無料会員募集中
.政治  投稿日:2017/5/10

ドン後継は自由でパワフル27歳女子


安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト

「編集長の眼」

「内田(ドン)後継」そう呼ばれる宿命を背負っての出馬である。なんでまた、自民党から?何故、千代田区選挙区から?そんな疑問を抱きつつ、7月に行われる東京都議選の自民党公認最年少候補、中村彩氏に話を聞いた。ご存知の向きも多いだろうが、千代田区選挙区は、「都議会のドン」と呼ばれた内田茂・前自民都連幹事長が引退を表明しており、空白区となっていた。

 

Q まず自己紹介をお願いします。

A 日本取引所グループの東京証券取引所に勤めています。今4年目になりました。

 

Q 政治を志した動機はなんですか?

A 私の高校(慶應義塾湘南藤沢高等部)は、生徒の半分くらいが帰国子女なんです。私はずっと日本で育ったのですが、高校1年生の時、初めて帰国子女という人たちに会ったんですね。彼らが口々に「日本には未来はない」とか「将来は海外で仕事をする」などと言っているのを聞いて衝撃を受けたんです。たしかに日本の国力が落ちていった時代でしたが、だからこそ逆に、「日本のプレゼンスを世界に示したい」と思ったんです。それで、自分の将来の職業を政治に携わるものにしたいなと。「官僚」は政策を実行するプロだけど、その政策を作るのは「政治家」だ、と気づき、それなら「政治家」になろう、と決めました。高校1年生の時ですね。

 

Q ずいぶん早くに将来の進む道を決めたんですね。(笑)その後はどんな活動をしたんですか?

A 慶應の法学部法律学科に進学し、大学院で憲法学を専攻しました。学部の時は選挙のボランティアをしたりしていました。それで大学院生の時たまたま憲法がテーマで、テレビ朝日の「ビートたけしのTVタックル」と言う番組にお声をかけていただき、学生代表の数名の内の一人として出演したんですね。その時自民党の片山さつき議員がいらっしゃっていて、番組後にお声かけ頂いたんです。それが縁で片山さつき事務所にインターンを半年ばかりやりました。短い期間でしたが、すごく勉強になりましたね。

 

Q 一部報道で小池塾にも行っていた、と聞きました。何故都民ファーストから出馬しなかったのですか?

A 政治家になる夢はずっと温めていたので、小池塾が開講したと聞き、勉強のために受講しました。その後3月に3回、都議選候補を選ぶ面接を受けたんです。どこから出たいか、という話になり、自分として優先順位はお伝えしたのですが、その後1カ月全く音沙汰がなかったんです。その後自民党も公募する、というので話を聞きに行こうと思いました。自分は思想的には自民党に近いので。そして4月23日に面接をしていただき、候補者として選んでいただきました。面接には13人の議員や関係者の方が揃っていらして、「何で議員になりたいの?」に始まって、真摯にいろんな質問を投げてくださいました。ちょっと就活みたいでしたね(笑)。

それでちょっと「えっ?」て思ったことがあって。自民党の公認候補に選ばれた、と報道された翌日に都民ファーストから連絡があったんですよ。それまで一回も連絡なかったのに。で、私が希望していた「○○区の候補はどうですか?」って。確かそこには別の候補が決まっていたはずなんですけど。まあ、面接の時聞かれたのは、資金はあるの、とか、地元に応援してくれる人のコネは?とか誰かの推薦は?等しか聞かれなかったんですが。なんか、「ああ、やっぱり選挙に勝つためのコマでしかないのかな」って思いましたね。結局お断りしましたが。少なくとも自民党はジバンカンバンカバンの「三バン」がない私という人間を見て選んでくれた、と思いますね。

その後見ていると都民ファーストの候補者は他の会派を辞めてきた人がたくさんいるじゃないですか。都民から選ぶというよりはなんか野党の集まりじゃないか、と思ってしまいますね。

 

Q で、「内田茂後継」と言われることについては?

A 正直、それは当たり前だし何を言われても仕方ないなと思っています。実際そうですよね。でも面接の時内田さんに初めて会ったんですけど、全然質問されないんですよ。他の人が色々私に聞くのをうんうん、と聞いていらっしゃるだけで。最後に一問だけ「千代田区をどんな町だと思う?」って聞かれました。

 

Q なんて答えたんですか?

行政、経済、文化が集約されている町だと思います、と答えました。千代田区は色々な会社の本社が多く、税収も多いですし、他の区を引っ張っていく存在ですよね。それでいて秋葉原のような外国人観光客が集まる街もあれば、神田のような古き良き街並みもある。そういう面白いところだ、と答えました。

色々なことを言われていますが内田さんはやはり選ばれてここまでやってこられた方ですから、いいところは盗みたい(笑)。また、SNSの発信や誰に応援に入ってもらうかとかあるじゃないですか。その点、内田さんにちゃんと許可を得た方がいいよ、みたいなこと言う人もいるんですけど、私は自分で内田さんに電話かけて「こうこうですから自分でやります」って言っちゃうんです。そしたら「うん、いいんじゃない」って。ちゃんと聞いてくれるんですよ。それを周りの人に「いいって言ってました」と話したらみんな「えっ」ってなって。(笑)私、いい後継者になれると思うんですよね。

 

Q 私は去年の千代田区長選も取材したんですが、小池さんが支援した石川区長は自民党の候補をトリプルスコアで破りましたよね。脅威には感じないのですか?

A まあ、正直その数字だけ見たら脅威ですよね。でもいまはそれほどだと思っていません。その理由は二つあります。一つは、区長選挙の時は小池都知事になってから半年後で、まだ風が残っていましたが、今はどうでしょうか?豊洲市場の移転問題ですが、確かに小池都知事になってから色々な情報が明らかになってきましたが、じゃあ、それをどうするか、というのは別な話ですよね。都議会が(豊洲移転を)総意で決めたものをひっくり返してやり直そうという、その繰り返しだと何も進まないと思うんです。ですから、都民の皆さんも今の都民ファーストを見ていて、本当に変えてくれるのか?と疑問に思い始めているんじゃないでしょうか?ですので、トリプルスコアのようなことにはならないと思います。

もう一つは区長選の時は自民支持層の内、女性と若者が自民党候補から逃げてしまったというのがあると思います。で、今回の私の対抗馬の樋口高顕(たかあき)氏、34歳と聞いてますから私と7歳違うわけですが、どちらも若い世代ですよね。樋口さんには社会に対しどのような疑問を持ってお仕事をされてきたのか語ってほしいと思っています。私は一応憲法を専攻してきて、その後証券取引所という経済の中心で4年近くの経験があるのですが、比較された時、正直7年ほどのブランクはないと思っています。自民党支持層の票が逃げてしまうんじゃないか、という心配はしていません。女性と若者の票は取りに行けると思っています。

 

Q 都議会議員になったとしてやりたいことは?

豊洲移転の問題ですが、さっさと移転した方がいいと思っています。移転延期に伴う影響額の総額が年125億円に上るという試算もあります。その金額で45カ所認可保育所作れるんですよ。それに憤りを感じています。科学的に有識者が(豊洲市場は)安全で害がないと証明しているものを「安心できない」と言い始めたらじゃあ何を信じて動かす動かさないを決めるのか。今やもう感情論になってしまっていると思います。

 

Q 政策について教えて下さい。

A 私は「千代田区民、全員主役宣言!」をスローガンにしています。人生の主役は皆さん「自分」です。自分が主役として好きなことをやって人生を送ることが出来る街にしたいんです。千代田区は待機児童ゼロでお母さん方に人気があるところなんですが希望の認可保育所に入れないので家で待機しているお子さんは少なからずいると聞いています。それをゼロにするため、例えば企業内託児所を増やす政策を進めたいと思っています。働く女性の支援に直結しますし。介護施設と保育施設を混ぜたような、高齢者から小さいお子さんまで一緒にいられる施設も必要ですよね。

また、東京証券取引所にいて思うのは、アジア諸国の台頭がめまぐるしいということです。アジアを代表し、欧米諸国にも劣らないよう、経済を活性化する必要があるということです。国際金融センターの創設は必須ですね。また、市場を活性化するために国内においても金融リテラシーを高めたいです。

あと、東京オリンピックに向けては、首都直下型地震が起きる確率も高いということもあり、それに向けた地域の防災対策や施設の再点検を行いたいです。また、新旧の日本の文化をアピールするようなイベントも千代田区が率先して行っていきたいです。

そして、普通の会社員の私が立候補しているように、自身の置かれている環境問わず、何か新しいことに挑戦しようと思った時にできる仕組みづくりは行いたいです。兼業規定を緩和するよう働きかけたり、費用面で補助したり、相談窓口を設けたり。

 

Q 将来については?

A もちろんやってみないとわからないですが、なるべく長く政治家の仕事をやりたいです。長期的なビジョンで東京や国をデザインできることが若さゆえの強みですし。

でも今回自民党の候補者を選ぶ面接で将来の夢は?と聞かれて「総理大臣になることです」って答えたらみんなちょっと驚いていましたね。だって都議会議員候補を選ぶ場のわけですからね。ちょっと空気を読まず自由に振る舞ってしまうところがあるんです、私。(笑)でも、「ちゃんと政治家になってどうしたいか考えているんだからそれはいい」って言ってもらって。とりあえずやってみることが大切だと思っています。

(2017年5月9日港区にてインタビュー)

トップ画像:ⓒJapan In-depth 編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."