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.政治  投稿日:2014/1/3

[清谷信一]陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか①


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

昨年末の12月に次期防衛大綱が閣議決定された。これは今後10年に及ぶ防衛の方針を述べたものだ。併せて中期防衛力整備計画(中期防)も閣議決定された。こちらは今後5年の防衛計画であり、大綱よりも、より具体的な事柄が述べられている。

この新中期防では陸自が52輌の水陸両用車(水陸両用装甲車)を調達すると記されている。だが、実質的にはアメリカ製のAAV7(Assault Amphibious Vehicle,personnel.model7:水陸両用強襲輸送車7型)のみが候補である。どうもこれは初めからAAV7の採用が決定している「出来レース」、あるいは「八百長」の可能性が高い。陸幕はAAV7を試験目的で調達し、評価するとしているがこれは単なる「アリバイ工作」にすぎない。

 

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(AAV7:米海兵隊)

 

陸幕は既にAAV7のAPC(装甲兵員輸送)型4輌を本年度の予算で調達している。これは米海兵隊の中古を再整備したもので、来年5月に納入される予定だ。また来年度の防衛予算ではAAV7の指揮通信型、回収車型(クレーンが付いていて、擱座したり、破損した装甲車を回収する車輌)が各1輌調達される。これらは新造品であり、平成27年度に納入される予定だ。

防衛省の徳地秀士防衛政策局長は平成25年4月15日の予算委員会第一分科会で、日本維新の会の中丸啓議員の「25年度に調達したAAV74輌の納入はいつになるか」という質問に対して、以下のように答弁している。

「27年度までに取得をいたしまして、それから1、2年かけてこれにつきまして性能を確認する、あるいは運用の検証を行う。これによりまして、水陸両用車を導入すべきかどうか、それから実際にどの機種にするかということについて検討をするということになっております」

つまり、評価作業が完了するのは平成28~29年になる。当然AAV7が装備として予算が要求されるのは、早くても平成29年度ということになる。

ところが、だ。

筆者が入手した陸幕の内部情報によれば、AAV7の評価は2014年5月から行われ、12月には水陸両用装甲車の採用車種を決定する、とある。つまり、来年度予算で発注する指揮通信型や回収型の納入を待たずに、APC型のみで、わずか何カ月の評価を行うことになる。徳地秀士防衛政策局長は、

「1、2年かけてこれにつきまして性能を確認する、あるいは運用の検証を行う」

と述べているのだが、明らかに矛盾する。筆者は2013年12月10日の防衛大臣記者会見において、このことを質問した。

小野寺五典防衛大臣は、

「私どもとしては、このAAV7というのは参考品ということでの今回の購入ということで、その性能を見た上で今後どうするかを検討するということだと思います」

と回答した。その後、防衛省の報道官から回答があり、防衛省も期日は不明だが平成26年中に車種設定を行うことを了承しているという。つまり防衛省は陸幕の方針を支持するというのだ。これは国会答弁と大きく異なる。国会答弁をひっくり返したことになる。これは問題だ。だが、更に大きな問題がある。

③に続く

 

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