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.政治  投稿日:2025/2/2

「このままではデフレに逆戻りしかねない」国民民主党古川元久代表代行


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・国民民主党古川代表代行は、「103万円の壁」見直し協議が進まない背景として、政府与党の経済認識が去年から後退したことがある、との考えを示した。

・自民党宮沢税調会長は、政治的判断が大事なので幹事長に判断いただく、と述べた。

・石破首相は123万円以上の引き上げに消極的で、自公国の協議の行方は不透明になってきた。

 

年を越して「103万円の壁」見直しの議論が進まない。1月29日に行なわれた国民民主党古川元久代表代行は定例会見で、この問題についての対応を問われると、協議が進まない背景として、政府与党の経済認識が去年から後退したとの考えを示した。

そのうえで古川氏は、「足元で見ると、物価上昇を超える賃金アップは実現していないので、結果的に実質賃金も下がっている状況が続いている」として、このままだと「デフレに逆戻りしかねない」と述べた。

また日銀の利上げについて、「(利上げによる)住宅ローンや企業の借り入れ金利上昇は、個人や企業の足を引っ張るリスクもある。今回の利上げは、むしろマイナスの影響の方が大きいのではないか」との認識を示した。

そうしたなか、自民党の宮沢洋一税調会長は同じ29日、「(国民民主党との協議を)いつから開始して、どういうスケジュールでやっていくかということについては、かなり政策的というよりは政治的な判断が大事なので、その辺は幹事長にご判断をいただく」と述べた。

税調会長レベルでの協議が進まないのなら、再度3党の幹事長会談を行い、今後の対応を決める必要がある。しかし、石破総理は、すでに昨年末決定した与党税制大綱で123万円に引き上げていることから、更なる引き上げに消極的な発言を繰り返している。今後の協議の行方は不透明だ。

以下、会見抜粋:

古川: 実は私はこの4演説や2日間の対応質問を聞いて、政府与党の今の日本が置かれている経済認識が、昨年経済対策をめぐって三党協議をやって合意した経済認識から後退してしまったのではないかと思っているんです。

それはどういうことかというと、私たちがなぜ今手取りを増やすことが必要かといったら、今日本経済は再びデフレに逆戻りするか、あるいは物価上昇を超える賃金アップ、それが実現してそれが持続的に進んでいくという好循環に入っていくかという分岐点であると。足元で見ると、物価上昇を超える賃金アップは実現していないので、結果的に実質賃金も下がっていて、こういう状況が続いているともうデフレに逆戻りしかねないと。

だから、今度の春闘でも頑張って去年を上回るような賃上げを実現してもらいたいと思っていますし、それが大企業だけじゃなくて、中小零細企業も含めて実現していってもらいたいと思っていますが、それには時間がかかりますし、民間企業の給料を政治の力で無理やり上げるわけにはいけません。

じゃあ、今この減っている手取りを増やすことができる政策は何かということで、減税であったり、電気代、ガス代、ガソリン代という生活に欠かせないコストを下げるということで私たち手取りを増やす経済政策を今やらなきゃいけないということを言ってるんですね。

だから、そこのところの経済の認識についてもともと政府・与党は、デフレには逆戻りしなくてもう好循環に入ってるから、その流れを押すといいんだっていう発想だったのを、そうじゃないでしょっていうことで、この前、去年出た景気対策の中には、デフレに逆戻りするかもしれない分岐点にあるという記述を入れたんですね。

ところが、その後12月に与党がまとめた与党の税制改正大綱の中では、また戻っちゃって、そういうデフレに逆戻りするかもしれない分岐点にあるということもなくなり、政府の4演説あるいは代理質問等の与党の議員のを聞いてても、経済はむしろもういい方向に入ってきてるんで、このまま滑ればいいんだっていう、そういう言い方になってるんですね。だから、そもそもこの経済、今の国民生活が置かれている日本経済が置かれている状況の認識がずれてしまってる。

結局何で3年間で税収が上昇したのかというと、デフレからインフレになって名目GDPが上がったから税収も増えてるんです。我々はその増えた分を取り過ぎてるから、それを国民の皆さん方にお返ししましょうということなので、今後のことを考えると、デフレに戻ったら税収減るわけですよ。これから本当に好循環になって名目GDPも伸びていけば当然それによって税収も増えるわけですから、やっぱり中長期で日本経済の状況とか、財源とかも考えるべきだと思います。

▲写真 国民民主党古川元久代表代行(2024年1月29日)ⒸJapan In-depth編集部

安倍: そこは国民もわかってると思うし、そういう中での利上げということでこれどうなるんだっていう不安も大きいと思います。そういう中で今のままだと硬着状態になっていて、先に進めないということですよね。どうしたらいいのかともう一回幹事長が集まって議論するのか、どうしたらいいのか。

古川: 我々としてはそういうことはずっと言ってきて、一回はそういう認識に、今私が申し上げたような分岐点でデフレに逆戻りしかねないということになったら、普通は今はそんな財源じゃなくてやる話だし、とにかく足元で見れば(税を)取り過ぎているのですから、それをお返しするということであればそれはできるんじゃないかと思います。

利上げの目的が何だったのか、円安を是正すると言うがほとんど円高には動いていないわけです。一方で、これから住宅ローンや、あるいは企業の借り入れ金利上昇は、それこそ個人や企業の足を引っ張るリスクもある。今回の利上げは、むしろマイナスの影響の方が大きいのではないかと私は考えています。個人の住宅ローンの支払いが増えればその分だけ手取りが減るわけですし、企業の借入金の利払い費が増えればその分だけ儲けが減りますから、賃上げの原資が減ることにもなって、まさに前向きな動きに水を差すことにつながりかねないのではないかという懸念は持っています。

トップ写真:国民民主党古川元久代表代行(2024年1月29日)ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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