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.社会  投稿日:2014/9/13

[Ulala]【女性非正規社員多すぎの日本】


ulala(ライター・ブロガー)

執筆記事Twitter | Website

 

経済協力開発機構(OECD)が2014年9月3日に出した結果によると、2013年の日本の25~54歳の女性の就業率は、70.8%。トップはスウェーデンの82.7%で、加盟国の平均は66.5%だそうだ。毎年、日本女性の就業率は上がり続けており、まずまずのように見える。

しかしながら、フランスの働く女性と比べると「何かが違う感」が拭えないのはなぜなのだろうか?フランスでは近年になって急激に働く女性が増え、現在では女性が管理職に就く事も珍しくない。しかし何よりも「仕事に生きがいと自信を持って働いている女性」が多く、そんな女性達を見ていると日本との違いを考えてしまう。

そこでいろいろ調べてみると日本は「女性の非正規社員が多い」事に驚かされる。日本女性の就業者のほとんどは、非正規労働者なのだ。正社員の割合を総務省統計局のデータベースで見てみると、男性の78.9%なのに対し、女性の正社員は42.3%だと言う。日本の女性が非正規社員になるプロセスは「出産・子育て」も大きく関係してくるだろう。
日本では、特に一度職を離脱すれば正規社員としての再就職が難しくなる。しかし待機児童の問題や、正社員の身分を維持したままでのフルタイムとパートタイムの相互転換はほとんど行われていないこともあり、長時間取られる仕事を続けることが難しく「出産・子育て」のために退職するか、時間に融通がつく非正規社員へ移行することが多くなる。

またもともとそういうサイクルがあることが分かっているので、家庭内の収入はやはり男性を中心となり、女性は自分の仕事よりも家事や育児を行って男性のサポートをする方が効率がいいと結論が出される。そうすると尚更、家事や育児の負担は女性に偏り、就職先が見つかったとしても労働時間の長い正社員では両立が難しいため、結局、短時間労働の非正規雇用に甘んじることになるのだ。

また単に労働コストの安い労働者として雇用される傾向にあるパートタイムなどでは、キャリアを積み上げることは難しく管理職にはつけない。その上、正社員と非正規社員の賃金の差は、他の国と比べてもかなり大きい。その結果、日本の女性は学歴に見合わない仕事に従事する傾向が高くなる上、男性との賃金格差が更に広がっていく。しかしフランスでは、日本のようなパートタイムにあたる非正規労働はなく、全員が正規社員としての採用になる。

フランスでも日本と同様に家庭における女性の役割は大きく、女性の方が男性に比べて子育てや家事など家庭に多くの時間を費やしている。そのため時間に融通がきく仕事や、短い時間の仕事を選ぶフランス人女性も実は多い。しかし、働く時間は短いが、正規社員として働いていていることには変わりなく、キャリアになっている。

その結果、長期のキャリアとスキルを持つことができ、伴侶の仕事の関係で自分の仕事を辞めなくてはいけない場合でも経験があるため再就職もしやすく、管理職への道も開けるのだ。このことがフランス人女性が生き生きとバリバリ働いているという印象をもたらすのではないだろうか?

OECD  PIAAC(注1)によると、日本女性の読解力、数的思考力は世界トップだ。それなのに日本の女性達は能力が発揮されないまま非正規社員として単純作業に時間を費やしている。女性のサイクルに合わせた多様な働き方で正社員として活躍できる職場が多ければ、もっと意欲や目標を持って働くことができるのではないだろうか?もちろん、仕方なく非正規社員として働いている男性にも同じことが言えるだろう。

実は、全員が正規社員と言う雇用は、IKEA、スターバックス、ユニクロなどをはじめ、日本でも取り入れられはじめている。非正規社員を雇うことは一見、人件費がかからないようにも思えるが、一人当たりの生産性は決して高くない。しかし正社員として責任感やコスト意識を求めることで、みずから考えて積極的に動くようになり、業績がアップするなど会社側にもメリットがあると言うのだ。

「正社員でも、多様な働き方が選択できる」と言う事は女性の働くメリットを高め、意欲を向上させるだけではない。少子高齢化で今後労働力不足が懸念される中、こうした人事政策を打ち出している会社が優位になる時代がもうそこまできているかもしれない。

 


注1)PIAAC(国際成人力調査):Programme for the International Assessment of Adult Competencies

OECD加盟国等24か国・地域(日、米、英、仏、独、韓、豪、加、フィンランド等 )の16歳~65歳までの男女個人を対象として行われる「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」及び調査対象者の背景(年齢、性別、学歴、職歴など)についての調査。

 

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