[石川和男]<まだまだ多い家族・親族による介護>「介護はプロ任せ」が当たり前の風潮を作ることが法整備以上に困難
石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長)
厚生労働省の調査によると、要介護者等(介護保険法の要支援又は要介護と認定された者のうち、在宅の者)が家族・親族等や訪問介護事業者から受けている16項目の介護内容を調査したところ、図表のような結果となった。
介護者の組合せについて、「事業者のみ」の割合が多いのは「入浴介助」(64.1%)、「洗髪」(63.5%)、「身体の清拭」46.4%など。他方で、「主な家族等介護者のみ」による介護の割合が多いのは「入浴介助」・「洗髪」・「身体の清拭」以外の全項目。 「事業者と家族等介護者」による介護の割合が多いのは「排泄介助」(20.6%)となっている。
介護保険制度の究極目的は、“家族・親族等による介護”から『介護事業者による介護』への全面移行であろう。自分の家族・親族は自分で介護するのが当然だとの考えで、介護事業者による介護を望まない人は確かにいる。
そういう人はさておき、やはり大方は、社会全体で介護サービスを行う、即ち国民のコスト負担を元手に介護事業者に介護を委ねるというのが、今後ますます必要になってくるはずだ。
少子高齢社会における労働力確保の観点からも、必然的にそうなる。資料に掲げられた16項目はもちろんのこと、日々の介護の全てを『介護事業者による介護』に移行できる環境作りが必要だ。そのためには、費用対効果の極力高い介護保険制度に適宜改革していくことが不可欠である。
『介護はプロ任せ』を当たり前の風潮にしていくべきだ。風潮づくりは、法律制定や予算編成よりも難しい。
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