏わる裏金問題が注目され、自民党、政府での人事に波及していること
これらの問題は、長きに渡って問題があることが指摘されながら、「問題化は難しい」とか「変えることは無理だろう」と考えられてきたという共通点があります。
それが、
・外国特派員やBBCからの指摘、つまり外国からのプレッシャー(①、②)
・あまりにも時代や倫理観にそぐわなくなるほどの制度疲労(③)
などを受け、問題化しました。
しかしながら、それぞれについて
1. 入管の改定が、内容によっては改悪になっていたり、本質的な課題にはメスが入っていない。
2. メディアについては、今回も責任、再発防止策策定に対しては不十分。
3. ザル法と言われる政治資金規正法そのものの欠陥についてまでは現状、追求が及んでいっていない。
といった有り様であり、長年の「岩盤」のような、国際的にも恥ずかしい現状を変えるだけの変化にはなっていないという印象です。但し、問題が世間に晒される状況になったことは一定の進歩であり、とにかく「旧い体制は変わらない、抗ってもムダ」という社会の風潮が変わる兆しが垣間見られるようになっているのではないでしょうか?
これらの問題は、是正するまでは別事案(別事件)の発生、発覚なども伴いながら、今後も燻り続けるでしょうし、上記以外にもたくさん存在する「昭和の宿痾」のようなものにも火が飛び移っていくことも多くなると思います。火の拡がりは広範囲になってくるのではないかと予想しています。
それだけ、長らく放置されてきた「変わらなければならない社会の制度」が多く、2024年にはそろそろ人々も、「変わってきている、本当に変わっていくんだ」という認識がさらに深まっていくように思います。
「問題化してもやっぱり変わらない」ではなく、「歩みはのろいけれど、着実に変化していく、変えていいんだ」という日本社会全体の「意識」が覚醒されていくのです。
それはなぜか?答えは簡単です。あまりにひどい、遅れている・・・日本人得意の「恥」の意識が限界に達していくのです。
そうした制度の重しとなっていた「団塊の世代」などの高年齢者の退場の進行に伴って、旧い体質のエスタブリッシュメントに忖度し続けてきた下の世代も、主体的に社会の変化に取組まざるを得なくなっていくことでしょう。時間はかかるかもしれませんが、そうなるのが時代の必然であると思いますし、もちろん早期にそうなることを個人的には期待しています。
■2023年の「ライトサイド」における変化
2023年のライトサイドにおける変化、大ニュースについては、スポーツの分野が象徴的であったと思います。
<2023年のライトサイドでの変化、ニュース>
1. 将棋界での藤井8冠の誕生
2. 大谷選手のMVP及び高額契約でのドジャース移籍
3. サッカー男女選手の欧州での活躍
4. リベラルな監督に率いられた慶応高校の夏の甲子園制覇
5. 好調な株式市場、賃上げの機運(これについては、前回コラムで詳述済み)
スポーツに関しては、日本経済新聞の「スポーツの力」で紹介されているJOC(日本オリンピック委員会)理事で筑波大教授の山口香さんの「競技ごとの事情はあるにせよ、全体として言えるのはスポーツはお年寄りが活躍できないからではないですか」(2023年12月13日「スポーツの力」での北川和徳のコラム)との指摘が正鵠を得ているように思います。
「失われた30年」を継続させてしまった旧い世代の退場と、世界に飛躍していっている若い世代を対照的に語っています。
■大事なことは変わるはずだという希望、変えようという意思を持ち続けること
昭和の残滓にまみれながら、それでも変化することを嫌ってきたとも言える日本人も、コロナ禍以降は「先進国の中で、日本は・・・」という数々の悲しい統計数字を見せられてきましたが、「諦観」の次の段階として、「変われない」という先入観に疑問を抱いていくことが始まるはずです。
繰返しになりますが、2024年は、ようやく「変われるんだ」「世に中、変わるんだ」といった気分に変わっていく年なのではないかと考えています。
変革とか変化とか、そうしたものは、「雪崩を打って起こる」という傾向はありますが、初期段階では新旧勢力の攻防によって行きつ戻りつ、「二歩前進、二歩後退」という形で進んで行くのでしょう。
筆者は既に高齢者に分類される世代に属していますが、団塊の世代の直下の世代としてたくさんの企業で「変革」を志向し、現在も「変革」を意味する社名を持つ会社の共同代表を務めています。
東京オリンピック/パラリンピックの開催に関しても、リスクを取って、「開催には反対」と正々堂々と述べていた山口香さんのような志の高い人々の現状を変えようという意思や、これまで「変わるはずがない」と諦めていた人々に、「おかしなことは時間がかかっても必ず是正される。だから変わるはずだという希望を失わない」ことを今後も発信し、出来ることを行動し、企業や社会において新たな地平を切り拓こうとしている全ての人たちに対して、微力ながら応援していきたいと考えています。
共同代表 主席研究員 小寺 昇二
トップ写真:オークランド・アスレチックスとの試合中のロサンゼルス・エンゼルスの打者大谷翔平(2023年9月2日カリフォルニア州オークランド)出典:Michael Zagaris/Oakland Athletics/Getty Images
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この記事を書いた人
小寺昇二
1955年生まれ、都立西高校、東京大学経済学部を経て、1979年第一生命入社。企業分析、ファンドマネジャー、為替チーフディーラー、マーケットエコノミスト、金融/保険商品開発、運用資産全体のリストラクチャリング、営業体制革新、年金営業などを経験。2000年ドイチェ・アセットマネジメントを皮切りに、事業再生ファンド、CSRコンサルティング会社(SRI担当執行役員)、千葉ロッテマリーンズ(経営企画室長として球団改革実行)、ITベンチャー(取締役CFO)、外資系金融評価会社(アカウントエグゼクティブ)、IT系金融ベンチャー(執行役員)、旅行会社(JTB)と転職を重ね、様々な業務を経験し、2015年より2022年まで埼玉工業大学情報社会学科教授
この間、多摩大学社会人大学院客員准教授、日本バスケットボール協会アドバイザー、一般社団法人横河武蔵野スポーツクラブ理事も経験(兼務)。
現在:ターンアラウンド研究所 共同代表 主席研究員、埼玉工業大学情報社会学科非常勤講師、公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト、国際公認アナリスト
著作:「実践スポーツビジネスマネジメント~劇的に収益性を高めるターンアラウンドモデル~(2009年、日本経済新聞出版)、「徹底研究!!GAFA」(2018年 洋泉社MOOK 共著)など多数
専門:人財育成、経営コンサルティング、スポーツマネジメント、ターンアラウンドマネジメント、経済、コーポレートファイナンス