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.経済  投稿日:2020/1/1

ゴーン被告の情報戦に備えよ


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・カルロス・ゴーン被告、年末にレバノンに違法出国。

・ゴーン被告、日本の司法制度の不当性に対する批判強める可能性。

・日本は、ゴーン被告の日本司法制度批判に立ち向かえ。

 

カルロス・ゴーン被告が海外逃亡した。唖然とした人も多かろう。

なんでそんなことが?2つの意味で驚きだ。

一つは、日本は、保釈中の被告がそんなに簡単に国外逃亡できるんだ、と言う驚き。もう一つは、巨大グローバル企業の元トップが、そんなことをするのか、と言う驚きだ。

一つ目の疑問は色々な報道はあるが、まだ確定的な情報は出ていないので確たることはいえない。が、違法に出国したのなら、論外といわざるをえない。

二つ目の疑問だが、ゴーン被告はなぜ日本から逃げたのか?「有罪になるのが怖かったから」につきるだろう。無罪を主張していたものの、日本の裁判では到底勝てない、と悟ったのだろうか。だとしても、普通は裁判が始まる前に逃走しないと思うが。

元日産マンとして年末に私は、「尾を引くゴーン・ショック【2019年回顧・日産問題】」という原稿を書いた。その中で、ゴーン被告の過去の功績として、「EV(電気自動車)時代の到来を見込んで、EVの量産化に先鞭をつけ、三菱自動車工業も加えた3社のアライアンスを築き上げたのは、ゴーンの功績だろう。評価してしかるべきだ。」と書いた。

▲写真 ノルウェーにてリーフの発表会 2013年 出典:flickr:Norsk Elbilforening

もちろん、その後の日産・ルノー・三菱自アライアンスの低迷を見れば、諸手を挙げて彼の業績を褒め称えることは出来ないが、一定の評価はするべきだと思ったからだ。

今回のゴーン被告の逮捕も、社内抗争の側面をまといつつ、かつ司法取引もあってのことなので、一般の日本人からしてみれば、どこまでゴーン被告が違法行為をしていたのだろう、と、ある意味公平な立場で見ていた人も少なからずいたはずだ。そうした中での逃亡劇だ。ゴーン被告はそうした人々の気持ちを裏切ったといわれても仕方がない。

裁判が始まっていない現時点で、ゴーン被告は、会社を私物化していたのでは無いか、との疑惑を払拭できていない。だからこそ、裁判でそれが明らかになるはずだった。それなのに、その当事者であるゴーン被告が遠く、中東のレバノンに逃亡したとなっては、真相はもう二度と明らかにならない可能性がある。

今後ゴーン氏は海外メディアを使って、日本の司法制度や日産自動車の旧経営陣に対する批判を展開するだろう。既にそれを匂わせている。海外メディアは喜んで「日本異質論」を発信するだろう。もしそうなったら、日本のメディアはそれに対し、堂々と反論をすべきだ。

原点は、「違法なことをしていないのならなぜ日本から逃亡するのか?」である。言い換えれば、「裁判に勝てないと判断したから逃亡したのか、すなわち、やましいことがあるのか?」、である。

ゴーン被告を経営者として一度は評価したことがある身として、今回の逃亡劇は残念至極である。繰り返しになるが、日本の司法当局、ゴーン被告の弁護士、そしてメディアは、今回ゴーン被告の取った行動が、法治国家において仕事をするグローバルビジネスパーソンとして、いかにあるまじき行動なのか、を正々堂々と世界に発信すべきである。

情報戦で負けてはならない。

トップ写真:本牧ふ頭にて カルロス・ゴーン前日産自動車CEO Photo by BsBsBs


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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