首相のG7欠席 欧州問題に発言してこそ高まる存在感
執筆:樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【本稿のポイント】
・高市首相はさきのG7(主要7か国首脳会議)のオンライン会合を欠席した。
・欧州の石油問題が議題だったからと説明しているが、野党などから批判にさらされている。
・首相は夏のNATO(北大西洋条約菊)首脳会議も欠席しており、日本の国際的存在感の低下が懸念される。
高市首相が10月2日のG7首脳テレビ会議を欠席し、野党から批判が相次いでいる。議題は欧州を中心とする石油不足で、日本からは遠藤和也外務審議官が出席した。首相は議長国フランスが直前に設定したためと説明したが、7月のNATO首脳会議も欠席しており、日本の国際的な存在感の低下が懸念される。ジャーナリストで元産経新聞論説委員長の樫山幸夫氏が、首脳外交に臨む姿勢を問う。
■野党からは批判続出
10月2日、ことしの議長、フランスのマクロン大統領の呼びかけで急遽、G7首脳によるオンライン会合が開かれた。欧州の石油不足が協議され、IEA(国際エネルギー機関)を通じて、ディーゼル燃料(軽油)などの石油製品1億バレルを協調放出することで合意した。
高市首相は欠席、日本からは遠藤和也外務審議官が出席したが、農相の不適切発言で勢いづく野党は一斉に、攻撃の放列を敷いた。
「外務審議官が出ることには違和感がある。首相だけが他国と渡り合うことができる」(国民民主党、玉木雄一郎代表)、「各国から、『軽視された』と受け取られる懸念がある」(民主改革の会、小川淳也代表)、「自分たちとは直接関係ない、ということはやめたほうがいい」など手厳しい指摘の半面、「首相はもっと首脳外交をすべきで、国会も支えるべきだ」(玉木氏)などと前向きなアドバイスもみられた。
こうした批判に対して首相は「(今回の会合は)欧米等のディーゼル価格などへの対応を議論した。議長国が当日、直前に急遽設定したもので、代理出席が認められていた」(10月2日のX)と説明。「バーナム英首相は代理出席、コスタ欧州理事会議長も欠席されたと聞いている」と付け加えた。
急遽決まったので時間がとれず、議題も日本と直接関係がなかったので、やむなく代理を出席させたということらしい。会合の時間に何をしていたのかなどについては説明がなかった。
木原官房長官は10月5日の記者会見で、首相と同様の欠席理由に言及。さすがにバツが悪かったのか、聞かれもしないのに「日本は3月に率先して備蓄石油を放出、4億バレルの協調放出に貢献した」「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップについても説明した」などと延々3分間にわたって、釈明とも弁明ともつかぬ発言を続けた。
■説得力に欠ける欠席理由
首相、官房長官による説明は、どう強弁しても説得力に欠ける。日本に直接関係がないテーマであっても、積極的に出て、官房長官が長々と説明した緊急備蓄放出はじめ日本のエネルギー対策の実績を伝え、各国と情報を交換しても決して無駄ではなかったろう。
日本はこれまで、中国の跳梁などを念頭に、「欧州の問題はアジアの問題」として連携を強化、岸田元首相は在任中、NATO首脳会議に、毎回出席してきた。高市首相は、安全保障とエネルギーの問題は別物と考えたのだろうか。
かつてコソボ紛争の際、1999年のG7議長国ドイツの呼びかけで外務省の局長クラスによる政務局長会議が随時開かれ、日本も積極的に参加した。遠い欧州、バルカン半島の問題ではあったが、当時、日本の外務省高官が「日本が参加することに意味がある。極東の国が関与したとなれば、外交交渉、解決策に普遍性と客観性がもたらされるからだ」というのを聞き、大いに同感したことがある。今回も、それがあてはまるだろう。
急遽、設定されたからーというが、首相はその時間、公邸にこもっていたのだから、参加しようと思えばできたはずだ。非公表を要する政治日程などがあったのなら別だが、そうでないにもかかわらず欠席したのなら、首相として怠慢のそしりを免れないだろう。首相は国民が納得いくように説明すべきだ。
ほかの首脳も欠席しているからというのも理由になるまい。
誰が来て誰が来なくて、自らの判断で方針を決め、主張すべきことを主張すべきではないのか。主体的に決められないなら情けない。
■呼ばれず、押しかける人もいるのに・・・
首相は今年7月、トルコで開かれたNATO首脳会議も欠席した。国会日程が理由だった。昨年の石破首相(当時)に続いて2年連続、日本の首相が出席を見送ったことになる。
経済大国の陰りと軌を一にして日本の国力、存在感が低下している。指導者の消極的な姿勢は、世界における日本の地盤沈下にいっそう拍車をかけることにならないか。
G7の第一回会合が1975年にフランスのランブイエ古城で開かれた際、参加国は、わが国のほか、提唱国のフランスに米国、英国、西ドイツ(当時)の計5カ国だった。声がかからなかったイタリアのモロ首相(当時)は強硬にねじ込んで自らを招待させた。
国益のためなら、お呼びがかからないところでも押しかけることをいとわないー。出席の機会を自ら放棄するのとは大きな違いだ。一国の首相かくあるべしだろう。
【よくある質問(FAQ)】
Q1. 1億バレルの放出は、新たに決まった協調放出なのか?
A1. 新規の放出ではない。IEAの10月7日の声明によれば、3月に決めた協調放出のうちまだ放出されていない分を早期に市場に出すもので、その量が約1億バレルにあたる。すでに約3億2500万バレルが放出済みで、加盟国は放出の加速と軽油の優先を支持した。
Q2. 3月のIEA協調放出はどのような規模だったのか?
A2. 2026年3月11日、IEA加盟32か国が中東情勢による市場の混乱を受け、過去最大となる4億バレルの協調放出を全会一致で決定した。IEA設立(1974年)以来6回目の協調行動である。
Q3. 「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」とは何か?
A3. 経済産業省が通称「パワー・アジア」として進める枠組みで、アジアの原油・石油製品の調達やサプライチェーン維持に課題を抱える現地企業に対し、JBIC(国際協力銀行)やNEXI(日本貿易保険)を通じた金融面の協力などを行う。
(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)
トップ写真:フランス・エヴィアンで開催されたG7サミット 2026年6月16日 フランス・エヴィアン=レ=バン
出典:Photo by Isabel Infantes – Pool/Getty Images
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この記事を書いた人
樫山幸夫ジャーナリスト/元産経新聞論説委員長
昭和49年、産経新聞社入社。社会部、政治部などを経てワシントン特派員、同支局長。東京本社、大阪本社編集長、監査役などを歴任。

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