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.国際  投稿日:2022/3/30

最期に垂直落下した中国東方航空機


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・中国東方航空ボーイング737型機MU5735便が墜落。7000mをほぼ垂直落下、生存者なし。

・気象状況は平穏。急降下は人為的操作だったのか、機内爆発説も。

・米中関係悪化の最中の事故で、米中が客観的な原因の究明ができるか注目される。

 

今年3月21日、中国東方航空ボーイング737旅客機は、昆明―広州間の飛行中、広西チワン自治区梧州藤県上空で行方不明になり、藤県琅南鎮莫埌村付近の山中に墜落した(a)。搭乗者は旅客123人、乗務員9人の計132人である。

落下したMU5735便は、同日、北京時間13時16分に昆明を離陸。14時17分に巡航高度約8900メートルを維持して広州管制区に入った。管制官は14時20分までに、飛行機が急激に高度を下げたので、何度も同機に呼びかけた。だが、何の応答もなかったという。14時23分、飛行機のレーダー信号が消え、同機は墜落している。

同23日、事故機に搭載されていたブラックボックス」(フライトレコーダー)の2台中、1台が発見された。その後の捜索で、同27日、2台目の「ブラックボックス」がようやく見つかっている(b)。

一般に、航空機事故は、(1)機体のトラブル(機体の経年及び機械の故障)、(2)パイロットの誤操作、(3)悪天候等が主な原因とされる。今度の航空機事故は、悪化した米中関係の最中に起きた。米ボーイング社と中国東方航空が“客観的”な事故原因の究明ができるかどうか注目される。

ここでは、(中国のタブロイド紙)『新京報』「東方航空MU5735便墜落、事故の真相を知るべき5つの疑問」(2022年3月21日付)(c)を参考にしよう。

第1の疑問点は、ボーイング737型機はすべて飛行をやめたわけではないが、なぜ、この種の機体が使われていたのか。

機体は、ボーイング737-800(NG)、登録番号B-1791、2015年6月22日に納入され、6.8年経過していた。ネット上では、今回の墜落は機械の故障によるものではないかと推測されている(現時点で、この点については不明)。

専門家によれば、ボーイング社のもう一つの737-8型機(通称737 MAX)は、過去2回、墜落事故を起こし、中国を含む数か国で地上待機となっている。しかし、事故機は737-800であり、地上に降りた機体とは異なるタイプだった。

NGは737シリーズの次世代機を示す。この機体は737のクラシックモデルをベースにして大幅に改良されたものである。納入数は7000機以上と非常に多く、総合的な安全性も、かつての737型機より優れているという。

第2の疑問点は、飛行高度から短時間で7000m以上急降下したのは、人為的操作のためだったのか。

事故機の飛行軌跡を見ると、21日14時20分には、高度8869.68m。14時22分、最後に消えた時の高度は1333.5mだった。一部のネットユーザーは、突然墜落した原因として、機内爆発による航空機の解体を挙げている。

ある専門家は、「非常事態下で、パイロットは1分以内に高度を最大1000メートルまで下げた。このような落下は、飛行機がまだ操縦可能な状態にあると考えられる」という。ただ、「もし機体に動力もなく、パイロットが操縦しなかったとしたら、高速で落下する。これは墜落した機体の最後の特徴に合致する」と述べた(確かに、ビデオで見る限り、墜落直前、事故機は垂直に落下している)。

第3の疑問点は、事故機が飛行中に異常な気象状況に遭遇したか否かである。

21日12時9分、梧州の天気は強い寒気とシアーライン(風向・風速が急に変化している部分を結んだ線)による影響で、21日夜から22日にかけて、市全体が雨、局地的豪雨、短時間の雷雨、強風などの強い対流が発生した。

しかし、『人民日報』が発表した事故機の映像では、当時、現場の空は少し曇っていたが、まだ雨は降っていなかった。『新京報』の記者が藤県気象局に問い合わせたところ、当日の18時頃まで当地の気象データは平穏だったという。

第4番目は、民間の東方航空会社は、同型機の運航を制限するかどうかである。

この点については、早速、事故当日夜、中国東方航空は、同社の737-800便の運航を中断している。

第5番目は、山林に墜落した飛行機の搭乗者が生存する可能性についてである。

今回の事故の状況から判断すると、8000メートル以上の高度から地上に高速で落下し、場所は山岳地帯だった。山火事も発生しているので、搭乗者が生存する可能性は極めて低かった。実際、搭乗者全員の死亡が確認されている(b)。

ちなみに、中国では飛行機事故の最高補償額、40万元(約760万円)が16年間変わっていない(d)という。

実は、2010年8月24日、中国国内で、河南航空8387号(ハルピンー伊春)事故(44人死亡)を最後に、12年近く航空機事故はなかったのである(a)。

 

<注>

(a)『BBCNews中文』「東方航空ボーイング737機墜落:3日目捜索拡大し、航空機と犠牲者の残骸を捜索」(2022年3月24日付)

https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-60857486)。

(b)『BBCNews中文』「東方航空ボーイング737機墜落:乗客と乗務員全員死亡確認、2台目のブラックボックス発見」(2022年3月26日付、同27日更新)

https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-60888020)。

(c)『速報:「3月21日」東方航空MU5735便事故、2つ目のブラックボックスが北京に到着』

http://www.21jingji.com/article/20220321/herald/14d147847c67b451eca1f1c457db6168.html

(d)(中国語のポータルサイト《中国瞭望》からの転載)『新頭殻』「中国航空事故の補償上限は16年間据え置き 東方航空の補償額に批判」(2022年3月24日付)

https://news.creaders.net/china/2022/03/24/2465348.html

トップ写真:中国東方航空のボーイング737-800(同型機) 出典:Photo by Marcio Rodrigo Machado/S3studio/Getty Images




この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長

1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。

澁谷司

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