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.社会  投稿日:2019/9/5

まだ必要?都心の超高層ビル その2 東京都長期ビジョンを読み解く!その75


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

【まとめ】

・高層ビルは健康リスクの可能性あり。

・高層階は、流産経験者の割合が高くなる結果も。

・行政による高層ビルの健康影響への調査はなぜないのか?

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47744でお読み下さい。】

 

■ 超高層ビルは規制されてこなかった?

超高層ビルを増やしていく、その方向性については、国民的、都民的合意はされてはいない。「都市再生」という名の政治的決定がいつの間にかにされ、規制は緩和されてきた。それによって、結果として、都市は上に高く伸びていく。

土地を保有する方々のロビイングによってか、そうではないかはよく知らないが、なし崩し的に開発が許可されてきた(ように見える)といっても過言ではない。土地を保有する方々にとっては、それはビジネス的にはおいしい話だろう。土地の上に伸びる空の一部の空間を転売できるのだから。土地を保有しても、住む地域の規制によって100階のビルを建てられない人がほとんどだ。

しかし、超高層ビルが増えると都市の景観が変化を余儀なくされ、風の動きなども変わってしまう。

高層ビルにいると、人はどうなるのか。会社員時代神谷町の高層ビルにて仕事をし、一定時間いることで体調を崩すこともあった私が公平に考えていきたい。

 

■ 住民にとっての影響は?

もし自分が若かったら、超高層マンションは、とっても魅力的だろう。地域を見渡せる眺望、そこから感じられる開放感など。朝焼けや夕日を堪能できるなんて素晴らしいものに感じることだろう。たまに、遠くの山々の連なり、雪景色の富士山、もしかしたら東京湾の花火なども見られるかもしれない。

眼下に広がる街並みを見ると、地図とは違ったリアルな街がそこにはある。人々が行きかう姿や街並みを見て、頑張った自分に酔えるのかもしれない。また、超高層マンションは都心近くにあるので、仕事場への近さという意味でも魅力的だ。一部の人によっては、高額な買い物をできるという見栄みたいなもの、経済的ステータスを感じられるヒトも中にはいるのかもしれない。隣がゴミ屋敷であったり、絡んでくる面倒な住民もいないことも確か。ある程度、同質的な住民も多いだろうし、セキュリティは安心、そのリスクは低い

▲写真 高層階からの眺望(筆者撮影)

しかし、健康への影響はどうか。実際、プラスもマイナスもありそう。開放感のある眺望やセキュリティの安心による、心の安定もあるだろう。眺望がもたらす心理的開放感などで健康面で一定のプラスが考えられる。しかし、マイナスもありそうだ。前提として、よく言われているのが、

 ・高層階は気圧が低い

 ・高層階は常に微動している状態

ということである。なぜなら、免震構造は地震の力を分散するため、あえて揺れやすく造るので、高層階になればなるほど、常に揺れている」そうだ。頭が痛くなる人もいるし、元気な人もいる。体が慣れるまでは生理不順になるとの経験談もあるが、そうでない人もいる。

 

■ 健康には影響ないの?

実際、研究結果を見ていこう。厚生省心身障害研究報告書(平成5年度)の「居住環境の妊婦に及ぼす健康影響について」によると、流産経験者の割合が高層階になると高くなることが明らかになっている。

しかし、それ以外は明確な論文は見当たらない。ベルギーでは高層ビルに住むことは健康に悪いという考え方に反論している論文もある。

高層階に住む以外の他の要因、つまり、収入だとか、生活習慣だとか、人間関係や仕事の有無だとか、幸福度などの要因もあるので、超高層ビルでの生活がもたらす影響はよくわからないというのがほんとのところか。

 

■ 救急時には間に合わない?

ただ、カナダ医師会ジャーナルに掲載された研究では、高層階での生活は、もし心停止になった場合、生き残る可能性が低くなることが明らかになっている。7842の事例においては、高層階よりも低層階のほうが生存率が高いこと(2階以下で4.2%、3階以上で2.6%、16階より上では1%を下回る)、25階以上に生存者はいないそうだ。

救急がエレベーターでの対応に手間がとられること、例えば、高層階に救急チームがエレベーターで上がるのに時間がかかる、病人をストレッチャーに乗せるのに手間取る、エレベーターで下がるのに時間がかかる、色々手間が掛かりそうだと推測できるし、その意味で当然かもしれない。

▲写真 六本木ヒルズ住居棟(筆者撮影)

 

■ 行政は健康に影響があるかは明らかにしないのか?

高層階に人が住むようになり出したのはごく最近のこと。まだまだ研究も少ないようだ。そもそも影響を分析する研究を設計するのが難しい

超高層ビルにはそれなりに魅力も多いし、もし、健康に影響があったとしても人のそれぞれの価値認識によるだろうし、その判断は自己責任である。また、デベロッパー的にも収益的にも魅力がある。

超高層ビルの建設がとまらないわけだ。

それがいいのか悪いのかは私にもわからない。しかし、こうした建設への許認可を行う側の行政が、健康についての調査を行っていないことにはやはり疑問を感じる。

超高層ビルと都市計画について次回は考えていく。

トップ写真:虎ノ門ヒルズ(筆者撮影)


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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