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.国際  投稿日:2023/6/1

アメリカはいま――内政と外交・ワシントン最新報告 その7 バイデン大統領の評価は?


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・トランプ氏の起訴で同情票が集まり、選挙に勝利するとの予想も。

・バイデン大統領の年齢もあり民主党には新たに大統領候補を選ぼうとの主張もある。

・トランプ氏は不法入国者は入れないと宣言し、有権者の幅広い支持を得ている。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルが社説で、このトランプ前大統領の起訴は民主党のかなり遠大な計画だろうと、論評しました。民主党側の少なくとも一部は起訴処分によってトランプ氏の人気を上げて、共和党の指名候補にさせたいのだ、それが民主党の思惑、特にバイデン大統領の願望なのだ、ということをはっきり書いているのです。このへんになるともう科学的な証明はまったくできません。

ただ、起訴したことが、少なくとも当面トランプ氏を有利にしてしまうという、このへんのコンセンサスは民主党側にもある。電気自動車で有名なイーロン・マスクという人がいます。この人は左派のリベラルの動きには結構反発していますが、でもトランプ氏べったりでもないのです。この人が、つい最近、トランプ氏が起訴されたことを踏まえて、これで2024年の大統領選挙は共和党の指名争いだけでなく、本番の選挙ではトランプ氏が地滑り(ランドスライド)的な勝利をおさめる、と予測を明らかにしたのです。

これも科学的な根拠があるわけではないけれども、一般の同情票とか反民主党票がトランプに集まってトランプの人気を上げるのだという。ここまで極端な見方もあるわけです。

日本のメディアではほとんどこういう見方は出てきていません。私は、ワシントンの状況を実際に見て帰ってくると、このあたりはぜひお伝えしたいと思うのです。私なりにそういう記事も書いたりしています。

■ バイデン大統領はいま 

バイデン大統領はどうなのか――。彼はちょうど丸2年以上、4年の任期の半分以上を過ぎています。支持率はどうも芳しくない。歴代の大統領でも、就任して2年後の段階での40%を切ってしまう支持率というのは記録的に低く、どうも人気が上がらないわけです。だけれども、民主党側がバイデンさんという現職を支えて盛り立てていこうという、この結束というか、動きというのはある程度、存在します。

その一方、民主党のなかでは、やはり、バイデンさんがまた出るのでは大変だな、という声も強いのが現実です。バイデンさん自身は、2024年の大統領選挙に出馬したいと思っていることはまず間違いない。彼をサポートしてきている側近も、とにかくバイデンをもう一度立たせたいと願っています。

彼はいま80才です。あと2年たつと82才で、次期大統領には82才から就任することになります。ただしすでに1期やっていますから、あと2期8年はできません。この点でも民主党側には新たに2期8年を務められる大統領候補を選ぼうという主張もあります。

このあたりを総合すると、やはりバイデンさんに対する一般のなんとなくさめた感じがあるといえます。これは幾つか理由があります。政策面で、例えば国内問題をみると、違法入国者が記録的に増えている。バイデン政権、民主党リベラル派の政策というのは人道主義、寛容である、貧しい人、弱い人たちをとにかく救わなければいけないというようなリベラル派の思考の流れがあります。

バイデン政権は国境を超えて入ってこようとする人たちをほとんど取り締まりをしなかったのです。これは、トランプ前大統領がメキシコの壁をつくって、入れないといったのとは対照的でした。

そうでなくても、本来、トランプ政権の前の時点でもアメリカ国内には合計1,100万ぐらいの違法滞在外国人が存在してきました。そこにプラスしてなお中南米諸国から違法にどんどん入ってくる。トランプ前大統領はもうこれ以上、不法入国者は入れないと宣言して、それなりに有権者のかなりの幅広い層の支持を得たのです。

(その8につづく。その1その2その3その4その5その6)

**この記事は鉄鋼関連企業の関係者の集い「アイアン・クラブ」(日本橋・茅場町の鉄鋼会館内所在)の総会でこの4月中旬に古森義久氏が「アメリカの内政、対中政策――ワシントン最新報告」というタイトルで講演した内容の紹介です。

トップ写真:トランプタワーに到着するドナルド・トランプ元大統領(2023年5月29日 米国・ニューヨーク)出典:Photo by James Devaney/GC Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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