[山田厚俊]<消費増税に早くも赤信号>伸び悩む個人消費に今夏の異常気象も追い打ち
山田厚俊(ジャーナリスト)
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広島市北部で発生した土砂災害。広島県警は8月25日、新たに男性3人、女性5人の遺体が見つかり、死者は58人になったと発表した。異常気象はもはや「想定外」ではなく、あらゆる災害を想定したまちづくり、国づくりが求められるということだろう。
しかも、今回被害をもたらした豪雨、そして台風は、安倍晋三政権の「今後」にも大きく影をもたらすのは必至のようだ。というのも、4ー6月期のGDP速報値は、年率換算で6.8%減だった。近年では、東日本大震災が起きた2011年1ー3月期の6.9%に次ぐ落ち込みぶり。
官邸は「消費増税後の反動で、織り込み済み」と平静を装っているが、そうではない。「ここまで落ち込むとは想定外だった」と、官邸関係者はショックだったことを明かす。
電気料金やガソリン代など大幅値上げに追い打ちをかけた消費増税。個人消費が伸び悩むのは当然といえば当然だろう。加えて、今夏の異常気象で商業施設などの出足はすこぶる悪い。
たとえば、東京でも8月10日に予定されていた「第26回東京湾大華火祭」が台風11号の影響で中止となった。イベント中止だったり、実施されても急なゲリラ豪雨などで消費は悪くなる。
各地で被害に遭われた人たちは、命や生活の問題に直面しており、その痛ましいニュースを見れば、イベントに浮かれること自体、憚れる。つまり、消費が伸びる要素など、今夏には見当たらないのだ。
そんな7ー9月期のGDPが発表されるのは、11月中旬。来年10月からの消費税10%導入を決めるのは、このGDP発表後の12月。つまり、年内に導入を決めて来年秋からの実施を描いていた。増税分を賄うだけの昇給はなく、重税感が募っているとき、さらなる増税を導入するとなれば、世論の反発は必至。
早くも、消費増税に赤信号が灯り始めたといっていいだろう。
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