.国際  投稿日:2018/12/27

情報通信で中国排除加速~2019年を占う~【安全保障】


島田洋一(福井県立大学教授)

「島田洋一の国際政治力」

【まとめ】

・中国スパイ網による不正阻止は、5G覇権争いで中国企業排除がカギ。

・米国が中国通信企業排除を見直す可能性はない。

・中国通信企業排除で日本政府、国会も米国並みの対応と機動力を。

 

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2018年12月18日、政府は「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。今後5年間の防衛費を総額27兆4700億円と過去最高規模とし、「多元的統合防衛力」をキーワードに中身の充実を図るなど基本的に評価できる。

ただし、中国がこれを上回るペース、規模で軍事力を強化してくるなら、焼け石に水となりかねない。日本自身の防衛力充実と同時に、中国のスパイ網によるテクノロジー窃取の道を塞ぎ、不正行為にペナルティを与えるなどで軍資金を細らせる国際努力が重要である。

この点カギになるのが、次世代通信規格(5Gをめぐる覇権争いで、中国ファーウェイなどを排除できるかどうかだ。ファーウェイは、米共和党の若手実力者テッド・クルーズ上院議員が言うとおり「通信企業の衣をかぶった中国共産党のスパイ機関」である。

▲写真 テッド・クルーズ米上院議員 出典:Wikimedia Commons Publick domain(Frank Fey : U.S. Senate Photographic Studio)

日本政府は2018年末、アメリカからの圧力も受け、政府調達からファーウェイを閉め出す方針を決めた。同様の動きの民間への波及も加速させたい。

大手企業中、ファーウェイと密接な取引関係を築いてきたソフトバンク宮内謙社長が、12月19日の記者会見で、5Gの基地局整備に関して既存の方針を覆し、ファーウェイからの調達をやめると正式表明した。

同氏は、「(ファーウェイ)はものすごく技術力が良くて価格も安いので、今後も使いたいのは山々だ。ただ政府の方針には沿いたい」と述べている。

▲写真 ソフトバンク 宮内謙社長 出典:ソフトバンクグループ ホームページ

企業経営者としては、「技術力が良くて安い」ものを使わないとなれば株主の批判に晒されかねない。今後とも政府が、国家安全保障戦略の観点から明確に指針を示す必要がある。もっとも法治国家である以上、本来は議会が立法行為によって対処すべき問題である。その点日本の国会の動きはアメリカなどに比べ著しく弱い。

2018年11月の中間選挙の結果、米議会は‪、上院が共和53、民主47、下院が民主235、共和199(2018年12月20日時点で1議席未確定)という構成になった。

2018年8月に成立した米国防権限法は、ファーウェイなど中国の通信企業を「安全保障」上政府機関や取引企業の調達先から外さねばならないと規定している。同法案は上院を87対10、下院を359対54の圧倒的多数で通過した。

アメリカの場合、日本と違い、法案と予算案という区別はない。予算も全て法律の形で成立させねばならない。「国防権限法」は日本風に言えば「国防予算及び関連法」であり、毎年度新たに作り直される。果たして来年度は中国通信企業排除が見直される可能性があるか。答は否だろう。上述の圧倒的票差から見て、下院で与野党の多数が入れ替わったからといって状況に基本的変化はない。

▲写真 トランプ米大統領(2018年11月15日) 出典:トランプ大統領 Facebook

米国では、法案は、上下両院が通し大統領が署名して成立する。大統領が拒否権を発動した場合でも、上下両院が3分の2以上の多数で再可決すれば自動的に成立となる。従って仮にトランプ大統領が中国と無原則なディールに走り、ファーウェイ排除をやめようと拒否権を用いても、議会が3分の2以上で再可決して排除は続くだろう。実際にはホワイトハウスも強硬派主導の状態にあり、議会と足並みを揃えるはずである。日本の政府、国会もアメリカ並みの踏み込み、機動力を見せねばならない

トップ写真:Mobile World Congress 2017(2017年2月27日)出典:Kārlis Dambrāns flickr


この記事を書いた人
島田洋一福井県立大学教授

福井県立大学教授、国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)評議員・企画委員、拉致被害者を救う会全国協議会副会長。1957年大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。著書に『アメリカ・北朝鮮抗争史』など多数。月刊正論に「アメリカの深層」、月刊WILLに「天下の大道」連載中。産経新聞「正論」執筆メンバー。

島田洋一

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