北朝鮮問題で国連が害になる時

島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・国連は独自の判断で何かを実行する「機関」ではない。
・米英がリビアに核全面放棄迫る中、IAEA「証拠はない」との報告書出した。
・北朝鮮問題でも国連が害になる可能性があり、注意が必要。
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国連総会に出席のためニューヨーク入りしたトランプ大統領と安倍首相の間で、9月23日、夕食を交えて3時間に及ぶ意見交換が行われた。有意義だったと言える。
写真)2018年9月23日、夕食会に臨む安倍首相とトランプ大統領
出典)首相官邸
国連総会そのものについては、かつてジョン・ボルトン米大統領安保補佐官(元国連大使)が、「単に酸素と紙を消費するだけの存在」と揶揄したことがある。
写真)ジョン・ボルトン氏
確かに、否応なく注目を集める米大統領の演説を除けば、各国首脳の演説は聴衆も少なく、国内向けの政治宣伝以上のものでない場合も多い。むしろ、トランプ・安倍会談のような「サイド」の話し合い、あるいはニュースにならない水面下での折衝の方が重要と言える。これは国連本来の意義を思い起こさせる事実でもある。
写真)2018年9月25日、国連で演説を行うトランプ氏
国連はあくまで多国間の折衝を進めるための「フォーラム」であって、独自の判断で何かを実行する「機関」ではない。
前出のボルトンは、国連は役に立つのかと聞かれ、「時々、偶然にも」(Sometimes, accidentally.)と答えている。敷衍すれば、効率的な場(フォーラム)を提供する事務局に徹したとき役に立ち(国連トップの名称が「事務総長」であることを想起したい)、自らが政治的権限を持った機関の如く動き出したとき、しばしば大きな害をなす。
国連職員には独裁国が送り込んだエージェントも多く含まれる。意思統一を図ろうとすれば内部分裂するため、責任体系はしばしば不明確となる。いくつか問題例を挙げておこう。まず北朝鮮やイランの「核査察」に当たる国際原子力機関(IAEA)である。