「政治二極化、議論収斂させる」長島昭久衆議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2018年1月12日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・「未来日本」は政治の二極化の中で議論を収斂させる触媒になる。
・アベノミクスは、投資分野での政策転換が必要。
・日本は東南アジア・南太平洋の未来にプラスを創る政策を標榜せよ。
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今回のゲスト長島昭久衆議院議員は、現在無所属。かつては民進党に所属し、2017年の衆院選を前に希望の党に参加、2018年5月の希望の党解党と国民民主党結党には加わらず、10月、行動を共にしてきた笠浩史氏とともに、国会会派「未来日本」を立ち上げた。今月下旬に通常国会が召集されるのを前に、日本が抱える政策課題や、「未来日本」の今後の方針について、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
まず、希望の党の挫折について、長島氏は「(それによって)野党再編が10年遅れた。」と述べた。二極化した政治構造の中で、大多数の国民の思いに寄り添う改革保守政党・希望の党の結成は、偏っていた野党の政策軸を真ん中に戻し、政権交代可能な野党をつくるチャンスだったという。
それが失敗した後、野党第一党・立憲民主党に軸を合わせたことは、当初の思惑と逆行する。長島氏は、「少子高齢化、人口減少、米中新冷戦という厳しい内外情勢を前にして右派・左派、与党・野党の対立は不毛。中心で議論を収斂させる触媒の役割を果たしたい。」と述べた。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
その思いで結成した国会会派「未来日本」の所属議員は、現在長島氏と笠氏の2人。今後、衆参両院で同志を集め、人数を増やして通常国会に臨む予定だという。また、長島氏は、2018年6月に地域政党「未来日本」を設立し代表を務めている。2019年4月の統一地方選挙、7月の参院選に候補者を立て、地方から国政に影響を与えるという戦略も示した。
次に細川氏はアベノミクスについて、「一見成功したように見える一方、国民が幸せを実感するには不十分であり、新しい経済政策が必要」との考えを述べた。その上で、「アベノミクスのアップグレードが必要」と言う長島氏の考えを聞いた。
長島氏は、「良いところは引き継ぎ、直すべきところは直したい」と述べ、アベノミクスの失敗を強調する野党多数派とは異なる見方を示した。アベノミクスの「三本の矢」のうち、「金融緩和」の一定の成果は評価した一方、それを「財政政策」「成長戦略」につなげる部分が不十分であり、投資の分野での政策転換が必要だと主張した。
具体的には、以下の二つを述べた。
1.「人への投資」
かつて民主党が掲げた「コンクリートから人へ」を参照しつつ、「人への投資」の重要性を述べた。例えば、幼児教育、子育て、高等教育などを対象に投資を行い、教育格差が人生の格差につながらない仕組みづくりをすべきだとした。
2.研究開発への投資
日本の研究開発費の推移はほぼ横ばいの状態で、総額・伸び率ともに、中国などと比べて低い水準にある。
長島氏は、東京大学准教授松尾豊氏の「日本はものづくり技術が高く、AI分野の発展に有利であり、先行投資すべき」との言葉 に言及しつつ、AI分野の研究開発への投資をすべきだと述べた。政府研究開発投資によるSociety5.0の推進は、希望に満ちた将来像を国民に示すだけでなく、AI分野の日本の比較優位性を世界に示し、ビジネスマーケットを拡大させることにもつながるという。
長島氏は、「停滞の時代だからこそ、財政を将来につながる投資に振り向け、日本再生の基盤を作り直すチャンスだ。」と述べた。
(編集部注:Society5.0「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」内閣府ウェブサイト「Society 5.0」より)
細川氏は、「予算の使い方や意識の持ち方において変革が必要になっているにもかかわらず、日本社会には変化を好まない傾向がある。」と述べた。その要因の一つとして、世代による危機感の度合いの違いを挙げ、長島氏に意見を聞いた。
長島氏もこれに同意し、社会の中心を占める団塊の世代が、「逃げ切り世代」と呼ばていることを挙げ、その上で、自身ら40~50代の世代が、将来を担う10~20代の世代に、より良い社会を残さなくてはならないという思いを語った。
細川氏は、日本に求められる変化の一つとして、外交姿勢を挙げた。トランプ大統領就任以来、国際社会の構図が変化しており、日本の従来の外交姿勢では限界があると指摘した。
長島氏はこれに同意し、日本が国際社会において役割を果たすことの重要性を主張した。特に東南アジア・南太平洋について、日本は責任を持つべきだとした。長島氏は、従来日本が行ってきた戦後賠償を「マイナスをゼロにする政策」と位置づけ、「今後は、未来に向けてプラスを創っていくアジア政策を標榜する必要がある。」と述べ、外国人材受け入れ政策への取り組みを例に挙げた。長島氏は、超党派の議員連盟を結成して外交・安全保障に関する政策を打ち出していく意欲を示した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年1月12 日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。