日本米を売り込め!「JAPANフェス」
柏原雅弘(ニューヨーク在住フリービデオグラファー)
【まとめ】
・7月16日、マンハッタンの大通りで「JAPANフェス」と呼ばれる日本の祭りが行われた。
・「JAPANフェス」では、「日本のコメ」を売り込む「Gohan Fes.」というイベントを企画、たいへんな盛り上がりを見せた。
・円安を背景に、日本のコメは絶好の売り込み機会であるのは間違いない。
コロナ禍などもう終わってしまったかのような普通の夏をニューヨークは迎えている。数々のイベントが例年通り行われ、夏はコロナ禍以前のような賑わいを取り戻している。
そんな中、7月16日、マンハッタンの大通りで「JAPANフェス」と呼ばれる日本の祭りが行われた。
日本ではほとんど知られていないが、この祭り、開催する度に1万〜2万人以上のニューヨーカーを動員する、日本をテーマとした、今や有名な夏のイベントなのだ。
このイベント、2011年にマンハッタンの下町の街角の小さな祭りからスタートし、今日までの開催回数は60回以上を数える。
年間総動員数15万人、という大イベントである。日本をテーマにしたイベントとしては世界最大規模だ。コロナ禍の2020年こそ予定されていた12回の開催、すべて中止に追い込まれたものの、今年は例年通りの開催を見込んでおり、先日のイベントも大変な盛況であった。
少し前までこういう関係のイベントに集まるのは明らかに「日本好き」「日本オタク」の人も多く、コスプレや、日本をテーマにした衣装を着た人が多く見受けられた印象だが、以前と比べ、今年は大変「一般的」なイベントに定着した感がある。最初の開催から10年以上を経て、地元の夏の風物詩になった、と言っても良いのかもしれない。
▲写真 屋台の日本食を楽しむ来場者たち ⓒ柏原雅弘
日本のお祭りと同じく、たこ焼き、お好み焼き、焼きそばなどの屋台が並ぶ。その他にも浴衣を売るお店とか、ニューヨーカーにアピールすべく開発したメニューなどを出す屋台も多く、大変好評だ。
どの屋台も人気が凄まじく、長蛇の列である。
日本のお祭りでは考えられないだろうが、たこ焼き一つ買うのに炎天下で1時間、お好み焼きを買うのに30分以上、という具合である。長蛇の列を見て、それらに並ぶのを断念したお客さんが他の屋台の列にならび、同じ長蛇の列がまた再現される。来た以上、何かしらは食べて帰りたい、という来場者の執念は凄まじく、現場では前に進めない混雑が蓄積されていくが、炎天下にもかかわらず、並んでいる人たちはどこ吹く風、といった感じだ。
今回の「祭り」は在ニューヨーク日本総領事館とJETRO(日本貿易振興機構)が共催、という形でこのストリートフェアに加わり、「日本のコメ」を売り込む「Gohan Fes.」というイベントを企画、たいへんな盛り上がりを見せた。
「カリフォルニア米」と呼ばれる、アメリカ国内で消費される日本品種のコメに比べ「高級品」とされて一般には浸透したとは言い難い、日本から輸入の「日本のコメ」が、干ばつでカリフォルニア米が不作となっている今、競争力を持ってきているという。それに加え、ここのところの円安が更に後押しをしている形だ。この機会に、日本産のコメの品質の高さ、認知度をあげようと関係者の鼻息は荒い。
在ニューヨーク日本総領事の森美樹夫総領事(大使)は語る。
▲写真 森美樹夫在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使 ⓒ柏原雅弘
「日本のコメを始めとする様々な農産品の海外への輸出にとても力を入れて、1兆円規模まで輸出を拡大してきましたが、2030年までに5兆円規模まで輸出額を伸ばして行きたい。今後、このような機会を通して日本のカルチャーも含めた日本を理解・評価してもらえるようなイベントを更に企画していきたいと思います」
この「日本の祭り」イベントを主催するイベント会社「jforword Inc.」のドラゴン・ヤマモト社長は「現地の人にどれだけ日本を知ってもらうかということにずっと力を入れてきたので、日本ではほとんど知られていないイベントだと思います。ずっと年に12回イベントを開催して来て、2020年にはコロナで一回も開催できませんでした。それでも2021年に3回だけ開催したら通常の倍くらいのお客さんが押し寄せた。それだけ、求められているということを強く感じ、今年更に開催できると言うことでとてもうれしく思いました」という。
▲写真 Dragon Yamamoto / jforword社長 ⓒ柏原雅弘
今回は日本のコメを売り込むということで、餅つき大会、おにぎり教室が企画され、いずれも大盛況であった。
▲写真 写真)「Gohan Fes.」というイベントで盛り上がりを見せる会場 ⓒ柏原雅弘
円安を背景に、日本のコメは絶好の売り込み機会であるのは間違いない。日本のコメがアメリカ産の米で作る日本食と違い、どう個性的であるか、それをどう差別化し、売り込むことが出来るかが今後の課題であると感じる。
(当日の模様は動画を御覧ください)
トップ写真:7月16日の「Japan Fes./ Gohan Fes.」の様子 ⓒ柏原雅弘
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この記事を書いた人
柏原雅弘ニューヨーク在住フリービデオグラファー
1962年東京生まれ。業務映画制作会社撮影部勤務の後、1989年渡米。日系プロダクション勤務後、1997年に独立。以降フリー。在京各局のバラエティー番組の撮影からスポーツの中継、ニュース、ドキュメンタリーの撮影をこなす。小学生の男児と2歳の女児がいる。