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.国際  投稿日:2019/5/29

「中国の海洋進出を警戒せよ」佐藤正久参議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

「編集長が聞く!」

【まとめ】

北朝鮮挑発行動に国内向け国外向け2つの理由

・中国の経済外交、軍事化と一体で拡大中。

・米中貿易戦争の本質は資本主義vs共産主義。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=46020でお読み下さい。】

 

北朝鮮がまた挑発行為を始めた。5月4日の飛翔体に続き、9日には短距離弾道ミサイルを発射した。弾道ミサイルの発射は国連安保理決議違反となる。佐藤正久参議院議員に話を聞いた。

 

■ 北朝鮮ミサイル発射のわけ

佐藤氏は、今回の北朝鮮の挑発行動には、国内向けと国外向けの2つの理由がある、と話す。

「北朝鮮は、表向きには韓国とアメリカの合同軍事訓練に対しての反発と言っているが、国内には軍に対する志気の高揚、体制の締め付けの側面もある。ずっと融和路線をとってきて軍には相当不満が溜まっている。我々はしっかり守るべきものは守るんだという意味でミサイル発射をやったと言えるかもしれない。」と述べた。

一方、対外的にはアメリカと韓国は分けて考える必要がある、という。

アメリカに対しては「年末までに交渉を解決したいので、早くアメリカに再び交渉の場にでてきてほしいというアピール。交渉しないともっと挑発行為をやるぞというのもあるだろう。」とした。

対して韓国には「おせっかいな仲裁者ではなく、民族の当事者として我々の側に立てというメッセージがあったようにしっかり南北合意に基づいて支援しないともっと挑発するぞという見方もあるのでは。」と述べた。

 

・日米と韓国との関係

佐藤氏は北朝鮮に対し、「建前的にも実体的にも本来は日米韓でしっかり連携して対応すべき。ところが韓国が南北対話を最優先にしてアメリカとぎくしゃくし、日本とも徴用工の問題等含め関係が戦後最悪との見方もある。中国とロシアに対しても韓国内の米軍のTHAAD配備問題から上手くいっていない。」と述べ、日米韓の連携が重要としながらも実態は難しい、との考えを示した。

これまで2度行われた米朝会談では非核化と経済制裁が話し合われた。佐藤氏は「北朝鮮は、非核化のカードを段階的に切ることによって、効いている経済制裁を解除したいとの考えだろうが、彼らは非核化のための具体的をとっていない。そのため、非核化の交渉のテーブルに着く環境を作るまでは、日米が中心となって国際社会一体となって国連決議をもとに経済制裁を続けることが当面は大事だ。」との考えを強調した。

北朝鮮が今後もミサイルを撃ってくる可能性は十分ある。日本は軍事的な備えをどうしたらいいか、と聞くと、佐藤氏は「北朝鮮が核ミサイル廃棄のための具体的な行動を何も取っていない以上、ミサイル防衛で備えなければいけない。イージス艦の展開や、陸上配備型イージスの導入、また平和安全法制で議論されたような日米連携での警戒、いざという時、警戒監視から対処まで切れ目のない対応をとる、という体制をとる。」と答え、日米連携での対応の重要性を改めて強調した。

▲写真 ©Japan In-depth編集部

 

・中国の海洋進出

佐藤氏は、 中国は今、海洋進出を相当強化している、という。

「一帯一路という経済的な側面と安全保障を一体で広めている。ジブチに行ってきたが、まさに軍と一帯一路の連携が現実のものになっていた。新しくドラレ港を作り、コンテナクレーンも数多く存在し、その港の背後には荷を港から上げた時のコンテナヤードがあり、その脇には中国の海兵隊の要塞のような基地があった。」と述べ、遠くアフリカの地でも中国が経済外交の名のもとに、対象国に軍も使える港を築くなど、海外の軍事基地化を着実に進めている実態を明らかにした。

▲写真 中国がジブチに建設した新ドラレ港 撮影:佐藤正久議員

▲写真 新ドラレ港の脇の中国軍基地 撮影:佐藤正久議員

また、その新ドラレ港とエチオピアの首都アジスアベバへ、海抜0mから2,700mまでの標高差があるところに中国は鉄道を敷いている。まさにそういう経済的な面と軍事的な面が一体となる典型例がジブチだ。」と述べた。

▲写真 ジブチの中国軍基地とエチオピアを結ぶ鉄道駅 撮影:佐藤正久議員

また、中国は南シナ海でも西沙諸島・南沙諸島含めて軍事拠点化を進めている。スリランカのハンバントタ港、パキスタンのグアダル港あるいはオマーンのドゥクム港、ジブチと一帯に海のシルクロードを作ろうとしている

さらに佐藤氏は、南シナ海は日本にとって生命線であり、中国の脅威に警鐘を鳴らした。

「油の道(“oil sea line”)を考えると、日本に来る石油の9割が中国が埋め立てた(南沙諸島の)人工島の脇を日本のタンカーが通っていく。タンカーに日本人船員はほとんど乗っていない。仮に南シナ海で中国に脅された場合、日本のために油を運ぶ外国人船員はいない。」と述べ、日本のシーレーンの安全を確保することが重要だとの考えを示した。

実際、海上自衛隊の護衛艦「いずも」が、佐世保の陸上自衛隊水陸機動団約30人を乗せて3ヶ月間の南シナ海巡行訓練を行っており、まさに動的に抑止を図る形で動いている、と述べた。

または陸海空の自衛隊が南シナ海の周辺国にそれぞれ共同訓練でプレゼンスを示す、あるいは海上保安庁も巡視船の使い方を教える、海賊対策を教える、技術・能力構築支援という形で周辺国に海上法執行活動能力を上げている。

 

・インド太平洋島サミット

8月、TICAD7(アフリカ開発会議)が横浜で開催され、インド洋の島国の首脳陣が来日する。佐藤氏は「TICAD7に合わせて、安倍首相が参加した形でインド洋島サミットのようなものを行い、インド洋での航行の自由、安全保障と経済表裏一体となった構想の議論を進めていくべき」との考えを示した。

太平洋については去年8月、中国のH6爆撃機6機が沖縄と宮古島の間を抜けた後、通常、南に行くところ、方向を変えて北東に進んだ。これに対し、紀伊半島沖は島がなく飛行場が作れないので、自衛隊としても護衛艦いずものように甲板を改修し、そこからF35Bを離発着できるようにすることによって太平洋正面をしっかり警戒したり、レーダーも届かないのでE2D等を導入して、上空から指揮統制、警戒監視したりと対応していく必要性を佐藤氏は指摘した。

第一列島線とは沖縄フィリピン台湾のライン、第二列島線は伊豆諸島小笠原マリアナライン、第三列島線はアリューシャン、ハワイ、クック諸島、ニュージーランドといわれている。佐藤氏は、今アメリカは中国が進出を目論む、第三列島線を意識して活動している、という。

中国の経済外交に対し、日本はお金の面で太刀打ちできないのでは、と聞くと佐藤氏は、先日のパプアニューギニアでの海底ケーブルを巡る争いを例に挙げ、「太平洋の島々は経済的に弱く、気候変動上も非常に危機感を持っている国なので、本当に苦しくなるとどうしても中国に頼ってしまう。日本、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド4カ国が中心に経済的に連携し、中国の”借金の罠”に陥って結果として港を長期間租借するということがないように、太平洋諸国もしっかりみておかないと 、南シナ海のようなことが起きかねない。」と危機感を改めて示した。

また、「中国の一帯一路は元々陸のシルクロードだったのが、今や、北極圏ルートの“氷のシルクロード”。それだけではなく”空のシルクロード”、5Gなどの”デジタルシルクロード”など、すべての分野を抑えようとしている。」と警戒感を示した。

また、「米中貿易戦争は、表向きはアメリカの貿易赤字の解消が主な目的だが、本音は資本主義と共産主義の戦いという、二重構造が本質だ。中国の、国益に対する補助金、あるいは知的財産の盗用、強制的な技術移転などを正さないとアメリカのハイテク産業が中国に抜かれてしまう。」との米の危機感が背景にある、と述べた。アメリカが最初に(対中関税)500億ドル分かけたのも、ハイテク軍事転用可能のものが主対象だった。

 

・宇宙における資源獲得競争

佐藤氏は米中の対立は地球上にとどまらず、宇宙にまで及んでいると指摘した。先日、中国は月の裏側に探査機を着陸させた。月の裏側は通信がまっすぐに通じず、中継用の衛星を間におかないと裏側は誘導できない。非常に高度な技術を要する。

(月の裏側には)核燃料に転用可能なヘリウム3が存在するという。月の資源の獲得については条約が不十分なだけに、米中の資源獲得競争が宇宙にまで及んでいることを警戒すべきだと佐藤氏は述べた。

また、佐藤氏はハイテク安全保障の必要性を次のように述べた。

「防衛力のハイテク化もどんどん進化している。 弾道ミサイルと違って低く飛んで方向を自在に変えることのできる高速滑空弾とか、 AIドローンとかなどだ。米中貿易摩擦の本質は、まさにハイテク安全保障のせめぎ合いだ。」

日本国内はオリンピックが約一年後に控えているが、サイバーテロに脆弱だも言われている。佐藤氏は「やはりお金かかっても安全に勝るものはない。投資しないといけない 」と述べ、備えの必要性を強調した。

トップ写真:©Japan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年12月2日 東京都生まれ(60才)1979年慶応義塾大学経済学部卒業、日産自動車入社(海外輸出・事業企画)、1985年国際大学大学院国際関係学科修士課程卒、1992年フジテレビ入社報道局政経部記者、1998年ニューヨーク支局長、2002年ニュースジャパンキャスター、2003年経済部長、2006年解説委員、2009年BSフジ「プライムニュース」解説キャスター、2013年フジテレビ退社、危機管理コンサルティング会社設立。ウェブメディアJapan in-depth編集長就任。

安倍宏行

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