朝韓中が画策「米朝終戦宣言」(上)
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・韓国、3回目の「文・金会談」を画策。
・支持率低下で苦しむ文政権の焦りが背景。
・次の「南北首脳会談」で核兵器申告書の段階的提出と米朝終戦宣言を取引する陰謀が謀議されるだろう。
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■ トランプを誘い出す鄭義溶特使の帰還報告
3回目の「文・金会談」を準備するために9月5日に韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長や国家情報院の徐薫(ソ・フン)院長ら5人からなる3月と同じメンバーの特使団が、午前7時過ぎに北朝鮮に派遣された。文大統領の親書を金正恩に渡し、面談の後同日午後10時前に韓国に戻った。
▲写真 鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長と金正恩総書記(2018年3月5日)出典:Blue House(Republic of Korea)
▲写真 徐薰(ソ・フン)院長 出典:Wikiwand
■ 北朝鮮の思惑に沿った鄭義溶の報告
6日午前11時40分から記者会見を行ったが、鄭義溶氏はまたもや金正恩の代弁人の役割を果たした。報告では韓米同盟の立場から北朝鮮の非核化を強く要求して帰ってくるのではなく「金委員長の非核化に対する意思は確固だ」などと北朝鮮を代弁する報告に終始した。そして北朝鮮に対する経済支援と米朝協議を促進させる協議(トランプ大統領を欺瞞する新たなプランの協議)を行うための「南北首脳会談」を平壌で9月18日から2泊3日の予定で行うと発表した。
この期間設定には、支持率低下で苦しむ文政権が、秋夕(チュソク、収穫祭を兼ねた墓参り)休暇(9月22~26日)直前に「首脳会談ショー」を組むことで、国民の関心をひきつけ、秋夕の話題とし支持率を一気に上昇させて、対北朝鮮支援策を進めようとする狙いがある。
■ 鄭義溶が代弁した金正恩の主張
鄭義溶氏が代弁した金正恩委員長の主張内容はおおよそ次のようなものである。
・朝鮮半島に核兵器・核脅威ない非核化意思を確約
・非核化の実現向け北と南が積極的に努力
・北南首脳会談への文大統領の骨折りに感謝
・米国とも緊密協力と意思表明
・核実験は永久に不可能、豊渓里の坑道は3分の2崩落
・東倉里実験場の閉鎖、長距離ミサイル実験の完全中止を意味
・トランプ大統領の任期中に非核化実現を希望
・トランプ大統領を信頼している
■ またも「金正恩に感謝」を表したトランプ大統領
現在米国は、北朝鮮非核化の第一歩は「北朝鮮が核施設申告リストを出すことしているが、金正恩委員長は「豊渓里爆破で既に非核化の初期段階の誠意を見せた」とした。米朝間の認識の差は縮まらないままである。
しかし特使団長鄭義溶の「トランプ大統領の任期中に非核化実現を希望する」「トランプ大統領を信頼している」との「報告」(トランプ氏が直接に聞いたわけではない)をそのまま信用してか、トランプ大統領は、ツイッターで「金正恩委員長に感謝する」「われわれは共に(非核化を)成し遂げるだろう」と喜びを表した。
ポンペオ長官訪朝を中止した「金英哲書簡」を忘れたかのようなトランプ氏の喜びようから見て、圧力に向かい始めたトランプ政権内の軸足を再び変更し、金・文の第3回「南北会談ショー」のロードマップに反応する可能性も出てきた。
▲写真 金英哲氏 出典:United State Department of State
18日からの「南北首脳会談」では、中間選挙を前に窮地に陥っているトランプ大統領の足元を見透かして、「核兵器の申告書の段階的提出(サラミ戦術)と米朝終戦宣言を取引する陰謀」が謀議され、それを成功させた後の制裁解除と「大々的対北朝鮮支援」について協議されると思われる。
(中に続く)。
トップ画像:南北首脳会談(2018年4月27日)出典 韓国大統領府
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この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長
1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統