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.政治  投稿日:2018/11/26

「都ファ、都民の期待とズレ」音喜多都議 都政改革を考える その1


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

【まとめ】

・音喜多都議、「都ファの公約達成度は都民の実感値と乖離。」

・「都ファの失敗は、変え方を都議会の古いフォーマットに則ってやろうとしたこと。」

・「都民の期待との決定的なずれに気づいていない。」などと指摘。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42979でお読みください。】

 

都民の「実感値」とは?それが期待以下の場合、「寒さ」という実感は、心までも冷たくする。肌寒くなってきたこの季節に、物理的に「寒さ」を実感する都民も多いだろう。他方、小池都知事が、都議会自民党との関係修復を図っているとの報道がされている。

なんだか底知れぬ「冷たさ」を感じるのは筆者だけだろうか。「物言えば唇寒し秋の風」かもしれないが、なんとなく季節が「冬」にはいったように思える都政について考えてみたい。

以前もここで書いたが、都民ファーストの会は公約の達成状況の公開をした。木下ふみこ都議会議員に確認して、その内容についておおむね好評的に見ていたと思う。

一方で、小池都知事からは公約の進行管理・PDCAをまわしている状況、公約がどう事業に反映されているのかの「十分な」説明がされたとは個人的に思っていない。小池都知事に公約の重要性を果たすこと、できなくても説明責任を果たすことを期待した都民も多かったろうと思うので、筆者だけの疑問ではあるまい。

そこで、音喜多駿都議会議員に聞いた。

▲写真 音喜多駿都議会議員 撮影:筆者

 

■ 公約達成度公表の意味

西村: 都民ファーストの会公約達成度についてはどう考えていますか?

音喜多議員: 公約達成度を公開しようとしたところは評価しています。内容は極めて不十分だと思いますが、姿勢はよいです。よくしようとしています。これは今まではなかったことです。しかし、「実現」、「一部実現」の基準が甘すぎることも確か。見方によってはどうとでもいえます。

西村: 1%でも92%でも「一部」ですよね。

音喜多議員: 都民の「実感値」はどうなのか?というと、まるでないことは確かです。厳しい言い方ですが、自己満足にしか見えないです。

小池都知事についても、進捗は不十分です。色々「ゼロ」を挙げているが、0になったものはありません。確かに、待機児童は2000人に減ったので、そこは成果です。しかし、他の公約はどうなのか。時差BIZは、評価の仕組みも数値目標もないです。

西村: 数値目標は本当に意味不明です。私もここで書いたりKPIウオッチ活動などしていますが、行動が変化した人がどれくらいいたか、登録企業における数字の変化、政策の前後比較もありません。

音喜多議員: 登録企業数が増えたからというのはどうかと思います。そもそも都民の「実感値」としてどうなのか?その意味で「時差BIZは浅いと思います。都庁も働き方改革をやっているのですが、残業時間は目に見えて減っているのか。都庁職員や議員から始めればいいのにと思います。

そもそも、議会事務局の職員の働き方改革です。(私も書いたのですが)開始時間が13時。そうすると21時まで、となる。これでどうやって職員が保育園にいけるのか?10時スタートにすれば3時間の前倒しが可能になります。

▲写真 イメージ(サラリーマンの帰り道) 出典:Photo AC; Maru-ume

 

■ 村社会の議員?

音喜多議員: 本質的な改革が進んでいません。そのほかもそうです、一事が万事。非公開の会議はいまだ非公開ですし、いま取り組まれている議会改革条例も成立までに時間がかかるでしょう。

そもそも、都民ファーストの失敗は、変え方を都議会の古いフォーマットにのっとってやろうとしたことだと思っています。古いルールのままで改革をやってしまうと、慣習やわけのわからないしがらみに悩まされます。相手の土俵に乗ってしまったと言えます。ルールを変えるのが都民の期待だったのに、と思います。

なので、思い切った改革になっていない。突き抜けないことは・・・都民には期待できない。最初のところで戦わないといけなかった。議員たちも大企業病という感じに(なっている)。

西村: 権威主義社会に取り込まれているということか?

音喜多議員: 発信していかないとわからなくなる村社会だと思っています。「村の中」で誉めあっていて満足していて、都民の期待に応えている気になっているようにも思えます。都民との期待との決定的なずれに気づいていないのではないでしょうか。

色々な会合に行ったとしても、皆さん立場があるから、都議に対して厳しいことを言ってはきません。利害関係ない人、厳しい考えを持っている人からの意見が大切です。(そういう人からの意見は)議論のレベルも本質をついているケースが多いです。

<次回に続く>

トップ写真:東京都議会 出典:Flicker Wei-Te Wong


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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