自民党政治に決別できるか 衆院選始まる
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・10月15日、衆院選が公示され、18日間の選挙戦が始まった。
・マスコミに登場した石破首相、「~ねばならない」連発。
・具体的な政策が見えず有権者に戸惑いも。野党候補乱立で、自公過半数割れはハードル高し。
「裏金隠し解散」。立憲民主党の野田佳彦代表は語気を強める。
総裁になった途端に手のひら返しで速攻衆議院解散を決めた石破首相。その時点で国民の信頼は地に落ちた。
不記載があった前議員ら12人を非公認とし、34人を比例代表との重複立候補を認めない措置を決めた自民党。自浄作用を発揮したかに見えるが、石破首相は、彼らが当選したら追加公認する可能性を示唆している。国民にとっては、わけのわからない論理だろう。
マスコミで各党党首のインタビューが行われたが、石破氏の言葉は不明瞭で質問に正面から答えない。「~ねばならない」の連発は、無責任に聞こえる。政策活動費、旧文書通費、憲法改正、日本版NATO、地位協定、何を聞いても、「きちんとした結論を出していかねばならない」「必要な対応をしていかねばならない」、「きちんとご納得のいただけるような形にしなければならない」などともっともらしいことを言うが、自分が「~をする」とは決して言わないのだ。
改革をやらねばならないことは誰もがわかっている。国民は、それぞれの政治課題について、いついつまでにどうしたいのか、そのために何をするのかを聞いているのであって、「べき論」を聞きたいのではない。
石破構文は曖昧模糊とした「ねばねば構文」だ。
そして石破首相が、唯一明快に口にしているのは、補正予算だ。15日の第一声で、「国費13兆円、事業総額37兆円が昨年の補正予算だった。それを上回る大きな補正予算を国民に問い、国会の審議をたまわり成立させたい」と述べた。
財政規律派ではなかったのか?これまた変節で、ここまでくると、何を信じたらいいのかわからなくなる。もはや「なんでもあり内閣」になる可能性大だ。国民に信を問うのが選挙なら、何を訴えて信を問おうというのか。
そして野党だ。結局、共闘ができず、候補者が乱立する。野党同士が票を食い合い、結局与党候補を利することになりかねない。野党が目指す「与党過半数割れ」はかなりハードルが高い。
わずか12日間の異例の「超短期決戦」選挙。どっちらけの有権者が投票所に足を運ばないのではと心配になってくる。しらけるのは勝手だが、今の政治に対して意思表示だけはしっかりしたい。
トップ写真:街頭で第一声を挙げる石破茂首相(2024年10月15日福島県いわき市)出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
あわせて読みたい
この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。