[山田厚俊]<集団的自衛権、着地点は見つかるか?>与党協議を前に安倍自民党に楔を打った創価学会
山田厚俊(ジャーナリスト)
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「基本的な考え方は、これまで積み上げられてきた憲法第9条についての政府見解を支持しております」--。
5月17日、公明党の支持母体である創価学会の広報室は、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認について「本来、憲法改正手続きを経るべきだ」とする見解を示した。20日から始まる与党協議を前に、学会が楔を打った形である。
その“効果”は早くも出てきたようだ。19日昼の政府与党協議会で公明党の井上義久幹事長は「国民が望んでいるのは着実な景気回復だ」と述べ自民党をけん制。さらに、山口那津男代表は同日の講演で「従来の政府の憲法解釈の立場に立っているのが公明党だ」と、従来の姿勢を崩さない態度を改めて示した。
与党両党の溝は埋まる気配がない。公明党関係者は語る。
「過去の連立10年の歴史は、学会にとって“屈辱の歴史”でもあった。“自民党の選挙互助会”と化し、平和を党是としてきた姿から徐々に変化してきた不安がある。今回、連立与党に復帰し、国会議員は喜んでいるが、前回以上に“党の形”が崩れてしまうのではないか、自分たちのレゾンデートル(存在意義)が無くなってしまうのではないか、そんな危機感の表れが学会広報室の発表になっている」
一方、自民党もそんな公明党の事情は知っていると、自民党衆院議員の一人は言う。
「山口代表が言う通り、従来の憲法解釈でも適応できる。要は、グレーゾーンの対応をしっかりやればいい話で、米国側もそれで十分なはず。こだわっているのは、安倍晋三首相と彼の側近連中だけ」
とはいえ、ここまで突き進んだ以上、今度は自民党が軽々に公明党に譲歩することは出来ない。腰砕けに見られ、支持率急落の要因になりかねないからだ。衆参のねじれが解消し、自分の思う通りになるとほくそ笑んでいた安倍首相に、連立パートナーからのキツいダメ出し。果たして、うまい着地点は見つかるのか。
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