国民民主代表選、投票機会喪失は「数千人規模」足立氏、被害実数は確定できず
執筆者:安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
本稿のポイント
・数千人規模の党員・サポーターが投票機会を失った、または失った可能性があると検証委員会が総括した。
・足立氏は名簿そのものを入手していないと説明。報告書は組織規則による非公開を理由に挙げ、被害実数などの検証の限界を明記している。
・再発防止策に加え、個別連絡や問い合わせ窓口、進捗公表が提言されたが、会見では実施日程の具体的な回答はなかった。
国民民主党の代表選挙で投票用紙の不達や有権者名簿への登録漏れが生じた問題について、検証委員長の足立康史参議院議員が10月1日、検証結果を説明した。報告書は、数千人規模の党員・サポーターが投票機会を失った、または失った可能性があると総括。足立氏は会見で、実際に何人が権利を失い、何人が回復したのかは分からないと述べた。名簿管理や選挙事務の改革とともに、投票できなかった人への対応が提言されている。
郵送の不備と、最終的な投票機会喪失は別
会見で足立氏は、投票用紙の返送3561件、有権者名簿への未登録4423件を示した。報告書によると、返送数は9月17日15時現在で地方議員4件を含み、返送率は約7.9%。2023年の約3.0%を上回った。住所の一部欠損は1万7802件で、投票用紙が届いた分も含む。
未登録者への追加登録や電子投票の案内が行われたため、郵送の不備の件数を、そのまま投票できなかった人数とすることはできない。足立氏は記者が郵送できなかった規模を約8000と整理したことには同意したが、被害実数については、各件数の重複や権利回復があるため確定できないと説明した。
足立氏は会見で、投票機会を失った規模を2000~3000人程度と見積もった。ただ、この数字は報告書には載っておらず、確定した実人数ではない。報告書も数値は暫定的で、各件数を合算して被害の総数とすることはできないと明記している。
名簿の確認ができなかった検証
足立氏は、有権者名簿そのものを入手しておらず、不達と未登録の重複の有無や規模は分からないと答えた。報告書では、元となる党員・会員名簿が組織規則により非公開とされているため、実際の名簿データの確認や名寄せを実施できず、数値は事務局の報告を整理したものと説明した。
返送の原因別内訳、返送者と権利回復措置の対象者・投票者との突合、電子投票の案内メールの実際の到達状況も、資料の提出を受けられず検証を尽くせなかったという。
会見で言及された1861件は、報告書では投票用紙の未着を理由とする権利回復措置の件数だ。未登録者への救済全体の総数ではない。返送3561件のうち電子投票に必要な情報が送信されたのは440件で、残る最大3121件には救済が届かなかった可能性がある。ただし、これも対象者の突合ができていない暫定値であり、投票できなかった人数の確定値ではない。
党員・サポーターの総数について、足立氏は名寄せが完了しておらず、厳密な人数は分からないと説明した。9月3日の再公告にある特別党員462人、党員1万3857人、サポーター3万5259人の合計は4万9578人。一方、検証委員会は公告の数字が正しかったとの結論は導いていないと述べた。
当落への影響と、選管の判断への評価
会見で足立氏は、問題のあった票がすべて橋本幹彦候補に回っても結果は変わらなかったと説明した。報告書の計算では、党員・サポーター枠53ポイントすべてを橋本候補が獲得しても、玉木雄一郎候補85ポイント、橋本候補74ポイントとなる。当選者への影響に関する評価であり、報告書は、結果に影響がなかったことを理由に問題を軽く扱うことは許されないとしている。
追加登録を当初認めなかった判断については、規程上の裁量の範囲内と解する余地があると整理した。ただし、本人が有権者の要件を満たすかで投票資格を判断すべきで、選挙結果への影響によって左右されるべきではないと指摘した。
後に追加登録を認めた判断は、投票機会を回復する方向として是認した一方、報告書は根拠、手続、記録に課題を残したと評価している。救済を全面的に適切だったと認定したわけではない。
未登録者の救済は、県連・支部が本人のメールアドレスを添えて申請する方式で、申請期限は9月1日13時、投票期限は9月3日だった。報告書は、メールアドレスの登録がない人や支部が申請しなかった人には、投票機会が回復されなかった可能性があると指摘。全支部を対象とした再調査は行われていないとも記している。
改善責任と、提言の実施をどう進めるか
報告書は、問題を特定の担当者個人の過失よりも、党の仕組みと体制の不備が重なったものと位置づけ、改善責任は党本部、代表選管、各県連・支部が役割に応じて負うべきだとした。足立氏も、政治資金と党員名簿は政治家が責任を持つべきだと述べた。
提言は情報システム、選挙事務体制、投票機会を失った人への対応の三本柱。一人一IDなどによる識別、所属先の原則一本化、本人による登録内容の確認に加え、重要な判断の決定文書作成・保存や、選管の判断への執行部の関与を原則避けることを求めている。
個別連絡、問い合わせ窓口、提言の実施状況の定期公表も提言された。ただし、謝罪・説明の具体的な機会について、足立氏は執行部に回答を委ねた。新システムの予定は今回の提言前に一度延期され、日程は執行部で改めて議論すると聞いていると説明。改革の実行を監視する考えを示した。
よくある質問(FAQ)
Q1.約8000人が投票できなかったのですか。
A1.郵送に不備があった規模と、救済後も投票機会を失った人数は別です。2000~3000人は足立氏の会見での見積もりで、被害実数の確定値ではありません。
Q2.検証委員会は名簿を確認しましたか。
A2.足立氏は入手していないと説明しました。報告書は、元となる党員・会員名簿が組織規則上非公開であり、実際のデータ確認や名寄せを実施できなかったと記載しています。
Q3.党員・サポーターへの対応策は示されていますか。
A3.報告書は個別連絡、問い合わせ窓口、説明、進捗の定期公表を提言しています。会見では、その実施日程について具体的な回答はありませんでした。
関連リンク
代表選検証委報告書(公表版、2026年9月30日)
https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2026/09/d5682b3b22785f42fa20626a1686d143.pdf
報告書(公表版)の概要
https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2026/09/841fd36e00a2da76ca50228ba25b3125.pdf
代表選挙の実施について(再公告、2026年9月3日)
https://new-kokumin.jp/news/business/20260903_1
トップ写真)足立康史参議院議員・国民民主党代表選挙検証委員会委員長
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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