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.社会  投稿日:2013/12/21

[牛島信]株式会社はこの世でもっとも大切なもののために存在する〜それはお金ではなく、人が幸福になるため。


牛島信(弁護士)

掲載記事プロフィール

こんなことを考えている。

株式会社というものは、この世でもっとも大切なもののために存在する。もちろん、それはお金ではない。この世でもっとも大切なものは、幸福である。株式会社は、人が幸福になるために存在している。その議論は、いささか風邪が吹けば桶屋が儲かるというのに似ている。いまそれを試みに描写してみれば、こんなことである。

株式会社があると、より多くの事業が可能になる。株式会社というものは、投資した以上の責任を負わないでよいからである。有限責任といわれている。より多くの事業が可能になれば、より多い雇用が生まれる。人にとって雇用は大事なものである。雇用されているというということは、働いて、その報酬としてお金を貰うことを意味している。

恵んでもらうのではない。自分の労働を会社に使ってもらい、その対価を得るということである。そこには、等価交換の取引があって、働く者は、社会で価値を認められていると実感することができる。社会に対峙しているといってよい。独立しているのである、自立しているのである。たとえ、もう少し多額の給料が欲しいにしても、である。

そうした自分の価値の実感は、独立し自立している自分を感じることができる状態は、自らへの誇りを生む。自尊心である。自分は、広い世間で、自分の持っているものを渡し、自分の必要とするものを、たとえ最低限であっても、得ることができている、誰にも頼っていない、という自覚である。

自尊心が、自らへの尊敬の念が、人の人生における一番確固とした幸福の基盤である。だから、株式会社は、この世でもっとも大切な、人の幸福のために存在しているのだ。蛇足を顧みずに言えば、だからコーポレート・ガバナンスは大事なのである。人が幸福に生きるために必要な株式会社、そのなかでも巨大な、つまりたくさんの雇用をかかえている上場株式会社を統治(ガバン)するものだからである。

雇用が大事なら、会社はクビを切ってはいけないことにすればいい? 雇用は不思議な生き物である。そんな会社は倒産してしまう。全員解雇になってしまうということだ。

国全体に拡げたら? ソ連という国が昔その実験をして失敗した。

株式会社の、経営がうまく行くとは限らないなかで頑張るという緊張感が、結局、世の中の雇用を維持するのである。或る会社が潰れても別の会社が興る。株式会社の元である資本主義のダイナミズムである。

 

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